悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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ヒロインもどき

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「まあ、彼女の言う事にも一理ある」
「え、でもあのお菓子、我が家で作られた物でしてよ?」

シルヴァインはこくりと頷いて、同じ菓子をテーブルの皿から摘み上げると、マリアローゼの口に押し当てた。

「こうして、君の口に運ばれるまで、何かを仕込もうと思えば仕込めるだろう?
俺や兄弟の手からなら食べてもいいけど、あの子の言うとおり、挨拶を交わしても初対面の人間からの食べ物は口に入れない方が安全だね」

「ま、まあ、それもそうですけれど……」

ピンクの髪のフローラを探すと、遠くで緑の髪のスピーナと仲よさげに話している。
逃げ方も似ていたが、仲が良いらしい。
マリアローゼは少しだけ羨ましく思った。

更に挨拶は続き、伯爵家も終わりに近づいた頃、1人の少女が飲物を持って近づいてきた。
肩までうねる薄茶色の髪に、青鈍色の瞳の、可愛らしい少女だ。

その子が直前で、躓いて、マリアローゼとシルヴァインの方へ飲物をぶちまけた。
咄嗟に、シルヴァインが腕を広げてマリアローゼを庇い、マリアローゼの視界は塞がれる。

「すみません、わたくしったら、おっちょこちょいで……えっ?」

「本当だね」

返事をしたシルヴァインの声音はとても冷たいものだった。
そして、飲物の飛沫は全てシルヴァインの魔力で凍らされて、パキパキと音をたてつつ崩れ落ち、
地面に降り注いだ。

「どうやら、君は最低限の作法も知らないようだから、挨拶ならもういらないよ。下がりたまえ」

「でも、わたくし、挨拶がしたくて…」

と頬を染めて食い下がる少女に、はあ、とシルヴァインが溜息を吐いた。

「挨拶に来る人間がどうして飲物を片手に寄ってくるんだい?片手でお辞儀をするつもりだったのかな?」

「シルヴァイン様、酷いです、そんな意地悪…」

うん?
前にもこんな事があったような。
マリアローゼは、火にガソリンを注ぐタイプを薄っすらと思い出していた。
後ろではヒソヒソと彼女を批判する声もする。

「俺の名前を気安く呼ばないでくれ」

流石に絶句した少女を無視するように、シルヴァインが元の位置に戻った。
口を出す隙がないので黙っていたが、何故か恐ろしい目で美少女に睨まれて、マリアローゼは震えた。

そんな目で見ないで。
そんな目で見ているとユリアさんがアップを始めてしまうので。

スッと視界を遮るように、今度はルーナが其処に立つ。
冷たいルーナの眼差しに根負けしたのか、少女は淑女とは思えない足取りで歩き去って行った。

その後は特に問題もなくスムーズに挨拶が終わり、自由に歓談するムードになったのだが、
平和な時間も束の間だった。

「貴方の家って、お金で爵位を買ったんでしょう?この場に相応しくないんじゃなくて?」

さっきの少女が、声高に男爵令嬢に絡んでいる。
マリアローゼが行こうとすると、シルヴァインがぐっと肩を押さえた。

「君が行かなくてもいいだろう」
「駄目ですわ、お兄様。わたくし達のお客様ですのよ」

これが主催でないのなら、まだ見過ごすことは出来たかもしれないが、主催なのに放置することは出来ない。
シルヴァインは形の良い眉を顰めて、はぁと溜息を漏らしマリアローゼの肩から手を下ろした。
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