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愛が足りませんわね?
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「ローゼ……」
シルヴァインは何とも複雑な表情で、マリアローゼを見詰める。
「逆に考えて御覧なさいませ。もし、わたくしより遥かに優秀で、遥かに美しい女性がいたら、お兄様の中でわたくしは霞んでしまわれますの?」
自分で言ってしまって、マリアローゼは衝撃に包まれた。
(霞んでしまうかもしれないわ!!!)
世の中にはそんな人達は沢山いる。
前世の記憶の視点から見ればかなり美しい部類に入る気はするが、普段から自分の姿を見ていると
(そこまで……?)
と思う事は確かにある。
見慣れているからか、もっと美しいと思う父母や兄弟や使用人に囲まれているからなのか、マリアローゼには判別出来ない。
だからこそ、突出した美しさの人間という別格が現れてしまえば、揺らぐ事もあるだろう。
そして、それは責められない。
あわわわと慌てた様に唇を震わせていると、シルヴァインにぎゅっと強く抱きすくめられた。
「そんな事は、絶対に、無い。在り得ない」
強く断言されて、マリアローゼはほっと胸を撫で下ろした。
(セーフ!!!ですわ!!!)
うん、霞むよ?などと言われなくて良かった。
言われたらそこで試合終了である。
諦めるとか諦めない以前の問題なので、試合続行は不可能だ。
安堵の溜息を吐いてから、マリアローゼは言葉を続けた。
「でしたら、わたくしの気持ちもお分かり頂けて?足りないと思われる部分は、これから成長していける部分です。わたくしだって、まだ何も持っていませんもの」
逞しい背中をぽんぽんと撫でると、シルヴァインはマリアローゼの肩口に顔を埋めたまま言った。
「ローゼは沢山の物を持っているよ。俺は、君を愛してる」
「でしたら、その部分は変わらずに、わたくしも成長致します。わたくしの愛も疑わないでくださいませ」
(持っている、と言われたけれど、改めて考えてみると何か持っていたかしら?)
マリアローゼは兄の肩越しに天井を見上げた。
(わたくしが持っている良い物……熊の置物は良い物ですわね?あとマリーちゃんの置物も素敵ですし、ロバの置物だって素晴らしいですわ)
置物しか浮かばなかった。
そして、とりあえずそれらはこれからも大事にしようと思ったのである。
「はあ、君と喧嘩して弱くなったかな、俺は」
ぐったりと身を預けるように寄りかかられて、マリアローゼは大きな動物に抱きつかれている気分になった。
(甘えん坊の大きな熊さんみたい)
「別に、わたくしの前では弱い所も見せていただいて構いませんけれど………そういえば、お土産はきちんと買っていらっしゃいまして?」
「……あっ」
萎れていたシルヴァインはすっかり忘れていた事に気がついて、マリアローゼは明るい声で笑った。
「愛が足りませんわね?お兄様」
シルヴァインは何とも複雑な表情で、マリアローゼを見詰める。
「逆に考えて御覧なさいませ。もし、わたくしより遥かに優秀で、遥かに美しい女性がいたら、お兄様の中でわたくしは霞んでしまわれますの?」
自分で言ってしまって、マリアローゼは衝撃に包まれた。
(霞んでしまうかもしれないわ!!!)
世の中にはそんな人達は沢山いる。
前世の記憶の視点から見ればかなり美しい部類に入る気はするが、普段から自分の姿を見ていると
(そこまで……?)
と思う事は確かにある。
見慣れているからか、もっと美しいと思う父母や兄弟や使用人に囲まれているからなのか、マリアローゼには判別出来ない。
だからこそ、突出した美しさの人間という別格が現れてしまえば、揺らぐ事もあるだろう。
そして、それは責められない。
あわわわと慌てた様に唇を震わせていると、シルヴァインにぎゅっと強く抱きすくめられた。
「そんな事は、絶対に、無い。在り得ない」
強く断言されて、マリアローゼはほっと胸を撫で下ろした。
(セーフ!!!ですわ!!!)
うん、霞むよ?などと言われなくて良かった。
言われたらそこで試合終了である。
諦めるとか諦めない以前の問題なので、試合続行は不可能だ。
安堵の溜息を吐いてから、マリアローゼは言葉を続けた。
「でしたら、わたくしの気持ちもお分かり頂けて?足りないと思われる部分は、これから成長していける部分です。わたくしだって、まだ何も持っていませんもの」
逞しい背中をぽんぽんと撫でると、シルヴァインはマリアローゼの肩口に顔を埋めたまま言った。
「ローゼは沢山の物を持っているよ。俺は、君を愛してる」
「でしたら、その部分は変わらずに、わたくしも成長致します。わたくしの愛も疑わないでくださいませ」
(持っている、と言われたけれど、改めて考えてみると何か持っていたかしら?)
マリアローゼは兄の肩越しに天井を見上げた。
(わたくしが持っている良い物……熊の置物は良い物ですわね?あとマリーちゃんの置物も素敵ですし、ロバの置物だって素晴らしいですわ)
置物しか浮かばなかった。
そして、とりあえずそれらはこれからも大事にしようと思ったのである。
「はあ、君と喧嘩して弱くなったかな、俺は」
ぐったりと身を預けるように寄りかかられて、マリアローゼは大きな動物に抱きつかれている気分になった。
(甘えん坊の大きな熊さんみたい)
「別に、わたくしの前では弱い所も見せていただいて構いませんけれど………そういえば、お土産はきちんと買っていらっしゃいまして?」
「……あっ」
萎れていたシルヴァインはすっかり忘れていた事に気がついて、マリアローゼは明るい声で笑った。
「愛が足りませんわね?お兄様」
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