悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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見詰められると食べにくい

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争いが起きれば、水に落とした小石から波紋が広がるように、
思いも寄らない形で、突然襲い掛かってくるかもしれないのだ。
攻略本や、選択肢などない世界では、全て慎重に選ばなくてはいけない。
例え大した事はない出来事だとしても、キルクルスが今日会って話した事を突然王妃に告げれば、
それは不意打ちになってしまう。
そして、何故伏せたのかと不信感を持たせてしまうだろう。
貴族の嗜みは「敵を作らない事」なのだ。

とはいえ、マリアローゼも健全な5歳児なので、再び甘いものを頬張って至福の時間を迎えた。
はむはむ、と食べるマドレーヌからは芳醇なバターの香りと、控えめな甘さ故か蜂蜜の香りも少ないが、
こちらからも柑橘系の香りがして、大変美味しい。
マリアローゼは遠慮なく二つ目に手を伸ばした。

はた、と二人の王子の視線に気が着いて、マリアローゼは咀嚼を止めた。
口を手で覆ってから、もぐもぐと咀嚼を開始して、こくん、と飲み込む。

「あの…その様に見詰められていては、恥ずかしいのですけれど……」

と二人に言うと、王子達はハッとしたように目を逸らして頬を染めた。

「すまない。…ローゼは甘いものが好きなのか?」

あれだけモリモリ食べていたら、嫌いではないと分かるだろうけれど、もじもじ聞いてくるロランドは可愛い。
マリアローゼは、こくん、と頷いて答えた。

「ええ。女性とは甘い食べ物が好きな生き物ですのよ。わたくしも大好きですわ」

「では、贈ったら嬉しいだろうか?」

「ええ、勿論。とても嬉しゅうございます」

領地にいる間に、美味しいお菓子を贈ってくれるのだろうか。
それは大歓迎だ。

マリアローゼは満面の笑みを浮かべて、こく、こく、と頷いた。

「分かった、良い物があったら、贈らせて貰う」

「有難う存じます、ロランド殿下。幸甚に存じますわ」

贈り物と言うのは案外難しい。
出来れば相手の好きな物を贈りたいものである。
嬉しそうにはにかむロランドに、マリアローゼは花のように微笑み返した。

「そういえば、ローゼは素朴で可愛い置物をくれたけれど、ああいう物が好きなのかい?」

今度はアルベルトに問いかけられ、マリアローゼはふんすふんすと頷いた。
ロバの置物も可愛いが、グランスに作って貰った世界で一つの鮭with熊も素晴らしい。

「ええ、アルベルト殿下。わたくし、手作りの動物の置物が好きですの。可愛らしくて」

長兄と感性が似ているのに、アルベルトにはあのロバの可愛さが分かると見える。
中々センスが宜しいわ。

とかなり上から目線で王族を評して、マリアローゼはにっこりと微笑んだ。
アルベルトはそんな不可解な評価を得ているとは知らずに、優雅に微笑み返した。

「では、良い物を見つけたら、贈ろう」
「まあ、有難う存じます。とても楽しみにしておりますわ」

そんな子供達の遣り取りをみて、カメリアとミルリーリウムは母親の顔で微笑んでいる。
子供達が仲良くしているのを見ると、とても心が温まるものだった。
特に不仲な兄弟を抱えたカメリアにとって、マリアローゼの存在は僥倖だと言える。
だが、近い将来、妻を娶る事になった場合、今度は逆に兄弟の争いの種にならないかが心配でもあった。
今のところマリアローゼには全くその気はないようだが、
二人の息子がいっそ哀れにすら思えるほど、全く恋しそうな雰囲気の欠片もないのだが…
それでも、恋慕と言うのは厄介な感情なのである。

無理矢理に決めてしまえばいいとアルフォンソは考えている節があるが、カメリアは妹との約束もあるし、それこそいらぬ争いを巻き起こすだけとみて、反対の姿勢は既にアルフォンソに示してある。
国の為だけを考えるのならば、アルベルトにマリアローゼを添わせるのが理想だろう。
でもロランドは。
国を捨てるならまだしも、マリアローゼを得る為に争う道を選ぶ可能性はある。
下手をすれば、逃げ出したいマリアローゼとロランドが逃避行、などという事になりかねない。
そうなれば、アルベルトは色々な意味で失墜するだろう。
何か対策を講じなければ、とカメリア王妃は目を細めて、子供達を見詰めていた。
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