悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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反抗するお嬢様

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マリアローゼはルーナが用意してくれた便箋の中から、淡い桜色の便箋を選び出し、香水も好んでいる果実と花の春めいた香りを選び、便箋を一噴きした香水に潜らせるようにして、ほんのりと香りをつける。

そして、なるべく丁寧に手紙を書き始めた。
時候の挨拶と、労わってくれたことに対しての感謝、グレンツェンに聞いた帝国の話がとても面白かった事、礼儀正しくて真面目な人柄が好ましいので友人として仲良くしたいという事などを書き連ねる。
贈り物についても、とても綺麗なリボンで有り難く使わせて戴く事、香水は何の花の香りか知りたい事、そして同じく年頃の友人がいないので、是非友人として文通を致しましょうと前傾姿勢で書き終えた。
最後に、絵がとても上手なので宜しければ何時か描いてほしい事、
近々領地へ行くので都合が良い時に遊びに来て欲しいと書き添える。

「贈り物は……そうね、文通するのだもの。ペンが宜しいわね」

マリアローゼがそう言うと、ルーナがささっと手元にペンが入った小箱を差し出した。
中には黒いベルベッドが敷かれていて、その上には試作品のペンが幾つか並んでいる。
持ち手が青い硝子の物を選んで、同じ香水の香りを纏わせたハンカチで包むと、封筒の中に手紙と共に入れた。

「お父様に、お手紙を見て戴かなくては……」

そわそわと頬を染めるマリアローゼを見て、ルーナは嬉しそうに微笑みつつ頷いた。
銀盆に封の空いた手紙を載せて、今日はマリアローゼの仕度が終了すると共に部屋に入って入口近くに待機している、ノクスへと銀盆を手渡した。

「そうですわ!わたくしも文通を始めるのですから、封蝋を作っていただかなくては…」
「注文しておきますが、蝋の色は何色に致しましょうか?」

ふんすふんすと、上下させていた手をはたりと止めて、マリアローゼは宙を見上げた。

「金粉の入った薄い桃色と、銀粉の入った濃い青と、意匠は今までの薔薇と似たものでお願い致しますわ」
「畏まりました。もう晩餐の時刻ですので、食堂にいらっしゃる間に行って参ります」
「ありがとう、ルーナ。楽しみですわ」

マリアローゼはうきうきした気分で、ルーナとカンナとユリアに伴なわれて食堂へと移動した。
そして、今日も、昨日よりも萎れたジェレイドが食堂の入口に立っている。

「駄目です」

何かを言う前に、先んじてユリアが言い、マリアローゼを隠すように立ちはだかったので、
マリアローゼもカンナもその後ろを通り過ぎて席に着いた。
ルーナはユリアとジェレイドに会釈をして、食堂を通り過ぎて廊下を歩いて行き、使用人通路で曲がった。
しょんぼりとしたジェレイドに、フンと胸を反らす様に上からの目線を送った後、ユリアも食事の席に着いたのである。

「ローゼ、旅の支度は進んでいるのかい?」

晩餐の最中の父の問いかけに、マリアローゼは食事の手を止め、ちらりとジェレイドを見て、ジェレイドの視線を
振り切るかのようにつーん、と顔を背けた。

「参りません」

「えっ?」

「領地には参りません」

父はその返答を聞いて、苦笑を漏らし、ジェレイドはがっくりと項垂れた。
母は気にした風もない、おっとりとした声で「まあ」と言っただけだ。
父に関しては、領地に伴なっていく使用人達についての相談もしているので、今更中止になるとは思っていない筈で
これは単なるジェレイドへの反抗でしかない。

「ふむ、分かった。少し話す必要がありそうだ。晩餐後に執務室に来なさい、マリアローゼ」
「はい、お父様」

それには勿論従う返事をして、晩餐後はグランスを伴なって執務室へと向かった。
ルーナとノクスには勉強を優先して欲しいので、部屋で兄達を迎えてもらう事にしたのだ。
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