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貧乏性のお嬢様
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「分りました、お嬢様。これは私が、直接ジェレイド様にお話せねばなりますまい」
その声でびくりと、マリアローゼは視線をコルニクスへと戻す。
最早闘気を纏っているような、そんなコルニクスが、机に拳を置いてゆらりと立ち上がった。
(何が分かったと言うのですか…?)
「で、出来るだけ質素に…?」
思わず疑問形になってしまったが、それは仕方の無いことだろう。
目の前に野獣もかくやというオーラを背負った漢がいるのだから。
「いえ、お嬢様の慈悲深さを伝える為ですから、そういう訳にも参りません。必ずや、成功させてみせます」
(何をだろう?何が始まるのかしら!?)
はくはくと言葉にならないまま口を動かして、マリアローゼはいい笑顔の壮年のイケメン家令を呆然と見上げた。
彼は了承したとばかりに、厳しい顔に戻り、こくりと頷く。
「夫人、後はお任せいたします。私はジェレイド様達と会議をして参りますので」
「ええ、ええ行っていらっしゃいませ」
「ではお嬢様、また後ほど」
惚れ惚れするようなきびきびとした挨拶を残して、コルニクスが疾風の如くその場を立ち去って、
マリアローゼは何も言えないままそれを見送った。
「ええ、と、フィデーリス夫人、どういう事ですかしら?」
「お誕生会ではなく、お誕生祭が開かれますのねえ」
現実逃避したくて、思わず夫人に疑問をぶつけてみたものの、予想通りの答えが戻ってきて、マリアローゼは白目を剥きそうになった。
「で、でももうすぐお祭りもあるのでは…?」
「そうですわね、夏至祭りがもうすぐございますわね…あら、それでは1週間続くのかしら?」
大変だから止めて貰おうと思ったのに、フィデーリス夫人の言葉は予想外に上書きしてきたのである。
(一…週…間……!?!)
この世界の暦は前世の記憶とそんなに変わりがない。
場所によって、季節や気候に関しては差が有るが、フィロソフィ領の夏至祭りは8の月の8~11日に行われるという。
マリアローゼの誕生日は15日だ。
(本当ですわ…一週間ですわねえ……)
計算しなおしてぽやあーと現実逃避しかけて、マリアローゼはふるふると首を横に振った。
どう考えても膨大な費用がかかるに決まっている。
「そんな、わたくしの為に無駄遣いなど、いけませんわ」
「無駄遣いなどでは、ありません!」
「そうで御座います!」
否定してきたのは、ルーナとオリーヴェだった。
振り返ると、うんうん、と力強く使用人達も頷いている。
(どうしよう…深刻な味方不足…)
そこでハッとマリアローゼは気が付いた。
「そう言えば、お兄様がお部屋にいらっしゃると仰っていましたわ。そろそろお暇いたしますわね。皆様、ご機嫌よう」
その場凌ぎに、流れるような動作で立ち上がり、お辞儀をしながら、微笑を浮かべて階下を後にする。
(まずは逃げましょう。そして、お兄様に止めて頂けば宜しいのですわ!!)
その声でびくりと、マリアローゼは視線をコルニクスへと戻す。
最早闘気を纏っているような、そんなコルニクスが、机に拳を置いてゆらりと立ち上がった。
(何が分かったと言うのですか…?)
「で、出来るだけ質素に…?」
思わず疑問形になってしまったが、それは仕方の無いことだろう。
目の前に野獣もかくやというオーラを背負った漢がいるのだから。
「いえ、お嬢様の慈悲深さを伝える為ですから、そういう訳にも参りません。必ずや、成功させてみせます」
(何をだろう?何が始まるのかしら!?)
はくはくと言葉にならないまま口を動かして、マリアローゼはいい笑顔の壮年のイケメン家令を呆然と見上げた。
彼は了承したとばかりに、厳しい顔に戻り、こくりと頷く。
「夫人、後はお任せいたします。私はジェレイド様達と会議をして参りますので」
「ええ、ええ行っていらっしゃいませ」
「ではお嬢様、また後ほど」
惚れ惚れするようなきびきびとした挨拶を残して、コルニクスが疾風の如くその場を立ち去って、
マリアローゼは何も言えないままそれを見送った。
「ええ、と、フィデーリス夫人、どういう事ですかしら?」
「お誕生会ではなく、お誕生祭が開かれますのねえ」
現実逃避したくて、思わず夫人に疑問をぶつけてみたものの、予想通りの答えが戻ってきて、マリアローゼは白目を剥きそうになった。
「で、でももうすぐお祭りもあるのでは…?」
「そうですわね、夏至祭りがもうすぐございますわね…あら、それでは1週間続くのかしら?」
大変だから止めて貰おうと思ったのに、フィデーリス夫人の言葉は予想外に上書きしてきたのである。
(一…週…間……!?!)
この世界の暦は前世の記憶とそんなに変わりがない。
場所によって、季節や気候に関しては差が有るが、フィロソフィ領の夏至祭りは8の月の8~11日に行われるという。
マリアローゼの誕生日は15日だ。
(本当ですわ…一週間ですわねえ……)
計算しなおしてぽやあーと現実逃避しかけて、マリアローゼはふるふると首を横に振った。
どう考えても膨大な費用がかかるに決まっている。
「そんな、わたくしの為に無駄遣いなど、いけませんわ」
「無駄遣いなどでは、ありません!」
「そうで御座います!」
否定してきたのは、ルーナとオリーヴェだった。
振り返ると、うんうん、と力強く使用人達も頷いている。
(どうしよう…深刻な味方不足…)
そこでハッとマリアローゼは気が付いた。
「そう言えば、お兄様がお部屋にいらっしゃると仰っていましたわ。そろそろお暇いたしますわね。皆様、ご機嫌よう」
その場凌ぎに、流れるような動作で立ち上がり、お辞儀をしながら、微笑を浮かべて階下を後にする。
(まずは逃げましょう。そして、お兄様に止めて頂けば宜しいのですわ!!)
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