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初めての領地訪問
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翌日は、朝も早くからマリアローゼは風呂に入れられていた。
前日も勿論入ったのだが、今日は領民達に初のお披露目なのである。
双子の兄以外は赤子の頃から、双子は1歳以降に母と共に領地と王都を社交期間によって行ったり来たりしていたのだが、
マリアローゼは5歳まで王都を出た事がないのだ。
そのマリアローゼの側に居た為に、母も兄達も5年ぶりの帰郷という事になる。
ルルーレを出て数時間のところに、1つめの町モルファがある。
領民達は王都出発の報を聞くと、モルファに続々と集まってきているらしい。
そこまで領民に慕われているのは、豊かな土地であり、美しい領主夫妻が搾取をせずに暮らしやすい領地運営をしている土地だからだ。
だが、それ以上に領地の管理をしているジェレイドの人気が高い事もあるのだろう。
親しみやすく、人々の暮らしに寄り添った事業を広げ、きちんと報酬で応えてもいる。
有事の際には適切な処理をして、人々の保護もする。
それでも弟のジェレイドを領主に、という声があがらないのは、兄のジェラルドを立てているからだろうか。
マリアローゼは丹念に磨き上げられながら、ぼんやりと思い耽った。
そして、用意されたドレスを見て、意識が急浮上する。
白とピンクを基調にした、フリルとレースのオバケのような乙女趣味ど真ん中のドレスである。
可愛いし、似合わない事はないだろうけど、マリアローゼは弱弱しく抵抗した。
「これはちょ……っと派手ではないかしら……?」
「そんな事はございません。折角のお披露目ですし、ジェレイド様とミルリーリウム様のご希望でもあります」
それを言われたらもう、断る言葉は見つからない。
マリアローゼは、言う通りに服を着せられると、髪にリボンを結ばれ、薔薇を象った宝飾品で飾り立てられた。
とはいえ、ごてごてな飾りなどは一切無い。
布で作られた薔薇は、光沢があって瑞々しい美しさを演出していて、添えられている宝石も小さいものだ。
鏡の中の美幼女にはとてもよく似合っているものの、恥ずかしい気持ちの方が大きい。
「ありがとう、ルーナ」
丁寧に丁寧に飾ってくれたルーナに微笑むと、ルーナは頬を上気させて頷いた。
「とても、お可愛らしいです、お嬢様」
家族による絶賛褒め殺し大会を経て、精神を削られたマリアローゼは大人しくミカエルの膝で馬車に揺られていた。
昨日、マリアローゼを泣かせて酷い叱責をされた双子は、大人しくする約束で、マリアローゼの椅子になるという栄誉を与えられていた。
「ローゼは良い匂いがするなぁ」
「本当だ、花の香りかな?」
大人しくしていた双子が、嬉しそうに笑いながら二人でマリアローゼの髪の香りをふんすふんすと嗅いでいる。
「恥ずかしゅうございますので、おやめになって。レイ様が領地で栽培された薔薇の香料と洗料を合わせたもので商会でも売り出される予定の物ですのよ」
それはルーナから今朝方の入浴中にもたらされた話の受け売りだった。
色々な所で勝手に商品化が進んでいるのである。
だが、長年きちんと時間をかけて作られた物で、ジェレイドが世に出さなかった物なのだ。
目先の利益ではなく、マリアローゼの為に商会を大きくするための布石として利用したのである。
「じゃあ俺達も使ったら、ローゼと同じ匂いになるな」
「いいね、使おう」
ミカエルとジブリールはそう言って、くすくすと笑い声を立てている。
マリアローゼはふと、二人の顔を見比べた。
真っ青な海の様な鮮やかな青い瞳と、燃える炎の様な赤い髪の美少年だ。
悪戯好きで、いつも一緒にいる二人。
もしかして、好きな女性の好みも一緒なのかしら?
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
前日も勿論入ったのだが、今日は領民達に初のお披露目なのである。
双子の兄以外は赤子の頃から、双子は1歳以降に母と共に領地と王都を社交期間によって行ったり来たりしていたのだが、
マリアローゼは5歳まで王都を出た事がないのだ。
そのマリアローゼの側に居た為に、母も兄達も5年ぶりの帰郷という事になる。
ルルーレを出て数時間のところに、1つめの町モルファがある。
領民達は王都出発の報を聞くと、モルファに続々と集まってきているらしい。
そこまで領民に慕われているのは、豊かな土地であり、美しい領主夫妻が搾取をせずに暮らしやすい領地運営をしている土地だからだ。
だが、それ以上に領地の管理をしているジェレイドの人気が高い事もあるのだろう。
親しみやすく、人々の暮らしに寄り添った事業を広げ、きちんと報酬で応えてもいる。
有事の際には適切な処理をして、人々の保護もする。
それでも弟のジェレイドを領主に、という声があがらないのは、兄のジェラルドを立てているからだろうか。
マリアローゼは丹念に磨き上げられながら、ぼんやりと思い耽った。
そして、用意されたドレスを見て、意識が急浮上する。
白とピンクを基調にした、フリルとレースのオバケのような乙女趣味ど真ん中のドレスである。
可愛いし、似合わない事はないだろうけど、マリアローゼは弱弱しく抵抗した。
「これはちょ……っと派手ではないかしら……?」
「そんな事はございません。折角のお披露目ですし、ジェレイド様とミルリーリウム様のご希望でもあります」
それを言われたらもう、断る言葉は見つからない。
マリアローゼは、言う通りに服を着せられると、髪にリボンを結ばれ、薔薇を象った宝飾品で飾り立てられた。
とはいえ、ごてごてな飾りなどは一切無い。
布で作られた薔薇は、光沢があって瑞々しい美しさを演出していて、添えられている宝石も小さいものだ。
鏡の中の美幼女にはとてもよく似合っているものの、恥ずかしい気持ちの方が大きい。
「ありがとう、ルーナ」
丁寧に丁寧に飾ってくれたルーナに微笑むと、ルーナは頬を上気させて頷いた。
「とても、お可愛らしいです、お嬢様」
家族による絶賛褒め殺し大会を経て、精神を削られたマリアローゼは大人しくミカエルの膝で馬車に揺られていた。
昨日、マリアローゼを泣かせて酷い叱責をされた双子は、大人しくする約束で、マリアローゼの椅子になるという栄誉を与えられていた。
「ローゼは良い匂いがするなぁ」
「本当だ、花の香りかな?」
大人しくしていた双子が、嬉しそうに笑いながら二人でマリアローゼの髪の香りをふんすふんすと嗅いでいる。
「恥ずかしゅうございますので、おやめになって。レイ様が領地で栽培された薔薇の香料と洗料を合わせたもので商会でも売り出される予定の物ですのよ」
それはルーナから今朝方の入浴中にもたらされた話の受け売りだった。
色々な所で勝手に商品化が進んでいるのである。
だが、長年きちんと時間をかけて作られた物で、ジェレイドが世に出さなかった物なのだ。
目先の利益ではなく、マリアローゼの為に商会を大きくするための布石として利用したのである。
「じゃあ俺達も使ったら、ローゼと同じ匂いになるな」
「いいね、使おう」
ミカエルとジブリールはそう言って、くすくすと笑い声を立てている。
マリアローゼはふと、二人の顔を見比べた。
真っ青な海の様な鮮やかな青い瞳と、燃える炎の様な赤い髪の美少年だ。
悪戯好きで、いつも一緒にいる二人。
もしかして、好きな女性の好みも一緒なのかしら?
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
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