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糾弾
しおりを挟む「そんな事決める権利、あんたにはないわよ!」
怒鳴りつける少女からステラを守るように、マリアローゼは一歩前に出て静かに言う。
「あら……当主でいらっしゃる子爵様ご本人の署名をもって、許可を頂いておりますのよ。
ステラ1人が決めたことではございませんの。ステラが望み、わたくしも望み、そして両親が許可を出し、貴女の父君もお認めになった事に、口を出す権利がないのは貴女の方でしてよ」
初めて知ったのか、少女はマリアローゼの返答に黙り込んだ。
昨日アルデアの報告を受けて、すぐに家令のケレスが出向き、子爵と話を纏めてきたのだ。
子爵としては口減らしが出来る上に、公爵家との繋がりも出来るという事で喜んで承諾したらしい。
それに、ステラが万が一公爵家の令息に見初められれば、愛妾になる事も算段の上だろう。
もしかしたら、今日の宴に娘の1人が出られなくなる可能性も脅しの1つとしてあったのかもしれない。
「ローゼ、母上が呼んでおられますよ。ステラと、そちらの方もご一緒に」
キースが静かに呼びかける声に、マリアローゼは膝を屈するだけのお辞儀をした。
「はい、お兄様」
「はい、キース様」
続いてステラもお辞儀をすると、マリアローゼの後ろに続く。
マリアローゼは少し振り返って、ステラの手をきゅっと握って歩き続けた。
少女は自分が声をかけられた事に、夢見るような笑顔を浮かべている。
「キース様!わたくし…」
と少女が、話しかけたところで、キースは何も言わずに無視をして踵を返してマリアローゼの後ろを歩いて行く。
少女も慌てたように、キースの後ろについて行った。
珍しくキースも怒っているようだ。
そちらの方、と称するのは令嬢と呼びたくないという意志を感じる。
確かに今までの流れでは令嬢とは呼びがたい振る舞いばかりだった。
「何か、騒ぎがあったようね?」
ゆったりおっとり優しい口調でミルリーリウムに尋ねられて、マリアローゼはお辞儀をした。
「はい、お母様。わたくしの小間使いが、お客様に怪我をさせられました」
「まあ、何て野蛮だこと」
驚いたようにミルリーリウムがお茶会の席を見回し、座っていた夫人達もそれに同意を返した。
「その様な方は、もう招待できませんわね!」
とペルグランデ伯爵夫人が言うと、ワースティタース伯爵夫人もふんすふんすと同意した。
「まったく、どんな躾をされているのかしら。恐ろしいですわ」
ざわざわとする中、全員が同じように意見が纏まったのを見計らって、母が更に問いかけた。
「その方のお名前は?」
「それが……存じ上げませんの」
困った様にマリアローゼが言うと、シルヴァインが後を続けた。
「礼儀を知らないようで、私とマリアローゼに飲物を持って近づき、事故を装ってかけてきた為、挨拶は遠慮して頂きました。
今時、飲物を浴びせて話の切っ掛け作りに使おうとするとは、大衆小説の読みすぎではないでしょうか」
後半はふう、と溜息を吐きながら言う。
ミルリーリウムは、まあ、と驚いて見せながら、マリアローゼに問いかけた。
「大丈夫でしたか?ローゼ」
「はい。シルヴァインお兄様が庇ってくださったので」
にっこりと微笑んでシルヴァインを見上げるマリアローゼに、シルヴァインもまた極上の笑顔で応じた。
「ああ、母上、キースが呼んできてくれた、そこにいる方が先程の問題を起こした者です」
今気づいた、というようにシルヴァインが手で指し示した場所に、問題児が立っている。
それを見た瞬間、テララ子爵夫人の顔が真っ青になった。
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