悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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何も見てないし聞いてません

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「お嬢様、今、テイムなさいましたね?」

確認するようにルーナが聞いてくるので、素直にこくん、とマリアローゼは頷いた。
尋ねながらも、ルーナはマリアローゼが地面に置いた薬を拾い上げて、マリアローゼの傷ついた指先に薬を塗りこんで傷が塞がるのをじっと確認している。
制止を振り切って危険に飛び込んだマリアローゼは、眉を下げて申し訳無さそうにしていた。

「という事は安全なのですか?」

咄嗟に剣を構えていたグランスが、静かに問いかけたので、マリアローゼはそちらにもこくん、と頷いた。

「あっ!あーー…私は聞いておりませんので、今の話、全然聞いておりませんので!!」

とユリアが叫んだ。
マリアローゼもハッとしたあと、さーっと顔から血の気が引いていく。
咄嗟に試せるという考えが先行して、行動に移してしまったものの、人前でやっていい事ではなかったのだ。

「あ…ユリアさん、お気遣い有難う存じます」

ぺこりと会釈をすると、ユリアは真剣な顔で頷き返した。

「グランスさんがいれば大丈夫だと思うので、私は馬車まで戻ってますね」

「いえ、この場で話すことはもうございませんので、一緒に戻りますわ。この子もこのまま森に帰す訳には行きませんし、従魔師に預けて領地まで連れて行こうと思います」

手早くベルトを外して、グランスがマントを広げた。
意図を悟ったマリアローゼは、親鳥に話しかけて、背中を押す。

「さあ、この布の上に来て」

親鳥が大人しく指示に従うと、雛もよちよちと覚束ない足取りで親鳥の足元へと身体を寄せた。

「いい子にしていてね」

というマリアローゼの言葉に、クエッと一言鳴き声をあげて、グランスがマントの口を縛って抱き上げても鳴き声も発さず、暴れもしなかった。

「ふむ。本当にテイムできているのですね」
「あ、私が預かりますよ。フクロウの様子も見なくちゃいけませんし、従魔師に預けてきます」

マリアローゼはユリアの申し出にこくん、と頷いてカンナを見た。

「はい。私も一緒に行って説明してきますね」
「有難う存じます。ユリアさん、カンナお姉様」

遣り取りを確認してから、グランスはそっとマントごと鶏の親子をユリアに手渡した。
そして、ふわりとマリアローゼを抱き上げると、ノアークへと抱かせた。

「我々が来た道から戻りましょう。カンナ殿、先導してください」
「了解です」

「私は殿を務めますので、どうぞお先に」

促されたノアークは頷くと、マリアローゼを腕に抱いたまま、切り倒された木をひらりと身軽に飛び越える。
後続のルーナとノクスは、グランスの手を借りて倒木を乗り越えた。
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