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美しい兄達と
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旅行の準備に加えて、突然のお茶会の準備に追われて、使用人達は大変だったに違いない。
朝食を終えて、ドレスを着付けてもらいながら、マリアローゼは庭で動き回る彼らを眺めた。
朝から天気も良く、庭には初夏の日差しが降り注いでいる。
料理や菓子を並べる天幕が作られ、所々にテーブルやベンチが設えられている。
今回は子供達が主役のお茶会なので、子供達は立食、母達は少し離れた天幕の下でお茶会となる様子が庭からは見て取れた。
「どんな方々がいらっしゃるのか、少し楽しみですわね」
「お嬢様に悪い虫がつかないかユリアは心配ですよ!!!」
ふんすふんすと鼻息荒く、ユリアが窓辺から一緒に庭を見下ろしながら言った。
「まあ……大丈夫だと思いますけれど……」
「何も大丈夫じゃないですよ。マリアローゼ様はこんなにも愛らしく、可愛らしく……カワヨ……」
説明している内に、ほわほわとユリアの顔が笑み崩れた。
その様子を見て、マリアローゼは苦笑する。
「有難う存じます。そんなに褒めてくださって。今日は色々な方がいらっしゃいますから、きっと他にも可愛らしい令嬢が沢山いらっしゃいますわ」
「マリアローゼ様を越える令嬢は絶対にいませんよ!」
ユリアには確固たる自信がある様だ。
マリアローゼは同意するようにこくこくと頷くルーナを見るが、何も言わずにこく、と後押しするように頷かれた。
絶対の信頼を裏切らないように、頑張ろう……とマリアローゼは重圧を感じながらも微笑み返した。
用意を終えて、階下に降りて行くと、既に玄関ホールには兄達が集っていた。
改めて見ると、かなり壮観である。
着飾った兄達は、それはそれは其々違う魅力に溢れていて、立ち絵として完璧なのである。
金の髪にアイスブルーの瞳のシルヴァインは、長兄だけあって、1人だけ立派な大人の体躯をしている。
着こなしも白と青を基調にした派手すぎないが爽やかな出で立ちだ。
次男のキースは父に似た冷たそうな美貌で、線は細そうだが兄と共に鍛えてはいるので、背は平均より高い。
紺色と銀を基調にした、明るい色で溢れる会場では逆に目立ちそうな装いである。
双子の兄はそれぞれ赤に青の差し色、青に赤の差し色という、真逆の色を使いながら同じ意匠の服を着ている。
髪と眼の色に合わせていて、少し派手だが良く似合っている。
すぐ上の兄のノアークは、黒と白を基調として、金糸の刺繍で装っている。
落ち着いた色が好きな分、金糸で均衡をとっているようで、とてもかっこいい。
普段は前髪を垂らしているが、今日は上げて後ろに流しているのも普段と違ってとてもいい。
スチル回収と騒ぎまくっていたかつての妹を思い出すと、懐かしさに頬が緩んだ。
全員が、嬉しそうな笑顔を向けてくれて、マリアローゼは幸せな気持ちで兄達の輪に入って行った。
「お兄様達、とても素敵ですわ」
「妖精より美しいよ、俺のお姫様」
早速シルヴァインが大仰に跪いて、マリアローゼの手を取ると甲に口付ける。
「綺麗ですよ、マリアローゼ」
やや視線を逸らしつつも、頬を染めてキースが褒めてくれた。
「可愛いローゼ」
「凄く可愛い」
双子は何度も口にしながら、両側からマリアローゼを抱きしめる。
「ほっぺにならキスしてもいーい?」
「いいよね?ローゼ」
「パーティーが終るまで、悪戯で騒ぎを起こさなかったら考えて差し上げます」
笑顔で言うと、頭の上で顔を見合わせた双子がくすくすと笑っている。
「……似合っている」
目が合うと、照れくさそうにノアークはそれだけ呟いた。
