悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

文字の大きさ
上 下
213 / 357
連載

初めての兄妹喧嘩

しおりを挟む
「これから領地に行くのだし、暫く戻れないから会いに行ってあげたらどうだい?」

マリアローゼは珍しく、敵に塩を贈る様な言動をするシルヴァインを繁々と見詰めた。

お兄様がそんな事を言うなんて、珍しい。
エネア殿下に情が湧いたのだろうか?

「シルヴァインお兄様はエネア殿下にはお優しいのですわね?」
「そうかな?マリアローゼが沈んだ顔をするから、薦めてみただけだよ」

直感的に、その返事が胡散臭いと感じたマリアローゼは、シルヴァインから目を逸らして、手元に視線を落とした。

エネア殿下を牽制に使う?
でもまだ赤ちゃんといってもいい年齢だし、ロランドやアルベルトを遠ざける程の効果はなさそうだ。
絆されたのか?という意味で問いかけた言葉に動揺した?
言い繕うにしても、動揺するほどの事ではないので、それも違いそうだ。
何にしても何かの思惑がありそうで、腑に落ちない。
マリアローゼは、シルヴァインを真っ直ぐ見詰めて、微笑んだ。

「そうですわね。それも良いかもしれません。エネア殿下が可愛すぎて王城で暮らす事になりそうですけれど」

何故、わたくしは怒りと悲しみを覚えているのか。
兄に利用された気がするからだろうか。

真っ直ぐ見詰め返したシルヴァインが、一瞬、表情を失くした。
そして、何時もの笑顔を浮かべる。

「それなら駄目だな」
「薦めたのはお兄様でしてよ」

パン、とジェラルドが手を叩いた。

「その話は終わりだ。シルヴァイン、私はお前を高く買っているが、ローゼの人生を左右する問題に、
嘴を挟む権利はない。下がりなさい」

ジェラルドの言葉に、シルヴァインが静かに立ち上がって食堂を出て行く。
それを見届けてから、改めてジェラルドはマリアローゼに静かに命じた。

「マリアローゼ、エネア殿下に会いに行く事は禁ずる。王城に立ち入る事もだ。そもそも君の領地行きは、王妃の提案で王家との婚約話や、他国との政治闘争から遠ざける為のものだ。分かるね?」
「はい、お父様」

そうだ。
原点に立ち返らなければいけない。
王族との婚姻を拒んだ理由は多岐に渡る。
自由でいること。
家族と一緒に暮らすこと。
ゲームの強制力等は信じていないが、オリーヴェやリトリーとの事件の様に、問題に巻き込まれる可能性を減らしたい。
エネアが可愛いのも会いたい気持ちもあるが、家族と比べるべくもない。

「重々承知しております。お父様のお言葉にマリアローゼは従います」

心配をかけないように、マリアローゼは父と母をそれぞれ見て、微笑んだ。
何事も無かったように食事を済ませて、マリアローゼは部屋へと戻った。
部屋の前には案の定、シルヴァインが立っている。

「ローゼ、ごめん、俺が悪かった」

済まなそうな顔で、謝るシルヴァインを見て、マリアローゼはふい、と顔を背けた。

「今は、お兄様とお話したくありません」

「ローゼ…」

悲しそうな声に胸が痛むが、マリアローゼは目の前でルーナに命じた。

「今日は誰ともお会いしません。他のお兄様が訪ねてきたらお伝えしてね、ルーナ」
「畏まりました。シルヴァイン様も、どうか、お引取りを」

シルヴァインの返事を聞く前に、マリアローゼはノクスの開けた扉から中に入った。
マリアローゼが拒んでいる以上、部屋に押し入ったりはしないはずで、
そのままフラフラとマリアローゼはベッドに倒れ込んだ。

敵と戦う方が簡単だ。

マリアローゼはほろほろと涙を零した。
愛する家族が相手だと、冷たくしてもされても、心が抉られるように痛む。

何故急に、あの兄がそんな事を言い出したのか。
そこにも作為的な何かを感じる。
シルヴァインを唆せる人間がいるとするならば、誰だろうか。
一喝したジェラルドにも、シルヴァインの意図は感じ取れていたし、穏やかではあるか痛烈な批判もしていた。
父でも母でもない。
他の兄では役者不足だ。
だとしたら、脳裏に浮かぶのはただ一人。

ジェレイド叔父様。
しおりを挟む
❤キャライメージはPixivにあるので、宜しければご覧になって下さいませ
感想 135

あなたにおすすめの小説

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!

小択出新都
ファンタジー
 異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。  跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。  だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。  彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。  仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました

あさひな
ファンタジー
二児の子供がいるワーキングマザーの私。仕事、家事、育児に忙殺され、すっかりくたびれた中年女になり果てていた私は、ある日事故により異世界転生を果たす。 転生先は、前世とは縁遠い公爵令嬢「イザベル・フォン・アルノー」だったが……まさかの乙女ゲームの悪役令嬢!? しかも乙女ゲームの内容が全く思い出せないなんて、あんまりでしょ!! 破滅フラグ(攻略対象者)から逃げるために修道院に逃げ込んだら、子供達の扱いに慣れているからと孤児達の世話役を任命されました。 そりゃあ、前世は二児の母親だったので、育児は身に染み付いてますが、まさかそれがチートになるなんて! しかも育児知識をフル活用していたら、なんだか王太子に気に入られて婚約者に選ばれてしまいました。 攻略対象者から逃げるはずが、こんな事になるなんて……! 「貴女の心は、美しい」 「ベルは、僕だけの義妹」 「この力を、君に捧げる」 王太子や他の攻略対象者から執着されたり溺愛されながら、私は現世の運命に飲み込まれて行くーー。 ※なろう(現在非公開)とカクヨムで一部掲載中

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。