悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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お嬢様の賞品を巡って

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将来の心配はあるが、大体は筋肉が解決してくれるだろう、とマリアローゼは筋肉に丸投げをしつつ、
グランスの修練振りに注視した。
襲撃事件の際は、マリアローゼは馬車の中に隠れていたので、戦いの現場は見ていない。
返り血を浴びたシルヴァインが怖かったのと、あちこちに散乱する遺体の陰惨さくらいだ。
改めて陽の光の下で見るグランスは、洗練された動きを見せている。

「まあ、グランスはお強いのね…」

油断ない瞳で観察していたカンナは、ゆっくりと頷いた。

「強いですね。私でも勝てるかどうか」
「そんなにですの?」

有名冒険者パーティに居たアタッカーである剣士のカンナと並ぶ程に強いのか?というのと、
女性なのにグランスと匹敵する強さがあるのか?という疑問の板挟みで、マリアローゼは目をぱちくりした。

「実戦でなら、勝機はあると思います」

それは、殺し合い…
マリアローゼは、自信ありげに微笑むカンナに口をぱくぱくさせた。

「大丈夫です。ユリアさんではないので、グランスさんとは戦いません」
「ああ、良かったですわ…」

ニッコリ微笑んで付け足すカンナに、マリアローゼはほっと胸を撫で下ろした。
そこへユリアが辿り着く。

「失礼ですねー!私だってマリアローゼ様の騎士とは戦いませんよ。それにカンナさんは激つよなので、
剣だけの勝負だって勝てるんじゃないですか?」

別方向からの褒め言葉に、マリアローゼはカンナを見上げる。

「いえいえそんな。ユリアさんには言われたくないですよ。私よりユリアさんの方が…」
「えーー!いやいや、私、女性で私と渡り合えたのカンナさんが初めてですよ」

褒め殺し大会が開催されてしまったので、マリアローゼは交互に見て、ふんふんと頷いた。

「いつか、お二人の戦いも拝見したいですわ」

にこやかに締めようとしたのだが、そうは問屋が卸さなかった。
ユリアがニッコーと笑って、言いのけたのだ。

「なんならいきましょうか?一勝負。どうでしょう、カンナさん」
「ふふっ、受けて立ちましょう」

好戦的である。
普段穏やかなカンナも、やる気を漲らせている。

「で、ではええと…折角ですので、賞品を差し上げますわ。
ちょうどエネア殿下に差し上げたリボンが片方あぶれてしまいましたので、宜しければそちらを…」

大した商品じゃないから、本気は出さないでいいですよ、と言う風にマリアローゼは笑って付け足した。
のだが、ユリアには通じない。

「カンナさん…私絶対負けませんよ」
「私も負ける気はないですけど、魔法は禁止でやりあいましょう」

うっかり、やりあいましょうという言葉が、殺りあいましょうに聞こえてしまうほど、
二人はダークなオーラを発しているように見えて、マリアローゼは戦いた。

やっちまいましたわ……。

本当に大した事のない賞品…捨てるか包装に使うかしかない物体なのに、ユリアとカンナが本気モードで対峙する。
周囲も二人の只ならぬ雰囲気に、場所を空けるほどだった。

二人の携えている木製の武器は、普段二人が使っている物を模している。
カンナが刀を使うのは知っていたが、ユリアの武器は驚く事に、巨大な斧だった。

怖ぁ……

「普段より軽いけど、木だから仕方ないですね」
「お手柔らかにお願いします」

全然、お互いお手柔らかになりそうもないので、マリアローゼははらはらと見守った。

じりじりと二人は向き合って、距離を詰めていく。
先に殴りかかったのはユリアの方だった。
斧を振りかぶったユリアに、カンナが一閃、刀を振りぬける。
手元を狙った一撃を、ユリアは柄で受け止めて、そのまま斧を振り下ろした。
カンナは素早い足捌きでそれを避け、背後に回って刀を横に振るが、ユリアは地面に突き立てた斧を起点として、
柄と勢いを利用してくるん、と向こう側に跳ね避ける。

双子の兄の「スゲーーー」という叫びも聞こえてきたが、練兵場は大騒ぎになっていた。
放って置いたら賭けすら始まりそうである。

だが、マリアローゼにとって、その戦いは良く理解できなかった。
何のこっちゃ?と首を傾げると、ノクスが、後ろから解説してくれたのである。

「ま、まあ……わたくし、よく見えませんでしたわ。だって動きが早いのですもの……」

体力も無ければ、動体視力も死んでいるのか、幼女は…。

マリアローゼは予想外の事にぐぬぬと唇を噛み締めた。

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