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青い薔薇
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マリアローゼがルーナを伴なって、キースの部屋に行くと、扉の前にキースの侍従のロストルムが立っている。
二人が近づくのを見て、扉を開けて中に言葉をかけた。
扉を押さえるロストルムの前を通り抜けて部屋へと入ると、シルヴァインとキースが向かい合わせに長椅子に腰掛けていた。
「お待たせを致しました」
マリアローゼがお辞儀をして顔を上げると、二人そろって怪訝な顔をする。
「何かあったのですか?」
「泣いたのかい?」
異口同音に鋭い二人に言われて、マリアローゼは目を逸らした。
「感極まって少々涙が出ただけで、何もございませんわ、ええ、何も」
慌てて視線を戻して言い繕うと、シルヴァインは肩を竦めた。
ルーナが傍にいて口出ししないのを見て、問題ないと判断したのだろう。
「じゃあ、話し合いをしようか、というよりもうほぼ決まっているんだが」
「そうですね。マリアローゼには問題ないか聞いてもらいたいのですよ」
マリアローゼは二人の間に据えられている一人用の椅子に、ぽふん、と座った。
目の前の机には書類らしきものが山積みになっている。
これに全て目を通すとしたら、数日はかかりそう……。
なのである。
でも、キースは聞いて欲しいと言っていたので、大人しくキースを見詰めた。
「まず、商会については既にギルドにも登録して、承認されています。僕達の希望と、マローヴァの意見を合わせて
名前はブルーローズ商会に決まりました」
青い薔薇。
という事は、兄達はマリアローゼの名前の一部を推したのかもしれない。
それは恥ずかしいが、商会の名前としてはインパクトもあって、美しい。
「まあ、素敵ですわ!この世に無い物を売るお店という意味かしら」
にこにことマリアローゼが言うと、シルヴァインとキースが短い言葉を交わした。
「ほらな」
「ですね」
え?なになに?なんですの?
二人は何となく、呆れたような、諦観に満ちたような顔をしている。
「な、何ですの?何かわたくし、変なことを申し上げまして?」
二人はちらと視線を交わして、キースが口を開いた。
「この名を決めたマローヴァが、最初にこの名付けの理由を尋ねた時にこう言ったんだ。
「きっとお嬢様なら正解を知っているはずです」と」
「それは買いかぶりですわ。お兄様達だってお分かりになるでしょう」
シルヴァインはふう、と溜息を吐く。
「確かに予想はつくけれど、5歳の時だったら分からなかったかもしれないな」
「僕もその自信はありません」
二人は特に悲しそうではないが、マローヴァが見越していたのが嫌なのだろうか?
マリアローゼはむう、と口を尖らせた。
「いいえ、お兄様達はローゼより優秀なのですもの。きっと分かったに違いありませんわ。
それに、何れは青い薔薇でも、何でも作りだせるようになります。わたくし達は1人ではないのですもの!」
ふんすふんすと勢い込んで言うと、二人はやっと破顔した。
二人が近づくのを見て、扉を開けて中に言葉をかけた。
扉を押さえるロストルムの前を通り抜けて部屋へと入ると、シルヴァインとキースが向かい合わせに長椅子に腰掛けていた。
「お待たせを致しました」
マリアローゼがお辞儀をして顔を上げると、二人そろって怪訝な顔をする。
「何かあったのですか?」
「泣いたのかい?」
異口同音に鋭い二人に言われて、マリアローゼは目を逸らした。
「感極まって少々涙が出ただけで、何もございませんわ、ええ、何も」
慌てて視線を戻して言い繕うと、シルヴァインは肩を竦めた。
ルーナが傍にいて口出ししないのを見て、問題ないと判断したのだろう。
「じゃあ、話し合いをしようか、というよりもうほぼ決まっているんだが」
「そうですね。マリアローゼには問題ないか聞いてもらいたいのですよ」
マリアローゼは二人の間に据えられている一人用の椅子に、ぽふん、と座った。
目の前の机には書類らしきものが山積みになっている。
これに全て目を通すとしたら、数日はかかりそう……。
なのである。
でも、キースは聞いて欲しいと言っていたので、大人しくキースを見詰めた。
「まず、商会については既にギルドにも登録して、承認されています。僕達の希望と、マローヴァの意見を合わせて
名前はブルーローズ商会に決まりました」
青い薔薇。
という事は、兄達はマリアローゼの名前の一部を推したのかもしれない。
それは恥ずかしいが、商会の名前としてはインパクトもあって、美しい。
「まあ、素敵ですわ!この世に無い物を売るお店という意味かしら」
にこにことマリアローゼが言うと、シルヴァインとキースが短い言葉を交わした。
「ほらな」
「ですね」
え?なになに?なんですの?
二人は何となく、呆れたような、諦観に満ちたような顔をしている。
「な、何ですの?何かわたくし、変なことを申し上げまして?」
二人はちらと視線を交わして、キースが口を開いた。
「この名を決めたマローヴァが、最初にこの名付けの理由を尋ねた時にこう言ったんだ。
「きっとお嬢様なら正解を知っているはずです」と」
「それは買いかぶりですわ。お兄様達だってお分かりになるでしょう」
シルヴァインはふう、と溜息を吐く。
「確かに予想はつくけれど、5歳の時だったら分からなかったかもしれないな」
「僕もその自信はありません」
二人は特に悲しそうではないが、マローヴァが見越していたのが嫌なのだろうか?
マリアローゼはむう、と口を尖らせた。
「いいえ、お兄様達はローゼより優秀なのですもの。きっと分かったに違いありませんわ。
それに、何れは青い薔薇でも、何でも作りだせるようになります。わたくし達は1人ではないのですもの!」
ふんすふんすと勢い込んで言うと、二人はやっと破顔した。
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