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商談と、お茶会
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「どうした?ローゼ」
「お父様がそんなに喜んでくださると思わなくて…ローゼは嬉しゅうございます」
「そうか…私も嬉しいよ。仕事が捗れば、君やリリィと過ごせる時間も増えるだろう」
便利だし、と考えただけ道具の効能を、マリアローゼはあまり考えていなかったので、
ジェラルドの言葉に嬉しくなり、何度も頷いた。
あどけない笑顔を浮かべるマリアローゼに、ジェラルドもミルリーリウムも目を細めて喜んでいる。
父の助けになればいい、人々の暮らしに役立てばいい、と思っていたけれど、
思った以上に父の助けになりそうで、マリアローゼは満足げに魔道具を見詰めた。
「城や役所に卸す分は既に用意できていますし、店での販売もすぐに可能です。
宰相閣下の許可が降りたとあらば、本日中にも滞りなく納める事が出来ましょう」
マローヴァが言えば、ジェラルドはうむ、と快く頷いた。
すぐにも書類を作成するのかと思ったが、娘を膝から降ろす気はないらしい。
「分かった。それと貴族への販売は私の懇意にしているリーフェンデール商会をと言っていたが、
お前達の所へ直接買い付けに来た客についてはそちらで販売して良い。
公的機関への販売もブルーローズ商会に任せよう。
飽くまでリーフェンデールは元々の顧客や貴族への売り込み時にのみと伝えてある」
ジェラルドは娘の頭を優しく撫でながら、マローヴァに伝え、マローヴァは恭しく頭を下げた。
「素晴らしい采配に感謝致します」
少し仰々しい気もするが、商人ならばこの程度の挨拶は普通なのかもしれない。
言われたジェラルドも特に気にする風もなく、マリアローゼを優しく愛でている。
「他に用件は?」
「いえ、今日はご挨拶だけと思っておりましたし、十二分な成果を頂きましたので、書類を頂き次第失礼して、関係各所へ挨拶に参りたいと思います」
「お父様、どうぞ書類をご用意なさって。ローゼはお膝から降りますわ」
時は金なり。
商人の時間を奪うわけにはいかないのだ。
マリアローゼは、ストンと床へと降り立った。
だが、すかさず手が伸びてきて、再びシルヴァインの膝に乗せられる。
反論したいところだが、奥に居るジェレイドの用意された手を見て、マリアローゼは潔く諦めた。
目の前に座っているユリアの目は死んでいる。
庭園の一角に設えられたお茶の席に、ミルリーリウムとマリアローゼは歩いて向かった。
少し離れた場所に、紅茶や焼き菓子を置くテーブルと天幕があり、ユリアとカンナとルーナはそこで足を止める。
お茶が用意されたテーブルには、先ほどまで王と並んで座っていた王妃が、優雅に微笑んでいた。
「王妃殿下、ミルリーリウム・フィロソフィ、及び娘のマリアローゼが参りました」
ミルリーリウムの挨拶に合わせて、マリアローゼも身を屈める。
「もう、堅苦しい挨拶はおやめなさいな」
とカメリア王妃が言えば、ミルリーリウムもふふっと悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
「ああ、椅子に座る前に、ローゼ、こちらにいらっしゃい」
「?はい、王妃殿下」
テーブルに置いていた手を引っ込めて、マリアローゼはとてとてと王妃の側に歩き寄った。
王妃の手が伸びてきて、頬を撫でて、髪を撫でて、ふわりと抱きしめられる。
「ふふ、相変わらず可愛らしいこと。貴女が戻ってきてわたくしはとても嬉しくてよ」
「わたくしもです、カメリア叔母様」
きゅっと細い腰に手を回して抱きつくと、カメリアも少し力を込めてぎゅっと抱き返した。
そして、ゆっくりとマリアローゼを離して、最後にまた頬を一撫でする。
