悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

文字の大きさ
上 下
204 / 357
連載

お礼の手紙

しおりを挟む

翌朝、マリアローゼはカンナとの体力作りを早速再開した。
暇なユリアと、マリアローゼのお供としてルーナも参加して、仲良く走ったり体操したりする。

何時もどおりの朝食の後、イルストに急遽描かせた肖像画を持ってジェラルドは登城し、
ミルリーリウムもお茶会へと出かけて行った。
マリアローゼは自由に過ごしていいという許可を得ているので、昨日の続きの手紙をせっせと書いている。
エルノの冒険者ギルドの長にも、無事着いたという手紙を書き、
マスロの市長にも、滞在中のお礼と無事を伝えがてら、エリーゼに薬草栽培について相談した事も伝えておく。

「そうそう、あの子にもお礼を出しませんと…リリア、でしたわね。神父様にもお手紙を出さなくてはいけませんし、市長さんより神父様の方が村の人々に詳しいでしょう」

自分の呟きにうんうん、と納得しながらマリアローゼは神父への手紙をしたため始める。
怪我人の治療は主にマリアローゼだったとしても、その時も色々手伝ってもらったし、後日彼の面倒をみてくれたのは、神父様と修道女や修道士の人々なのだ。

それから、今回の旅で突然の招集に駆けつけてくれた領主や私兵団、騎士団にもお礼の手紙を準備する。
贈り物をとも思ったが、公爵家から既に報酬は支払われているので、それはやめておく。

「お城でも沢山の方々にお世話になったけれど…」

ふーむ、と考えていると、近くで掃除や片づけをしていたルーナが、耳聡く反応を返した。

「もし、従僕や小間使い等でしたら、僭越ながら私が手配致しました。同じく、神殿の方にも贈ってございます。お嬢様は、直接お言葉をお交わしになった方々に対してだけで良いかと存じます」

「まあ、ルーナ、有難う。ふふ、流石ですわ」

だとしたら、議長を務めたお爺様と、長谷部、彼にはユリアの事でもお礼を言わなくては。
ユリアが守ってくれて安心出来るし、とても明るい気分にさせてくれるのだ。
今日はグランスと交替で、午前中はカンナとユリアは訓練に、午後はグランスが訓練に行くらしい。

「そうそう。きちんと護衛の任を果たしてくださった騎士様達にもお礼を伝えて頂きましょう」

あの襲撃の後、マグノリアや王都の神殿騎士と、異端審問官達の調査で、死んだ者と姿を消したアートは破門とされ、ルクスリア神聖国への入国を禁じられた。
とはいえ、アートは不可視の魔法を使うそうなので、防ぐのも難しそうではある。
巻き込まれただけの騎士達は、不問とされのだが、ユバータだけは降格処分とされたらしい。
威勢は良かったのだが、戦闘は苦手だったとみえ、天幕で震えていたのが大きな原因かもしれない。

「それと…ヘンリクス殿下、彼にはとても良くして頂いたわ」

会話もダンスもとても心地の良いものだったし、穏やかで争いになる前に身をかわす事が出来る器用さもある。
そして、優柔不断などではなく、切り捨てるべき物はばっさり切り捨てる所も、王族としては優秀だ。

とりあえず、それはそれとして。
嫁ぐ気は全く無いので、友情をメインに押し出した文言で手紙を飾る。
学園が始まる12歳までは、絶賛立ち寄りたくない国なのである。
素敵な殿方だとしても、その国の王子というだけで、かなり縁遠く感じてしまうのが申し訳ないくらいだ。

あら、でも12歳…?
12歳で学園生活は始まっていなかったような…?
15歳で入学、だった筈なのだけれど。
主人公達は高等部からの入学だとして、それまで家で過ごしていたのかしら?

「お兄様に聞いてみるしかなさそうですわね」

シルヴァインは来年から学校へ通うことになるのだ。
教育機関については知識もあるはずだった。

ふむ、とマリアローゼは頷いて、続いて王妃への手紙をしたためる。
ゴリ押しされた聖女とのお茶会や、早く帰りたい事情のせいで、王妃主催のお茶会には参加出来なかったお詫びもかねている。
それに、廊下で会った親切な小間使いへのお礼も、伝えたかった。
確か、アンナ、という。
マリアローゼはその事についても書いて、贈り物を渡して貰いたい旨をお願いをする。

贈り物はマリアローゼの刺したハンカチだ。
あの時貰ったものは、そのまま持ち帰ってきてしまっている。

マリアローゼは戸棚にしまってある、今まで刺した刺繍のハンカチを出して…

「む……これはちょっとやり直した方がよさそうですわね…」

と呟いた。
しおりを挟む
❤キャライメージはPixivにあるので、宜しければご覧になって下さいませ
感想 135

あなたにおすすめの小説

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。