悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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民の為?いいえ自己保身です

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「ふむ、そのお祝いは是非盛大に致しましょう!」
「是非、そう致しましょうね」

急にやる気を漲らせたコルニクスの声に、フィデーリス夫人がおっとりと優しく頷いた。

(ん?そんなにやる気になるキャラなのですか?クールオジイケメン枠では…?)

マリアローゼは微笑んだまま固まった。

「そんな、あの、皆様にご迷惑がかかるような事は、あの、家族だけの質素なお誕生日会でもわたくしは一向に構いませんのよ……?」

慌てて言い繕ってみるが、コルニクスはギン!と迫力の眼差しでマリアローゼを見た。

(ひえっ!?)

言葉を飲み込んだマリアローゼの前で、コルニクスは堂々と宣言する。

「いいえ、お嬢様ほどの素晴らしい御方の為に働けるのであれば、粉骨砕身の思いでお仕え致します!まずは、城での盛大なお誕生会と祝宴の準備を進めて参らねば、リッカート、城へ遣いを出しなさい」
「は」

リッカートと呼ばれた金髪の執事服の青年が立ち上がり、笑顔でマリアローゼに会釈をすると、颯爽と休憩室から出て行った。

(何だか大事になっているのでは?)

マリアローゼは、言動を思い返してみるが、何処にコルニクスのスイッチがあったのか分からない。
そして、この話がジェレイドに伝われば、更に輪をかけて大きくなる未来しか見えないのだが、もう矢は放たれてしまったのだ。

(だけど、もう少しマシに出来るのではないかしら……?)

そう、例えば、街の人達にだって迷惑がかかってしまうかもしれない。

(食べるのにも困る人だって、さすがにいるでしょう……)

思い浮かべてみると、ジェレイドによる政策で、その辺りが根絶されていそうな気もするが、何処の世界にも恵まれない人々はいるものである。
探せば一人くらいいるかもしれない。

「でも、コルニクス。街の人達だって、皆様生活がありますでしょう?わたくし達だけ、そんなに贅沢をするのは、申し訳ありませんわ。ですからもっと質素にして、その分街の人々に分け与えた方が宜しいのではないでしょうか……」

言葉を続けようと思ったが、コルニクスがぽかんと口を開け、フィデーリス夫人を見、フィデーリス夫人が頷く。

(え?何…?何ですの?)

二人の無言の以心伝心を見て、マリアローゼはさあっと血の気が引く音を聞いた気がした。
コルニクスは拳を握りしめぶるぶると身体を震わせている。

「そこまで、そこまで民のことを考えていらっしゃるとは…」

言葉を詰まらせつつ、盛大に感動しているコルニクスにマリアローゼはドン引きした。
マリアローゼとしてはダッシュで自己保身に走っただけなので、決して民の事だけを考えての言葉だった訳ではないのだ。
助けを求めるように周囲を見回すと、侍女達も小間使い達も、執事も従僕も、涙ぐんでいる。
そして、何時ものメンバー、ルーナとノクスはさて置き、グランスとウルススも優しげに微笑んでいた。
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