悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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ピンチをチャンスに

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「うん?無理じゃないかな?」

部屋に戻り、シルヴァインを迎えて、経緯を話したマリアローゼが告げられた一言である。
マリアローゼはうっ、と胸を押さえた。
さすがに、昨日落ち込んでいたばかりのシルヴァインを無理に働かせるわけにはいかない。
すん、と覇気を失くしたマリアローゼを見て、くすっとシルヴァインが微笑む。

「確かに、君の魅力でコルニクスを篭絡したのは痛いかもしれないが…」
「篭絡など、しておりません!」

笑みながら言われた言葉を、マリアローゼは両手でスカートを掴みながら懸命に否定する。
シルヴァインはハハッと更に笑い、そして溜息を吐くと真顔になった。

「あの、叔父上が考えていなかったと、本気で思うかい?」
「……………!」

そう、真剣に問い返されて、マリアローゼは言葉が咄嗟に出なかった。
あの、ジェレイドなのだ。
あの……とんでもない溺愛の塊なのだ。

「そ、それは……たし、かに……?」
「もう既に手配も済んでると思うよ、下手したら年単位で」

(下手したら年単位……)

マリアローゼは心の中で、それを復唱した。

そう。
今回の領地への期間は、「絶対」だったのである。
それは神聖国への招聘云々ではなく、5歳まで王都のみで暮らしていたので、そろそろ領地へ戻らなくてはならない時期だったのだ。
予知の力がほぼ無くなったという今でも、それ位は誰にでも予想は出来るだろう。
ましてやジェレイドだ。

「それなら!レイ様に直接抗議をして参りますわ!」

ふんす!と怒りを胸に立ち上がるが、シルヴァインがにっこりと微笑んだ。

「無理だと思うよ?」
「やってみなければ分かりませんわ…」

勢いを削がれてしおしおと椅子に座り直した妹に、優しい目を向けながらシルヴァインが問いかけた。

「じゃあ試そうか?もう祭りの準備は出来ていて、大量の食糧もある。消費しないと腐ってしまう、と言われたら?
庶民が一生懸命祝祭の為に準備をしていたとしたら?君は無下に出来るかい?」
「そ、そんな事できるわけが…あっ」

無理なのである。
そして、そういう急所を押さえて来るのだ、ジェレイドという男は。
マリアローゼは、スカートを掴んだまま、ふるふると震えた。

「……君は面白いなあ、たかだか1週間の祝祭で、公爵家が揺らぐ訳はないだろう?それにこれは庶民の為の祭りでもあるし、観光客だって外国からも集まるんだよ。その税収や観光客の落とす財だけで十分庶民にも領にも収入が行き渡るよ」
「そう…それは、そう、ですわね」

目の前の大きな問題に、マリアローゼは目が眩んでいた事に気づいて、静かに思考し始めた。
溺愛が一番の理由だとしても、確かに1週間の祝祭というのはかなり大規模で、観光向けの宣伝にもなる。
だとしたら、これは…

「チャンスですわ!!!」
「チャ…?ああ、良い機会…好機って事かな?」

何事かを思案したと思ったら、生き生きとキラキラ目を輝かせるマリアローゼに、シルヴァインは甘い笑顔を見せた。
そんなシルヴァインに、マリアローゼはこくこく、と強く頷く。

「美味しい食べ物を広めます。まずは、この領でしか買えないような物を…そして、レイ様が精製された砂糖を大々的に売り出しましょう」
「砂糖?」
「ええ、蜂蜜と違って特徴的な味を持たない甘味料ですの。色々な料理やお菓子を作るのに、必要不可欠なのですわ!同時に、その砂糖を使った甘味を広めます!」

(訪れた人々の胃をがっちり掴むのですわ!)

力説するマリアローゼに、シルヴァインは頷いた。
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