悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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その笑顔が見れるなら

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時々「聖女」やら「女神」やら、不穏な言葉もちらほら聞こえたが、空耳という事にしておきましょう、とマリアローゼは聞こえなかった事にした。
領民達は健康そうで、皆明るい笑顔を浮かべている。
ジェレイドの名を呼ぶ人達の声も多い。
住民達の健康と幸福を保つ事が、どんなに大変なのか、ジェレイドの功績の大きさに改めて尊敬の気持ちを抱く。

10分程通りを進んだ所で、モルファの町を抜けた。
街道は真っ直ぐに伸びているが、町を抜けた所で右に続く別の街道へと馬車は乗り入れる。
町が見えなくなった頃に、公爵家の旅馬車が街道に停められていた。
一緒に馬車に乗っていたルーナやノクス、フィデーリス夫人が馬車の横で姿勢を正して待機している。

「さあ、乗り換えましょう」

ミルリーリウムの声に、真っ先に飛び降りた双子が、先を争いながら馬車に乗り込み、
続いて全員が元の様に馬車に乗り込んだ。

「ああ、そうだ。ローゼ、いい物を貰ったんだ。馬車の中で食べるといい」

馬に乗っていたジェレイドが飛び降りて、包みをマリアローゼに渡した。
布の袋に入っている何かが、ほわりとした暖かさを掌に伝える。

「焼きたてのパンだよ。平原の屋敷でもよく町で買い上げている物だし、僕も美味しいと思うパンだからね。ルーナやノクスにも分けてあげるといいよ」

「まあ、嬉しゅうございますわ、レイ様。わたくしの侍女と侍従にまでお気遣い有難う存じます」

零れる花の様な笑顔を見て、ジェレイドは途端にデレデレと笑み崩れた。

「その笑顔が見れるなら、僕は国だって滅ぼすよ」

物騒な。
そんな事は決して望んでいない。

「笑顔が見たいのでしたら、そんな事は仰らないで下さいまし」

困った様に言えば、それはそれで笑顔で返される。

「困った顔も可愛らしいな、ローゼは」

精神力を削られてスン、となったマリアローゼは会話を切り上げて馬車へと乗り込んだ。

「折角なので、わたくし、ノクスとルーナと一緒に座りたいのですけれど」

と馬車の座席を見渡すが、マリアローゼは兄達の膝の上を渡り歩いていたので、座席が1人分足りない。
察したフィデーリス夫人が立ち上がる。

「わたくしが別の馬車に乗りましょう」
「いえ、大丈夫ですわ、フィデーリス夫人」

マリアローゼは笑顔を向けて、兄達に向き直った。
「ジブリールお兄様、ミカエルお兄様、こちらにいらして?」

「え?」
「なになに?」

興味津々といった顔で二人は身軽に立ち上がる。
二つの座席が空いた。

「お母様はこちらで、お兄様達とお座りになって下さいませ」
「ええ、宜しくてよ」

フィデーリス夫人の奥に座っていたミルリーリウムが、双子の座っていた椅子に座る。

通路に立ったままの双子はぽかん、と口を開けてマリアローゼを見た。

「お兄様達は床に座られませ」

「えっ!」
「横暴!」

床を指差した可愛らしい妹の仕草に、二人は笑いながら抗議をする。

「お嬢様、それはあまりにも…」

笑いを噛み殺したようにフィデーリス夫人は言うが、マリアローゼは笑顔で首を横に振った。
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