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筋肉があればいいじゃない
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キルクルスには公爵家を後ろ盾にしたいという打算もあるかもしれないが、
だからといって王位継承権の順位が上がる訳でもない。
少なくとも、アルフォンソは健在で、息子の王子達も既に優秀さは際立っているので、順調に育つだろう。
万が一、億が一、アルフォンソ国王に何かあったとしても、
正妃との間に成人した王弟がもう1人居て、臣籍降下して公爵家に婿入りしている。
彼が後見人若しくは、アルベルトが立太子するまで代理を務める事も可能である。
この国では公爵家同士は、婚姻関係で結ばれている事が多い。
その為に公爵家同士の争いというものが、全くといっていいほど起きないのが現状だ。
であれば、公爵家に降下した王弟殿下は全ての公爵家を味方に付けていると言っても過言ではない。
つまり、キルクルスが王となる可能性は限りなくゼロに近い。
でも、筋肉があれば色々と解決する。
王座を狙わなくても、騎士になればいいじゃない。
他に目を向けることが出来れば、無理な争いに身を投じる事もないだろう。
余計な野心を抱いて、返り討ちにされるよりは、せっせと筋肉を味方につけて、
明るい未来へと生きていってほしい。
筋肉好きなマリアローゼ以外にも、普通に女性にもてれば、そのうち良い相手も見つかるだろう。
キルクルスは、マリアローゼの言葉に納得したのかうんうん、と頷いたので、
マリアローゼはさっとお辞儀をした。
「では、王妃殿下の元へ戻りますので、御機嫌よう」
「うむ」
最後にもう一度、にっこり微笑んで見せてから、マリアローゼは王妃のお茶会へと戻った。
とことこと歩いてくる姿を見て、カメリア王妃が、あら、と首を傾げた。
「片方のリボンはどうしましたの?」
問われて、マリアローゼは外したリボンの事を思い出した。
「失礼致しました。エネア殿下が少々ぐずっておられたので、差し上げたのです」
「まあ、それは悪いことをしたわ」
口元を手で覆って、カメリア王妃は目を瞬いた。
マリアローゼは、微笑みながら、首を横に振る。
「いえ、ゼナイダさんでしたら問題ないと思われますけれど、あまりに力いっぱい泣かれるので可哀想で、わたくしが出過ぎた真似を致しましたの。でも、最後はよく眠っておいででしたわ」
「そう、ローゼは幼子の扱いも心得ているのね」
と王妃に言われるものの、マリアローゼはそこまで幼い子供と接した経験はない。
そして、前世でも同じく、そんな経験は見当たらない。
「どうでしょう…でもエネア殿下はお可愛らしい方でしたわ。沢山運動もなさっておいででした」
「そう……将来有望ですね」
マリアローゼは、力強い這い這いを思い出して、ふふっと笑う。
そして、席について紅茶を飲んでから、キルクルスの事を思い出して、王妃に伝える事にした。
「そういえば、先程、戻ってくる途中でキルクルス殿下にお会い致しました」
「まあ、珍しいこと」
と短く答えたが、目つきは若干鋭くなっている。
王妃の圧も中々凄いのである。
「何か特別な用でもあったのかしら?」
と問われた。
言葉では問われていないが、これは質問なのだ。
何を話したのか?という問いかけに他ならない。
たとえ、身内で血縁者で親戚であっても、王妃と臣下である事は揺ぎ無い事実だ。
慎重に答えなければいけない。
「立ち話をしただけですので、分かりかねますけれど。女性に褒められたい様子でしたので、
身体を鍛えるようお教え致しましたわ」
「まあ、それは良い事をしましたね」
からからと笑う王妃から、先程の険しさは感じないので、マリアローゼはほっと胸を撫で下ろした。
やはり、キルクルスは色々と面倒な事を起こしそうな輩だったのかも知れない。
