悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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ノアークとマリアローゼの約束

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仕度を終えてノクスを先に行かせると、ノアークの部屋の扉は開け放たれて、侍従のゾアが扉の外に立っている。
マリアローゼはノアークの部屋に招き入れられた。

「……久しぶり、マリアローゼ」

ノアークは一瞬マリアローゼを見たものの、すぐに視線を逸らしてしまった。
マリアローゼはノアークの坐している長椅子に近づき、ぎゅっとノアークを抱きしめた。

「お会いしたかったです、ノアークお兄様」

「ロ、ローゼ……」

焦ったような声をあげるが、ノアークは固まったまま動けずにいる。
マリアローゼは抱きしめた腕を外して、正面からじっと見あげる。

「影ながらローゼをお守りくださったこと、お聞き致しました。そのせいでお怪我をされたことも。
だから、誰より先に、お兄様に会って、お礼を言いたかったのです」

「俺は……役立たずの、無能だ。分かっている」

目を伏せて言う。
マリアローゼはふんす!と勢い込んだ。
身長差があると、腰周りにしか抱きつけないので、マリアローゼはノアークの膝の上によじ登った。

「……な、な……ローゼ……」

面食らったように、わたわたと手を動かすノアークを無視して、マリアローゼは顔を背けさせないように
小さな両手で挟み込む。

「いいですか、お兄様。お兄様は、誰の言葉を信じますの?わたくし?それとも他の方々?」

「それは……ローゼだ」

思わず、というようにノアークの口から零れた言葉に、マリアローゼは微笑んだ。

「では、もう諦めてくださいませ。わたくしが、お兄様を無能と謗る事は許しません。
例えお兄様自身であったとしてもです。わたくしの、大切で、愛するお兄様は、勇敢ですわ。
色々な方々に守っていただいたからこそ、わたくしはここにこうやって居ることが出来るのです。
お兄様も助けてくださった中のお一人ではないですか。誰が欠けてもわたくしはここにいなかったかもしれません。
ですから、ご自分を卑下なさらないで」

「……わ、わか…わかったから」

顔が気の毒な位に赤く染まっているが、マリアローゼはもう一押し、踏み込んだ。

「約束なさって」

「約束……する」

「では解放してさしあげますわ。本当に、ご無事で良かった」

小さな手を外すと、マリアローゼは今度こそぎゅうっとノアークの首に腕を回して抱きしめて、
それからゆっくり離れた。

「お兄様、ローゼをこれからも守ってくださる?」

「勿論だ、ローゼ」

まだ顔は赤みを残しているものの、真摯な瞳で告げられて、マリアローゼはにっこり微笑んだ。

「でしたら、絶対に死なないでくださいませね。頼りにしておりますから」

「う……ぐ…、分かった…善処する……」

マリアローゼを守れるのなら、命さえ投げ出せると思って行動していた。
が、言質を逆手にとられて、その考えを封じられてしまった。

もっと、強くならなくてはいけない。

しん、と考え込んだノアークの膝からすとん、と降りたマリアローゼはスカートを摘んでお辞儀をする。
ノアークは眩しいものを見るかのように、マリアローゼを見詰めた。

「それから、わたくしお兄様の魔法について少し思うことがございますの。
 そのうち実験に付き合って頂くかも知れませんわ。お願いしてもよろしくて?」

「……ああ勿論だ。出来る事があるなら」

魔法が使えないのだから、協力しようがないと思ってはいるものの、
否定をすれば約束を反故にしてしまうので、ノアークはマリアローゼのお願いに頷いた。

「多分ですけれど、お兄様にしか出来ないことですの。でもまずはわたくしが魔法をきちんと覚えねばなりません。
まだ先のお話です。ではまた、朝食で」

入口付近に控えていたルーナと、マリアローゼが立ち去って、
ノアークは改めてマリアローゼの行動を思い出して武骨な両手で顔を覆う。
その耳は真っ赤に染まっていた。
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