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動体視力を鍛えたいお嬢様
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翌朝、マリアローゼは悶々としながらも、何時ものようにカンナ達と体操をしていた。
帝国式体操…ラジオ体操ともいうが…を行ってから、走ったり歩いたり、無理のない範囲で運動をする。
「カンナお姉様、わたくし、視力を鍛えたいのです」
昨日気になっていた事を、マリアローゼは切り出してみた。
「と仰いますと…?」
「昨日、お二人の戦いの時、褒め言葉ではなく本当に、目で追う事が出来なかったのです」
しょぼん、と上目遣いで見ると、カンナはふむ、と考え込んだ。
横ではユリアが、はわわ、可愛い!などとキャッキャしている。
「出来れば、簡単に道具が用意できて…ええと、目標を見据えるという意味では弓は良いのですけれど、速度のある物体を目で追うという訓練がしたいのです」
「うーん…難しいですね。例えば殺陣をお見せする事なら出来ますが…それでしたら見て動きを覚えて模倣、という訓練は出来ますが、もし目で追って素早く対応となると…」
「ああ、ボールとか投げ合うのは最初にいいかもしれませんね!」
「ボール?」
とカンナがマリアローゼの代わりに聞き返す。
「ええ、大きさは様々ですけど丸い物体で、軽い素材で作れば怪我などしませんし、受け止める事で、スピードに対応した動作も出来るでしょう」
「なるほど、それはよい案ですわ。カンナお姉様の案もユリアさんの案も取り入れてみたいと思います」
流石に卓球まで行き着かないか、と少し残念だったものの、訓練するには丁度いいくらいかもしれない、とマリアローゼは思い直した。
ボールを作ろう、と思いながら、うきうきと朝食を摂りに食堂へ向かい、家族に挨拶をする。
シルヴァインの席だけは、空席だった。
あの完璧超人で、打たれ強い、というか打たれても気にしなさそうな兄が、いない。
他の兄達も、両親も気にしている筈なのだが、誰も触れようとしなかった。
マリアローゼの胸がちくり、と痛む。
ジェレイドの目的は何なのかさっぱり分からないが、兄との仲を拗れさせようとしているのだろうか?
何故か、そう、ジェレイドはシルヴァインに対して時々敵意を見せていた。
成長途上の甥をからかうにしては、行き過ぎでは?と思うこともあったのだ。
「お父様、最近ジェレイド叔父様をお見かけしませんが、どちらにいらしてますの?」
「ん?何か用なら伝えるが、王城と商会の間で働いているみたいだね」
会頭と知り合いだけあって、色々と便宜を図っているのかもしれないが、王城にも出入りしているのか、と
マリアローゼは少し考え込んだ。
「用はございませんので、お伝えしないで構いませんわ。昨日のお兄様の様子が気になったものですから」
暗にジェレイドの介入があったのではないか?という疑問を匂わせるだけに留める。
問題があれば、父が動いてくれるだろうと思いながら。
「そうか、分かった」
少し考える素振りを見せて、父は頷いた。
父の答えに安心して頷き、マリアローゼは朝食を済ませると一度部屋に戻った。
帝国式体操…ラジオ体操ともいうが…を行ってから、走ったり歩いたり、無理のない範囲で運動をする。
「カンナお姉様、わたくし、視力を鍛えたいのです」
昨日気になっていた事を、マリアローゼは切り出してみた。
「と仰いますと…?」
「昨日、お二人の戦いの時、褒め言葉ではなく本当に、目で追う事が出来なかったのです」
しょぼん、と上目遣いで見ると、カンナはふむ、と考え込んだ。
横ではユリアが、はわわ、可愛い!などとキャッキャしている。
「出来れば、簡単に道具が用意できて…ええと、目標を見据えるという意味では弓は良いのですけれど、速度のある物体を目で追うという訓練がしたいのです」
「うーん…難しいですね。例えば殺陣をお見せする事なら出来ますが…それでしたら見て動きを覚えて模倣、という訓練は出来ますが、もし目で追って素早く対応となると…」
「ああ、ボールとか投げ合うのは最初にいいかもしれませんね!」
「ボール?」
とカンナがマリアローゼの代わりに聞き返す。
「ええ、大きさは様々ですけど丸い物体で、軽い素材で作れば怪我などしませんし、受け止める事で、スピードに対応した動作も出来るでしょう」
「なるほど、それはよい案ですわ。カンナお姉様の案もユリアさんの案も取り入れてみたいと思います」
流石に卓球まで行き着かないか、と少し残念だったものの、訓練するには丁度いいくらいかもしれない、とマリアローゼは思い直した。
ボールを作ろう、と思いながら、うきうきと朝食を摂りに食堂へ向かい、家族に挨拶をする。
シルヴァインの席だけは、空席だった。
あの完璧超人で、打たれ強い、というか打たれても気にしなさそうな兄が、いない。
他の兄達も、両親も気にしている筈なのだが、誰も触れようとしなかった。
マリアローゼの胸がちくり、と痛む。
ジェレイドの目的は何なのかさっぱり分からないが、兄との仲を拗れさせようとしているのだろうか?
何故か、そう、ジェレイドはシルヴァインに対して時々敵意を見せていた。
成長途上の甥をからかうにしては、行き過ぎでは?と思うこともあったのだ。
「お父様、最近ジェレイド叔父様をお見かけしませんが、どちらにいらしてますの?」
「ん?何か用なら伝えるが、王城と商会の間で働いているみたいだね」
会頭と知り合いだけあって、色々と便宜を図っているのかもしれないが、王城にも出入りしているのか、と
マリアローゼは少し考え込んだ。
「用はございませんので、お伝えしないで構いませんわ。昨日のお兄様の様子が気になったものですから」
暗にジェレイドの介入があったのではないか?という疑問を匂わせるだけに留める。
問題があれば、父が動いてくれるだろうと思いながら。
「そうか、分かった」
少し考える素振りを見せて、父は頷いた。
父の答えに安心して頷き、マリアローゼは朝食を済ませると一度部屋に戻った。
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