しかも、この様子では多分、王妃には何もかも筒抜けなのだろう。
何にしても危ない話は潰しておくのが正解だ。
だからといって王位継承権の順位が上がる訳でもない。
少なくとも、アルフォンソは健在で、息子の王子達も既に優秀さは際立っているので、順調に育つだろう。
万が一、億が一、アルフォンソ国王に何かあったとしても、
正妃との間に成人した王弟がもう1人居て、臣籍降下して公爵家に婿入りしている。
彼が後見人若しくは、アルベルトが立太子するまで代理を務める事も可能である。
この国では公爵家同士は、婚姻関係で結ばれている事が多い。
その為に公爵家同士の争いというものが、全くといっていいほど起きないのが現状だ。
であれば、公爵家に降下した王弟殿下は全ての公爵家を味方に付けていると言っても過言ではない。
つまり、キルクルスが王となる可能性は限りなくゼロに近い。
でも、筋肉があれば色々と解決する。
王座を狙わなくても、騎士になればいいじゃない。
他に目を向けることが出来れば、無理な争いに身を投じる事もないだろう。
余計な野心を抱いて、返り討ちにされるよりは、せっせと筋肉を味方につけて、
明るい未来へと生きていってほしい。
筋肉好きなマリアローゼ以外にも、普通に女性にもてれば、そのうち良い相手も見つかるだろう。
キルクルスは、マリアローゼの言葉に納得したのかうんうん、と頷いたので、
マリアローゼはさっとお辞儀をした。
「では、王妃殿下の元へ戻りますので、御機嫌よう」
「うむ」
最後にもう一度、にっこり微笑んで見せてから、マリアローゼは王妃のお茶会へと戻った。
とことこと歩いてくる姿を見て、カメリア王妃が、あら、と首を傾げた。
「片方のリボンはどうしましたの?」
問われて、マリアローゼは外したリボンの事を思い出した。
「失礼致しました。エネア殿下が少々ぐずっておられたので、差し上げたのです」
「まあ、それは悪いことをしたわ」
口元を手で覆って、カメリア王妃は目を瞬いた。
マリアローゼは、微笑みながら、首を横に振る。
「いえ、ゼナイダさんでしたら問題ないと思われますけれど、あまりに力いっぱい泣かれるので可哀想で、わたくしが出過ぎた真似を致しましたの。でも、最後はよく眠っておいででしたわ」
「そう、ローゼは幼子の扱いも心得ているのね」
と王妃に言われるものの、マリアローゼはそこまで幼い子供と接した経験はない。
そして、前世でも同じく、そんな経験は見当たらない。
「どうでしょう…でもエネア殿下はお可愛らしい方でしたわ。沢山運動もなさっておいででした」
「そう……将来有望ですね」
マリアローゼは、力強い這い這いを思い出して、ふふっと笑う。
そして、席について紅茶を飲んでから、キルクルスの事を思い出して、王妃に伝える事にした。
「そういえば、先程、戻ってくる途中でキルクルス殿下にお会い致しました」
「まあ、珍しいこと」
と短く答えたが、目つきは若干鋭くなっている。
王妃の圧も中々凄いのである。
「何か特別な用でもあったのかしら?」
と問われた。
言葉では問われていないが、これは質問なのだ。
何を話したのか?という問いかけに他ならない。
たとえ、身内で血縁者で親戚であっても、王妃と臣下である事は揺ぎ無い事実だ。
慎重に答えなければいけない。
「立ち話をしただけですので、分かりかねますけれど。女性に褒められたい様子でしたので、
身体を鍛えるようお教え致しましたわ」
「まあ、それは良い事をしましたね」
からからと笑う王妃から、先程の険しさは感じないので、マリアローゼはほっと胸を撫で下ろした。
やはり、キルクルスは色々と面倒な事を起こしそうな輩だったのかも知れない。
しかも、この様子では多分、王妃には何もかも筒抜けなのだろう。
何にしても危ない話は潰しておくのが正解だ。
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