268 / 357
連載
初めての領地訪問
しおりを挟む
翌日は、朝も早くからマリアローゼは風呂に入れられていた。
前日も勿論入ったのだが、今日は領民達に初のお披露目なのである。
双子の兄以外は赤子の頃から、双子は1歳以降に母と共に領地と王都を社交期間によって行ったり来たりしていたのだが、
マリアローゼは5歳まで王都を出た事がないのだ。
そのマリアローゼの側に居た為に、母も兄達も5年ぶりの帰郷という事になる。
ルルーレを出て数時間のところに、1つめの町モルファがある。
領民達は王都出発の報を聞くと、モルファに続々と集まってきているらしい。
そこまで領民に慕われているのは、豊かな土地であり、美しい領主夫妻が搾取をせずに暮らしやすい領地運営をしている土地だからだ。
だが、それ以上に領地の管理をしているジェレイドの人気が高い事もあるのだろう。
親しみやすく、人々の暮らしに寄り添った事業を広げ、きちんと報酬で応えてもいる。
有事の際には適切な処理をして、人々の保護もする。
それでも弟のジェレイドを領主に、という声があがらないのは、兄のジェラルドを立てているからだろうか。
マリアローゼは丹念に磨き上げられながら、ぼんやりと思い耽った。
そして、用意されたドレスを見て、意識が急浮上する。
白とピンクを基調にした、フリルとレースのオバケのような乙女趣味ど真ん中のドレスである。
可愛いし、似合わない事はないだろうけど、マリアローゼは弱弱しく抵抗した。
「これはちょ……っと派手ではないかしら……?」
「そんな事はございません。折角のお披露目ですし、ジェレイド様とミルリーリウム様のご希望でもあります」
それを言われたらもう、断る言葉は見つからない。
マリアローゼは、言う通りに服を着せられると、髪にリボンを結ばれ、薔薇を象った宝飾品で飾り立てられた。
とはいえ、ごてごてな飾りなどは一切無い。
布で作られた薔薇は、光沢があって瑞々しい美しさを演出していて、添えられている宝石も小さいものだ。
鏡の中の美幼女にはとてもよく似合っているものの、恥ずかしい気持ちの方が大きい。
「ありがとう、ルーナ」
丁寧に丁寧に飾ってくれたルーナに微笑むと、ルーナは頬を上気させて頷いた。
「とても、お可愛らしいです、お嬢様」
家族による絶賛褒め殺し大会を経て、精神を削られたマリアローゼは大人しくミカエルの膝で馬車に揺られていた。
昨日、マリアローゼを泣かせて酷い叱責をされた双子は、大人しくする約束で、マリアローゼの椅子になるという栄誉を与えられていた。
「ローゼは良い匂いがするなぁ」
「本当だ、花の香りかな?」
大人しくしていた双子が、嬉しそうに笑いながら二人でマリアローゼの髪の香りをふんすふんすと嗅いでいる。
「恥ずかしゅうございますので、おやめになって。レイ様が領地で栽培された薔薇の香料と洗料を合わせたもので商会でも売り出される予定の物ですのよ」
それはルーナから今朝方の入浴中にもたらされた話の受け売りだった。
色々な所で勝手に商品化が進んでいるのである。
だが、長年きちんと時間をかけて作られた物で、ジェレイドが世に出さなかった物なのだ。
目先の利益ではなく、マリアローゼの為に商会を大きくするための布石として利用したのである。
「じゃあ俺達も使ったら、ローゼと同じ匂いになるな」
「いいね、使おう」
ミカエルとジブリールはそう言って、くすくすと笑い声を立てている。
マリアローゼはふと、二人の顔を見比べた。
真っ青な海の様な鮮やかな青い瞳と、燃える炎の様な赤い髪の美少年だ。
悪戯好きで、いつも一緒にいる二人。
もしかして、好きな女性の好みも一緒なのかしら?
