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5歳児だって気持ちいい
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マリアローゼは早速、衣装箪笥を開けたルーナが、わ、という短い声を発したのを聞いた。
持ってきた荷物を解こうとしていたノクスも手を止める。
不思議に思って覗いて見ると、衣装箪笥は正にパンパンにドレスが詰め込まれていた。
「レイ叔父様…これは買い過ぎでしょう……」
どうやっても1年以上は着替えに困らない量である。
マリアローゼの呟きに、こくん、とルーナは頷くが、端の方からふわりとした生成りの衣服を取り出した。
「でも、とても上等なお品だと存知ます。晩餐まで、少しお休み下さいませ、お嬢様」
「今、食べる物を運ばせます」
服を手に取ったルーナが言い、ノクスは着替えが始まるのもあるからか、言い置いて会釈をすると扉を出て行った。
ゆったりとした生成りの服は、確かに着心地が抜群だ。
着替えを手伝い終わったルーナは、何時もどおり手荷物からマリアローゼのお気に入り達を部屋に設置し始める。
程なくして、ティートローリーを押したノクスが部屋に入って来た。
「軽食と紅茶をお持ち致しました」
「まあ、ありがとう、ノクス」
ベッドに腰掛けていたマリアローゼは、テーブルセットに移動して、紅茶と小さなサンドイッチを摘まんで口に入れる。
今日食べたパンと同じくふんわりと柔らかいパンで、ハムとチーズと葉野菜が挟まれていた。
もう一つの種類は、卵と野菜を潰して混ぜた物で、こちらも美味だった。
幾つか食べるとお腹も膨れて、ふあ、と欠伸も漏れてくる。
「失礼致します」
そろそろ寝ようか、という時に小間使いが数人、ワゴンと共に入って来た。
その中の1人とルーナが短く言葉を交わし、ルーナがマリアローゼの近くにとことこと歩み寄る。
「お嬢様、お休み前に足湯を」
「ええ、ありがとう」
差し伸べられた小さな手にマリアローゼも小さな手を重ねる。
この世界での足湯は初経験だ。
導かれるままにベッドに腰掛けると、台に載せた横長の陶器に大きな水差しからお湯が移されて、マリアローゼの足はそのお湯に浸けられた。
お湯の温かさが疲れた足にじんわりと沁み込む。
温かくて気持ち良いですわ……
「熱くはありませんか?」
足を浸してくれた小間使いに上目遣いで聞かれて、マリアローゼはほにゃりと微笑んだ。
「とても気持ち良い温度ですわ、ありがとう」
「あ、は、はい。ようございました」
慌てたように頬を染めた小間使いが、マリアローゼの小さな足にお湯をかけては優しく揉み解す。
ここ最近座っての移動が多かったので、知らず知らずに疲れが溜まっていたのかもしれない。
5歳児なのに…
5歳児だけど…
気持いいのは同じですわね……
うっとりと、マリアローゼは足湯を満喫した。
持ってきた荷物を解こうとしていたノクスも手を止める。
不思議に思って覗いて見ると、衣装箪笥は正にパンパンにドレスが詰め込まれていた。
「レイ叔父様…これは買い過ぎでしょう……」
どうやっても1年以上は着替えに困らない量である。
マリアローゼの呟きに、こくん、とルーナは頷くが、端の方からふわりとした生成りの衣服を取り出した。
「でも、とても上等なお品だと存知ます。晩餐まで、少しお休み下さいませ、お嬢様」
「今、食べる物を運ばせます」
服を手に取ったルーナが言い、ノクスは着替えが始まるのもあるからか、言い置いて会釈をすると扉を出て行った。
ゆったりとした生成りの服は、確かに着心地が抜群だ。
着替えを手伝い終わったルーナは、何時もどおり手荷物からマリアローゼのお気に入り達を部屋に設置し始める。
程なくして、ティートローリーを押したノクスが部屋に入って来た。
「軽食と紅茶をお持ち致しました」
「まあ、ありがとう、ノクス」
ベッドに腰掛けていたマリアローゼは、テーブルセットに移動して、紅茶と小さなサンドイッチを摘まんで口に入れる。
今日食べたパンと同じくふんわりと柔らかいパンで、ハムとチーズと葉野菜が挟まれていた。
もう一つの種類は、卵と野菜を潰して混ぜた物で、こちらも美味だった。
幾つか食べるとお腹も膨れて、ふあ、と欠伸も漏れてくる。
「失礼致します」
そろそろ寝ようか、という時に小間使いが数人、ワゴンと共に入って来た。
その中の1人とルーナが短く言葉を交わし、ルーナがマリアローゼの近くにとことこと歩み寄る。
「お嬢様、お休み前に足湯を」
「ええ、ありがとう」
差し伸べられた小さな手にマリアローゼも小さな手を重ねる。
この世界での足湯は初経験だ。
導かれるままにベッドに腰掛けると、台に載せた横長の陶器に大きな水差しからお湯が移されて、マリアローゼの足はそのお湯に浸けられた。
お湯の温かさが疲れた足にじんわりと沁み込む。
温かくて気持ち良いですわ……
「熱くはありませんか?」
足を浸してくれた小間使いに上目遣いで聞かれて、マリアローゼはほにゃりと微笑んだ。
「とても気持ち良い温度ですわ、ありがとう」
「あ、は、はい。ようございました」
慌てたように頬を染めた小間使いが、マリアローゼの小さな足にお湯をかけては優しく揉み解す。
ここ最近座っての移動が多かったので、知らず知らずに疲れが溜まっていたのかもしれない。
5歳児なのに…
5歳児だけど…
気持いいのは同じですわね……
うっとりと、マリアローゼは足湯を満喫した。
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