悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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お嬢様は欲しい…動体視力が!

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何かの本で読んだことがあるのだ。
動体視力は子供の内に鍛えなくてはいけないと。
早い動きの戦いを目で追うのも練習になるだろうけれど、ただじっと見ているだけでは芸がないし…
ここは球技をするべきだろうか……
テニス?卓球?
実は前世では両方共苦手な部類の種目だったのだが、卓球なら割と簡単に用意出来そうだ。
ただし、これを開発すると転生者だとバレてはしまわないだろうか。

ううん、でも……動体視力を鍛えるには身体の動きも伴なっていた方が、運動にもなるし一石二鳥…
けれど、バレるのは嫌ですわ……

「お嬢様、そろそろお止めしたほうが……」

ノクスの囁きに、マリアローゼはハッと現実に引き戻された。
自分の動体視力のなさに絶望して、対応策を熟考してしまっていたのだ。

「もう、お止めになって!」

慌てて立ち上がって言うものの、二人は二人で勝負に夢中になっているのか、止らない。

「グ、グランス、二人を止めてください」

泣きそうな声で頼むマリアローゼに、グランスはピシリと一礼して剣と盾を掴むと、無造作とも思える動作で二人の間に入って、それぞれの武器を剣と盾で受け止めた。

「お嬢様がお泣きになられてます」

グランスの静かな一言で、我に返った二人は、バッとマリアローゼを振り仰いだ。
その迫力に押されて、マリアローゼは、ひゃ、と短く悲鳴をあげる。
実際に涙目だったので、涙を拭って、二人に請う。

「引き分けで、引き分けで終わりにしてくださいませ」

二人はお互いを見詰めて、しゅん、としながら武器を収めると、グランスに対してぺこりと礼をした。

「「参りました」」

え?そっち?

と思わなくもないが、確かにあの凄まじい戦いぶりの二人を一瞬にして無傷で止めたのは凄い技術なのだろう。
それに対して誰も声をあげる事はなかった。
言われたグランスは、首を横に振ると二人を称える。

「良い戦いでした」

周囲からは喝采が起きて、それでも二人は浮かない顔でしょんぼりとテラスに戻って来た。

「申し訳ありません、マリアローゼ様」
「マリアローゼ様の美声を聞き逃すなんて、神が許してもユリアは許せません、自分が…!」

そんな事を気にしていたのか、とマリアローゼは驚いて、二人を慰めた。

「真剣に立ち合って下さって、御礼を申し上げますわ。わたくしでは二人の動きを追えないほどに
卓越した戦いぶりでございました。お二人ともお強いから、集中しないと互角に戦えなかったのも理解しています。
どうか、謝らないでくださいませ」

二人の手をそれぞれ握って訴えると、カンナもユリアも微笑んだ。

「お嬢様がそう仰るなら」
「マリアローゼ様のお言葉に従います!」

漸くその言葉で吹っ切れたような笑顔になり、二人は空いた方の手で拳を作ってお互いの拳と合わせた。
見守っていたらしい、外野からも拍手や盾を剣で打ち鳴らす音が聞こえてくる。
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