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
前日も勿論入ったのだが、今日は領民達に初のお披露目なのである。
双子の兄以外は赤子の頃から、双子は1歳以降に母と共に領地と王都を社交期間によって行ったり来たりしていたのだが、
マリアローゼは5歳まで王都を出た事がないのだ。
そのマリアローゼの側に居た為に、母も兄達も5年ぶりの帰郷という事になる。
ルルーレを出て数時間のところに、1つめの町モルファがある。
領民達は王都出発の報を聞くと、モルファに続々と集まってきているらしい。
そこまで領民に慕われているのは、豊かな土地であり、美しい領主夫妻が搾取をせずに暮らしやすい領地運営をしている土地だからだ。
だが、それ以上に領地の管理をしているジェレイドの人気が高い事もあるのだろう。
親しみやすく、人々の暮らしに寄り添った事業を広げ、きちんと報酬で応えてもいる。
有事の際には適切な処理をして、人々の保護もする。
それでも弟のジェレイドを領主に、という声があがらないのは、兄のジェラルドを立てているからだろうか。
マリアローゼは丹念に磨き上げられながら、ぼんやりと思い耽った。
そして、用意されたドレスを見て、意識が急浮上する。
白とピンクを基調にした、フリルとレースのオバケのような乙女趣味ど真ん中のドレスである。
可愛いし、似合わない事はないだろうけど、マリアローゼは弱弱しく抵抗した。
「これはちょ……っと派手ではないかしら……?」
「そんな事はございません。折角のお披露目ですし、ジェレイド様とミルリーリウム様のご希望でもあります」
それを言われたらもう、断る言葉は見つからない。
マリアローゼは、言う通りに服を着せられると、髪にリボンを結ばれ、薔薇を象った宝飾品で飾り立てられた。
とはいえ、ごてごてな飾りなどは一切無い。
布で作られた薔薇は、光沢があって瑞々しい美しさを演出していて、添えられている宝石も小さいものだ。
鏡の中の美幼女にはとてもよく似合っているものの、恥ずかしい気持ちの方が大きい。
「ありがとう、ルーナ」
丁寧に丁寧に飾ってくれたルーナに微笑むと、ルーナは頬を上気させて頷いた。
「とても、お可愛らしいです、お嬢様」
家族による絶賛褒め殺し大会を経て、精神を削られたマリアローゼは大人しくミカエルの膝で馬車に揺られていた。
昨日、マリアローゼを泣かせて酷い叱責をされた双子は、大人しくする約束で、マリアローゼの椅子になるという栄誉を与えられていた。
「ローゼは良い匂いがするなぁ」
「本当だ、花の香りかな?」
大人しくしていた双子が、嬉しそうに笑いながら二人でマリアローゼの髪の香りをふんすふんすと嗅いでいる。
「恥ずかしゅうございますので、おやめになって。レイ様が領地で栽培された薔薇の香料と洗料を合わせたもので商会でも売り出される予定の物ですのよ」
それはルーナから今朝方の入浴中にもたらされた話の受け売りだった。
色々な所で勝手に商品化が進んでいるのである。
だが、長年きちんと時間をかけて作られた物で、ジェレイドが世に出さなかった物なのだ。
目先の利益ではなく、マリアローゼの為に商会を大きくするための布石として利用したのである。
「じゃあ俺達も使ったら、ローゼと同じ匂いになるな」
「いいね、使おう」
ミカエルとジブリールはそう言って、くすくすと笑い声を立てている。
マリアローゼはふと、二人の顔を見比べた。
真っ青な海の様な鮮やかな青い瞳と、燃える炎の様な赤い髪の美少年だ。
悪戯好きで、いつも一緒にいる二人。
もしかして、好きな女性の好みも一緒なのかしら?
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
264
❤キャライメージはPixivにあるので、宜しければご覧になって下さいませ
お気に入りに追加
6,034
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。