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子供達の会議
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「じゃあ、続きを話しますよ。商会の人選はマローヴァに一任しましたが、会計監査については父上の指名の人物が居たので、そちらに任せることになっています。
出資者については…色々予想外だったのですが……
まず、フィロソフィ家とフォルティス家は分かりますが、王妃様も個人的に出資されるとのこと」
「ええっ、それは…大丈夫ですの?」
「前例はありませんが、法的には問題ないそうです。公費ではなく個人資産からの出資なので…」
思い切ったことをなさるお人である。
マリアローゼは前のめりになった姿勢を元に戻した。
「それから、こちらも前例はないのですが、冒険者ギルドですね。
お陰で販路が増えたとマローヴァが小躍りしてましたよ。他にも色々と交渉中のようです」
「む、無理難題を押し付けないように、きちんと節度を守っていただかないと……」
マリアローゼが困った顔で言うのに、キースはふっと笑顔で返した。
「先方も海千山千の猛者ですから、そうそう良い様には出来ませんよ。大丈夫です」
「そ、そう、でしたらいいのですけれど」
確かに、頼りがいになりそうな人々ばかりだったなあ、とマリアローゼは旅路で会った冒険者ギルドの長達を頭にぽやぽやと思い浮かべた。
それに、不利益を被るような事があれば、きちんと筋を通すように申し入れるような人達だ。
マリアローゼは納得したようにふんふん、と頷いた。
「錬金術師ギルド、ここは技術提携も含めて連携していきます。既に何人かはこちらで売り出すポーションとハイポーションの製作に入ってます。治癒師についても、マローヴァのかけた募集で、かなりの人数が集まっていますね」
「それは元々治癒師をしていた人達ですの?」
「色々と理由があって治癒師になれなかった者もいますし、悪い条件で囲われていた人々もいるようですね。問題がある場合は、こちらの弁護士を差し向ける予定なので法的には問題ありません」
用意周到である。
まだキースは出資者のリストを見ていた。
「あとはモルガナ公爵家も、ですね」
「まあ。お父様と一緒に駆けつけて下さったマリウス様の…」
「父上とも懇意にしてますし、ローゼの事も気に入ったようですね。資金はかなり潤沢ですので、
既に問題のない治癒師による薬の生産は始めてます。大規模な工場は領地に建設を始めました。
あとは…そうですね。生産量によっては今後薬草不足になりそうです」
魔石は常に少量でも供給は途絶えないが、薬草は天候にも左右されるし、栽培できる環境も多くは無い。
自生している物で賄えれば良いけれど、それも難しいとしたら。
「領地に大きな温室と薬草園を作りましょう」
マリアローゼは小さな手を胸の前でぱちん、と叩いて笑顔で提案した。
書類に目を落としていたキースが頷く。
「そうですね」
「気候的に領地とは違う場所にも、そういう場所が欲しいですわね。どうせですからフォルティス公爵家の領でも作って頂きましょう」
まさかもう一つの公爵家の領地を使うと言い出すとは思わなかったキースが顔を上げた。
「そう…ですね。それは良い考えです」
「叔父様もお爺様も反対など致しませんわ。それと、高い場所で育てる植物でしたら、
マスロなども良いかもしれません。商業ギルドの支部長さまと面識がございますので、お手紙を出しますわ」
キースはそれを聞いて、シルヴァインを見るが、シルヴァインは首を横に振った。
「その話、俺は聞いてないけど…?」
背凭れに寄りかかって話を聞いていたシルヴァインが、ゆらりと起き上がる。
圧を感じて、若干マリアローゼは引いたが、思い出してみればあの時確かにシルヴァインは傍にいなかった。
出資者については…色々予想外だったのですが……
まず、フィロソフィ家とフォルティス家は分かりますが、王妃様も個人的に出資されるとのこと」
「ええっ、それは…大丈夫ですの?」
「前例はありませんが、法的には問題ないそうです。公費ではなく個人資産からの出資なので…」
思い切ったことをなさるお人である。
マリアローゼは前のめりになった姿勢を元に戻した。
「それから、こちらも前例はないのですが、冒険者ギルドですね。
お陰で販路が増えたとマローヴァが小躍りしてましたよ。他にも色々と交渉中のようです」
「む、無理難題を押し付けないように、きちんと節度を守っていただかないと……」
マリアローゼが困った顔で言うのに、キースはふっと笑顔で返した。
「先方も海千山千の猛者ですから、そうそう良い様には出来ませんよ。大丈夫です」
「そ、そう、でしたらいいのですけれど」
確かに、頼りがいになりそうな人々ばかりだったなあ、とマリアローゼは旅路で会った冒険者ギルドの長達を頭にぽやぽやと思い浮かべた。
それに、不利益を被るような事があれば、きちんと筋を通すように申し入れるような人達だ。
マリアローゼは納得したようにふんふん、と頷いた。
「錬金術師ギルド、ここは技術提携も含めて連携していきます。既に何人かはこちらで売り出すポーションとハイポーションの製作に入ってます。治癒師についても、マローヴァのかけた募集で、かなりの人数が集まっていますね」
「それは元々治癒師をしていた人達ですの?」
「色々と理由があって治癒師になれなかった者もいますし、悪い条件で囲われていた人々もいるようですね。問題がある場合は、こちらの弁護士を差し向ける予定なので法的には問題ありません」
用意周到である。
まだキースは出資者のリストを見ていた。
「あとはモルガナ公爵家も、ですね」
「まあ。お父様と一緒に駆けつけて下さったマリウス様の…」
「父上とも懇意にしてますし、ローゼの事も気に入ったようですね。資金はかなり潤沢ですので、
既に問題のない治癒師による薬の生産は始めてます。大規模な工場は領地に建設を始めました。
あとは…そうですね。生産量によっては今後薬草不足になりそうです」
魔石は常に少量でも供給は途絶えないが、薬草は天候にも左右されるし、栽培できる環境も多くは無い。
自生している物で賄えれば良いけれど、それも難しいとしたら。
「領地に大きな温室と薬草園を作りましょう」
マリアローゼは小さな手を胸の前でぱちん、と叩いて笑顔で提案した。
書類に目を落としていたキースが頷く。
「そうですね」
「気候的に領地とは違う場所にも、そういう場所が欲しいですわね。どうせですからフォルティス公爵家の領でも作って頂きましょう」
まさかもう一つの公爵家の領地を使うと言い出すとは思わなかったキースが顔を上げた。
「そう…ですね。それは良い考えです」
「叔父様もお爺様も反対など致しませんわ。それと、高い場所で育てる植物でしたら、
マスロなども良いかもしれません。商業ギルドの支部長さまと面識がございますので、お手紙を出しますわ」
キースはそれを聞いて、シルヴァインを見るが、シルヴァインは首を横に振った。
「その話、俺は聞いてないけど…?」
背凭れに寄りかかって話を聞いていたシルヴァインが、ゆらりと起き上がる。
圧を感じて、若干マリアローゼは引いたが、思い出してみればあの時確かにシルヴァインは傍にいなかった。
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