「さあ、おかけなさい。今日は珍しいお菓子を用意させましたから、沢山頂いて」
「まあ!」
「お父様がそんなに喜んでくださると思わなくて…ローゼは嬉しゅうございます」
「そうか…私も嬉しいよ。仕事が捗れば、君やリリィと過ごせる時間も増えるだろう」
便利だし、と考えただけ道具の効能を、マリアローゼはあまり考えていなかったので、
ジェラルドの言葉に嬉しくなり、何度も頷いた。
あどけない笑顔を浮かべるマリアローゼに、ジェラルドもミルリーリウムも目を細めて喜んでいる。
父の助けになればいい、人々の暮らしに役立てばいい、と思っていたけれど、
思った以上に父の助けになりそうで、マリアローゼは満足げに魔道具を見詰めた。
「城や役所に卸す分は既に用意できていますし、店での販売もすぐに可能です。
宰相閣下の許可が降りたとあらば、本日中にも滞りなく納める事が出来ましょう」
マローヴァが言えば、ジェラルドはうむ、と快く頷いた。
すぐにも書類を作成するのかと思ったが、娘を膝から降ろす気はないらしい。
「分かった。それと貴族への販売は私の懇意にしているリーフェンデール商会をと言っていたが、
お前達の所へ直接買い付けに来た客についてはそちらで販売して良い。
公的機関への販売もブルーローズ商会に任せよう。
飽くまでリーフェンデールは元々の顧客や貴族への売り込み時にのみと伝えてある」
ジェラルドは娘の頭を優しく撫でながら、マローヴァに伝え、マローヴァは恭しく頭を下げた。
「素晴らしい采配に感謝致します」
少し仰々しい気もするが、商人ならばこの程度の挨拶は普通なのかもしれない。
言われたジェラルドも特に気にする風もなく、マリアローゼを優しく愛でている。
「他に用件は?」
「いえ、今日はご挨拶だけと思っておりましたし、十二分な成果を頂きましたので、書類を頂き次第失礼して、関係各所へ挨拶に参りたいと思います」
「お父様、どうぞ書類をご用意なさって。ローゼはお膝から降りますわ」
時は金なり。
商人の時間を奪うわけにはいかないのだ。
マリアローゼは、ストンと床へと降り立った。
だが、すかさず手が伸びてきて、再びシルヴァインの膝に乗せられる。
反論したいところだが、奥に居るジェレイドの用意された手を見て、マリアローゼは潔く諦めた。
目の前に座っているユリアの目は死んでいる。
庭園の一角に設えられたお茶の席に、ミルリーリウムとマリアローゼは歩いて向かった。
少し離れた場所に、紅茶や焼き菓子を置くテーブルと天幕があり、ユリアとカンナとルーナはそこで足を止める。
お茶が用意されたテーブルには、先ほどまで王と並んで座っていた王妃が、優雅に微笑んでいた。
「王妃殿下、ミルリーリウム・フィロソフィ、及び娘のマリアローゼが参りました」
ミルリーリウムの挨拶に合わせて、マリアローゼも身を屈める。
「もう、堅苦しい挨拶はおやめなさいな」
とカメリア王妃が言えば、ミルリーリウムもふふっと悪戯っぽい笑顔を浮かべる。
「ああ、椅子に座る前に、ローゼ、こちらにいらっしゃい」
「?はい、王妃殿下」
テーブルに置いていた手を引っ込めて、マリアローゼはとてとてと王妃の側に歩き寄った。
王妃の手が伸びてきて、頬を撫でて、髪を撫でて、ふわりと抱きしめられる。
「ふふ、相変わらず可愛らしいこと。貴女が戻ってきてわたくしはとても嬉しくてよ」
「わたくしもです、カメリア叔母様」
きゅっと細い腰に手を回して抱きつくと、カメリアも少し力を込めてぎゅっと抱き返した。
そして、ゆっくりとマリアローゼを離して、最後にまた頬を一撫でする。
「さあ、おかけなさい。今日は珍しいお菓子を用意させましたから、沢山頂いて」
「まあ!」
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