悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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元気の無いお兄様

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長旅の疲れを癒していたマリアローゼは、すっかり夕方になった外の風景をぼうっと見ていた。
身動ぎすると、ルーナが近くにやって来る。

「お飲物は如何ですか?」

と優しく問いかけられ、マリアローゼは半身を起こした。

「頂きますわ」

にっこりと微笑むと、ルーナもにっこりと微笑み返す。
用意してあったのか、程なくして温かいミルクティが渡されて、マリアローゼは一口飲み、カンナとユリアが部屋に
いない事に気が付いた。
目で探したので察したのか、ルーナが静かに教える。

「訓練から戻られたウルススさんと、グランスさんが続きの間に居られますので、お二人は町へ出かけられました。フクロウの餌を買いに行くとか」
「まあ、フクロウさんの。それは大事な用事ですわね」

ルーナはまたもやパンパンに詰め込まれた衣装箪笥から、晩餐のドレスを苦労して選んでいるようだ。
そして取り出されたドレスは、青空のような青に銀の刺繍のドレスで、それはまたロランドの色なのである。
(ロランド様の勘違いドレスですわね?)

ルーナはふんす、と満足げな顔をして、空色のリボンと白い薔薇の装飾のついた髪飾りも取り出した。
マリアローゼは意図を理解して、ふふっ、と静かに笑う。


晩餐用の着替えも整った頃、マリアローゼの部屋の扉がノックされた。

「どうぞ」

返事をすると、視察から帰ったシルヴァインが、微笑みながら部屋に入って来た。

(元気がありませんわね)

「やあ、綺麗な空色のドレスだね」

何時もならもっと、傲岸な目でドレスを見そうなのに、普通にマリアローゼを褒め称えただけだった。

「ルーナ、お兄様と二人にして下さる?あとお部屋には誰も入れないで」
「畏まりました」

ルーナは何も問う事はせず、スッと作業の手を止めて、部屋の扉から出て行った。
部屋に置いてある小さ目の長椅子に座っていたマリアローゼは、隣をポンポンと手で叩いた。

「さあ、お座りになって、お兄様」
「何だ、どうしたんだい?」

笑顔なのに何処か悄然としている兄の顔をじっと見ながら、マリアローゼは問いかけた。

「それはこちらの台詞ですわ。一体何が御座いましたの?」
「……ああ、うん」

シルヴァインが諦めたように、マリアローゼの隣に座った。

「視察は、問題なかったよ。どこも叔父上の手で完璧に整えられている」
「それは宜しかったですわね」

マリアローゼにとってはそれは想定外でも何でもなかったが、シルヴァインは違うのだろうか。
人格はどうであれ、ジェレイドは類稀なる優秀さを領地経営で如何なく発揮している。

(手間が省けて良かったのでは?……あまりに手回しが良すぎて、する事が減ってしまったのが問題なのかしら?)
それにしては兄の雰囲気が深刻そうだ。
他にも何か深い問題がありそうで、マリアローゼは黙って兄が語るのを待っていた。

「冒険者ギルドで聞いたんだが、ローゼは叔父上が、この辺りで英雄扱いなのは知っていたかい?」
「いいえ、全然」

ふるふるっと首を横に振ると、シルヴァインは短く溜息を吐いた。
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