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第三王子の為の肖像画
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「ローゼ、君は一体何をしたんだい……?」
晩餐の席で、ジェラルドがいきなりそう問いかけた。
はて?
父と別れた後はお茶会を楽しんだ記憶しかない。
「……と仰いますと…?わたくし、お母様と伯母上様と従兄弟殿達とお茶会をしただけですけれど…」
母のミルリーリウムを見ると、うんうん、と肯定するように頷いてくれた。
それから変わった事と言えば…
「王妃殿下より遣いの方が見えられまして、本日のお礼にと色とりどりのリボンを下賜されましたけれど、エネア殿下にわたくしのリボンを差し上げた返礼かと存じます」
返礼にしては豪華すぎる物ではあったのだが。
しっかりとした木の箱、それも側面は美しい彫刻で飾られた物に、上部の蓋はガラスが嵌めこんであって、蓋を開けなくても中にある美しいリボン達がよく見えるのだ。
中には色々な色のリボン、繊細な刺繍を施されたものから、ツヤツヤと表面が光る布で出来たものなど、
その辺の店では取り扱っていなさそうな高級なリボンばかり入っていた。
ジェラルドはマリアローゼの返事を聞いて、ふむ、と頷いて、ゆっくり大きな溜息を吐いた。
「そのエネア殿下が、君を探して大泣きして大変だったそうだ。しかも、家族よりも先に君の名前を覚えるなんて、王妃殿下も陛下も苦笑なさっておいでだったぞ」
マリアローゼは目をぱちくりとさせた。
「ゼナイダさんはそんな事一言も……あっ、ううん……?でも、偶然ですわ。たまたま、そういう瞬間が、あのお散歩の時に訪れただけで…」
しどろもどろに弁明するマリアローゼに、ジェラルドも諦めたような苦笑を浮かべた。
「責めてはいないよ、ローゼ。ただ、エネア殿下の為に、君の肖像画を贈ることになっただけで」
肖像画、とな?
そこまで手がつけられない位に泣いてしまわれたのだろうか。
それはそれでマリアローゼの心は痛んだ。
あの小さな王子が、全身を震わせて力いっぱい泣きながら名前を呼んでいた姿を思い出す。
「おかわいそうな事を致しました。つい、わたくしに弟がいたなら、などと浅慮に振る舞ったばかりに…」
そこで双子の兄の茶々が入った。
ミカエルが、嬉しそうにのたまう。
「それって、ローゼは弟が欲しいっていう事?」
「父上と母上に、作って欲しいの?」
続いてジブリールが、楽しそうに付け足した。
何とデリカシーのない事を言うのだろうか。
マリアローゼは、顔を見合わせている両親に向けて言った。
「いいえ、出産は女性にとって命に関わるものです。お母様にこれ以上ご負担のある事は望みません」
それに、と付け足して、次は双子の兄達を順番に見て冷たく微笑んだ。
「よく考えてみれば、ミカエルお兄様もジブリールお兄様も、手のかかる弟のようですもの。
わたくしはそれで十分でございますわ」
マリアローゼの言葉に、シルヴァインが笑い声をあげ、キースまでもが口に手を当てて笑っている。
「ふ、ふふっ、確かにそうかもしれませんね」
双子はマリアローゼの言葉に衝撃を受け、兄達の反応で更に追い討ちをかけられた。
ノアークは、少し焦りながら、自分の立ち位置を確認してくる。
年上である双子が弟と称されたのが気になったのだろう。
「お、俺は、弟の様か?」
「いいえ?ノアークお兄様は、頼れるお兄様でございましてよ」
思ったとおりの返事をすると、ノアークはぱああ、と微笑んで、落ち着いて席に座り直す。
うん、可愛い。
マリアローゼは思わずにっこりと微笑み返した。
晩餐の席で、ジェラルドがいきなりそう問いかけた。
はて?
父と別れた後はお茶会を楽しんだ記憶しかない。
「……と仰いますと…?わたくし、お母様と伯母上様と従兄弟殿達とお茶会をしただけですけれど…」
母のミルリーリウムを見ると、うんうん、と肯定するように頷いてくれた。
それから変わった事と言えば…
「王妃殿下より遣いの方が見えられまして、本日のお礼にと色とりどりのリボンを下賜されましたけれど、エネア殿下にわたくしのリボンを差し上げた返礼かと存じます」
返礼にしては豪華すぎる物ではあったのだが。
しっかりとした木の箱、それも側面は美しい彫刻で飾られた物に、上部の蓋はガラスが嵌めこんであって、蓋を開けなくても中にある美しいリボン達がよく見えるのだ。
中には色々な色のリボン、繊細な刺繍を施されたものから、ツヤツヤと表面が光る布で出来たものなど、
その辺の店では取り扱っていなさそうな高級なリボンばかり入っていた。
ジェラルドはマリアローゼの返事を聞いて、ふむ、と頷いて、ゆっくり大きな溜息を吐いた。
「そのエネア殿下が、君を探して大泣きして大変だったそうだ。しかも、家族よりも先に君の名前を覚えるなんて、王妃殿下も陛下も苦笑なさっておいでだったぞ」
マリアローゼは目をぱちくりとさせた。
「ゼナイダさんはそんな事一言も……あっ、ううん……?でも、偶然ですわ。たまたま、そういう瞬間が、あのお散歩の時に訪れただけで…」
しどろもどろに弁明するマリアローゼに、ジェラルドも諦めたような苦笑を浮かべた。
「責めてはいないよ、ローゼ。ただ、エネア殿下の為に、君の肖像画を贈ることになっただけで」
肖像画、とな?
そこまで手がつけられない位に泣いてしまわれたのだろうか。
それはそれでマリアローゼの心は痛んだ。
あの小さな王子が、全身を震わせて力いっぱい泣きながら名前を呼んでいた姿を思い出す。
「おかわいそうな事を致しました。つい、わたくしに弟がいたなら、などと浅慮に振る舞ったばかりに…」
そこで双子の兄の茶々が入った。
ミカエルが、嬉しそうにのたまう。
「それって、ローゼは弟が欲しいっていう事?」
「父上と母上に、作って欲しいの?」
続いてジブリールが、楽しそうに付け足した。
何とデリカシーのない事を言うのだろうか。
マリアローゼは、顔を見合わせている両親に向けて言った。
「いいえ、出産は女性にとって命に関わるものです。お母様にこれ以上ご負担のある事は望みません」
それに、と付け足して、次は双子の兄達を順番に見て冷たく微笑んだ。
「よく考えてみれば、ミカエルお兄様もジブリールお兄様も、手のかかる弟のようですもの。
わたくしはそれで十分でございますわ」
マリアローゼの言葉に、シルヴァインが笑い声をあげ、キースまでもが口に手を当てて笑っている。
「ふ、ふふっ、確かにそうかもしれませんね」
双子はマリアローゼの言葉に衝撃を受け、兄達の反応で更に追い討ちをかけられた。
ノアークは、少し焦りながら、自分の立ち位置を確認してくる。
年上である双子が弟と称されたのが気になったのだろう。
「お、俺は、弟の様か?」
「いいえ?ノアークお兄様は、頼れるお兄様でございましてよ」
思ったとおりの返事をすると、ノアークはぱああ、と微笑んで、落ち着いて席に座り直す。
うん、可愛い。
マリアローゼは思わずにっこりと微笑み返した。
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