マリアローゼも嬉しそうに微笑んで、するりとノアークの腕に手を回した。
「わたくし、今日はノアークお兄様にエスコートして頂きますわ」
朝食を終えて、ドレスを着付けてもらいながら、マリアローゼは庭で動き回る彼らを眺めた。
朝から天気も良く、庭には初夏の日差しが降り注いでいる。
料理や菓子を並べる天幕が作られ、所々にテーブルやベンチが設えられている。
今回は子供達が主役のお茶会なので、子供達は立食、母達は少し離れた天幕の下でお茶会となる様子が庭からは見て取れた。
「どんな方々がいらっしゃるのか、少し楽しみですわね」
「お嬢様に悪い虫がつかないかユリアは心配ですよ!!!」
ふんすふんすと鼻息荒く、ユリアが窓辺から一緒に庭を見下ろしながら言った。
「まあ……大丈夫だと思いますけれど……」
「何も大丈夫じゃないですよ。マリアローゼ様はこんなにも愛らしく、可愛らしく……カワヨ……」
説明している内に、ほわほわとユリアの顔が笑み崩れた。
その様子を見て、マリアローゼは苦笑する。
「有難う存じます。そんなに褒めてくださって。今日は色々な方がいらっしゃいますから、きっと他にも可愛らしい令嬢が沢山いらっしゃいますわ」
「マリアローゼ様を越える令嬢は絶対にいませんよ!」
ユリアには確固たる自信がある様だ。
マリアローゼは同意するようにこくこくと頷くルーナを見るが、何も言わずにこく、と後押しするように頷かれた。
絶対の信頼を裏切らないように、頑張ろう……とマリアローゼは重圧を感じながらも微笑み返した。
用意を終えて、階下に降りて行くと、既に玄関ホールには兄達が集っていた。
改めて見ると、かなり壮観である。
着飾った兄達は、それはそれは其々違う魅力に溢れていて、立ち絵として完璧なのである。
金の髪にアイスブルーの瞳のシルヴァインは、長兄だけあって、1人だけ立派な大人の体躯をしている。
着こなしも白と青を基調にした派手すぎないが爽やかな出で立ちだ。
次男のキースは父に似た冷たそうな美貌で、線は細そうだが兄と共に鍛えてはいるので、背は平均より高い。
紺色と銀を基調にした、明るい色で溢れる会場では逆に目立ちそうな装いである。
双子の兄はそれぞれ赤に青の差し色、青に赤の差し色という、真逆の色を使いながら同じ意匠の服を着ている。
髪と眼の色に合わせていて、少し派手だが良く似合っている。
すぐ上の兄のノアークは、黒と白を基調として、金糸の刺繍で装っている。
落ち着いた色が好きな分、金糸で均衡をとっているようで、とてもかっこいい。
普段は前髪を垂らしているが、今日は上げて後ろに流しているのも普段と違ってとてもいい。
スチル回収と騒ぎまくっていたかつての妹を思い出すと、懐かしさに頬が緩んだ。
全員が、嬉しそうな笑顔を向けてくれて、マリアローゼは幸せな気持ちで兄達の輪に入って行った。
「お兄様達、とても素敵ですわ」
「妖精より美しいよ、俺のお姫様」
早速シルヴァインが大仰に跪いて、マリアローゼの手を取ると甲に口付ける。
「綺麗ですよ、マリアローゼ」
やや視線を逸らしつつも、頬を染めてキースが褒めてくれた。
「可愛いローゼ」
「凄く可愛い」
双子は何度も口にしながら、両側からマリアローゼを抱きしめる。
「ほっぺにならキスしてもいーい?」
「いいよね?ローゼ」
「パーティーが終るまで、悪戯で騒ぎを起こさなかったら考えて差し上げます」
笑顔で言うと、頭の上で顔を見合わせた双子がくすくすと笑っている。
「……似合っている」
目が合うと、照れくさそうにノアークはそれだけ呟いた。
マリアローゼも嬉しそうに微笑んで、するりとノアークの腕に手を回した。
「わたくし、今日はノアークお兄様にエスコートして頂きますわ」
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