悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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生まれる前から知っていた

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「ジェレイドの事が聞きたいのですって?」

今日は午後になって、早目に帰宅したミルリーリウムの部屋で、マリアローゼは子供の様に母に甘えていた。
早目に帰宅した理由も、多分使用人を介してミルリーリウムに伝わったからだろう。
シルヴァインは仲直りの後、それまでの憔悴が嘘のように過剰に元気になったので、
後はギラッファにお任せして、マリアローゼは部屋に戻って母が帰るまで刺繍の続きをしていたのだ。

「ええ。わたくし昔の事を存じ上げませんもの」

母の膝にころんと、頭を乗せるマリアローゼに、ミルリーリウムは「まあ!」と嬉しそうに声をあげた。
そして、マリアローゼの髪を撫でながら話し始める。

「そうねえ。子供の頃から変わっていたわ。とても、優秀で、公爵家は彼が継ぐと言われていたの。
先代様は、先見の明があるジェレイドを跡継ぎにしたかったのね。わたくしとの婚約も途中で、ジェレイドに変更されそうになったのだけれど、ジェレイド本人が、家督もわたくしとの婚約も固辞したの」

「まあ……」

そんな事があったとは。

「彼は先見の明がある、というより、未来を見る事が出来たのですよ。わたくしとジェラルドの間に、貴女が生まれてくることも知っていたの。だから、彼は子供の頃にもう貴方の名前を決めていたのよ」

はっ?
えっ??

「そ、それはわたくしの名付け親という事でしょうか?」
「そうなりますわねえ。でも、とてもしっくりきたの。わたくしもジェラルドも。今も、やっぱり貴女の正しい名前だとそう思っていますわ」

未来予知なんてトンデモスキルを持っていたとは。
だとしたら、お金を稼ぐのは朝飯前ではないだろうか。
そんなチートを使っておいて、お兄様を馬鹿にして笑うなんて、許すまじ。

ふるふると怒りに拳を握りしめて、マリアローゼは母を見上げていた顔を伏せた。
そして、出来るだけ怒りを抑えた声で聞く。

「でしたら、ご商売をされてもうまくいきますでしょうね」
「そうでしたわね。災害が起きる事を察知すれば、必要な物資を事前に準備して売り捌いたり、
民からは信頼されて、教会や貴族からは反感を買わないように、根回しもしていましてよ」

「でも」

ミルリーリウムの声のトーンが落ちて、マリアローゼは再び母の顔を見上げた。

「貴女が生まれた時に、彼の多くの力は失われたんですって。だから、領地の管理人になる事を申し出てくれたの。
貴女の成長だけは知りたいから肖像画を送って欲しいという条件付きでね」

「わたくしが生まれる事と、叔父様の力が失われる事に何か因果関係がございますの?」

問われたミルリーリウムはうーん、と首を傾げた。

「それはわたくしも聞いた覚えはあるけど、理由は分からないと言っていたはずですわ。
ただ、そういうものなのだと。貴女が存在していればいい、とだけ。そこは印象的だったので覚えてますわ」

全く、分からない。

母も分からないだろうし、マリアローゼも分からない。

異世界召喚をされたのだろうか?
だとしても、前世は極々平凡な総合職のOLだ。
そこまで粘着されるような、愛され方を誰かにされた覚えも無い。

しかも、一口に転生といっても、既に並行世界からの転生者も確認している今、その数多ある世界からピンポイントで狙って召喚出来るものではなさそうだ。
もし、それが可能なのだとしたら、それこそ、
神の領域……。

マリアローゼはそこに思い至って、背中がぞくりとした。
力の大半が失われた、というのも自己申告なので信用は出来ない。
生まれるのを待ち望んでいたという事は、害する気はなさそうだが、周囲の人間に対してはどうだろう。
両親には一定の敬意と思慕を感じるが、兄に対しては少し…いや割と人非人だ。

「よく分かりませんわ」

本当に分からないので、それだけ言って母のドレスの繊細なフリルレースを手で弄んだ。
髪を撫でながら、母もふふっと笑う。

「本当ねえ」

さて、どうしたものだろうか…と
うとうとしながらマリアローゼは考えていた。
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