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ずっと居て欲しい人
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良い子アピールをしたかったのでは断じて、ない。
神聖国へ向かう途中立ち寄った時に、、この町の孤児の少年が「教会でもらえるご飯は少ない」と言っていたのだ。
だが、司祭達も修道女達も特に痩せ細っている訳ではない。
反って、司祭長はたっぷりと贅肉を蓄えている。
孤児院の調査は、近いうちに必ず行う予定ではいる。
外堀を埋めるためにも、多少は色々盛られるような要素…天使とか聖女とか女神とか…を恐れてはいけない。
子供達を助ける為には必要な事ですわ…!
マリアローゼはくるりと振り返り、司祭と修道女の顔をそれぞれ見て微笑み、言葉を続けた。
「どうか、子供の健康の為にも、頂いた食糧は子供達に食べさせてくださいませね」
「それはもう、仰るとおりに致します」
鷹揚に返事をする司祭長と、ちらりとそれを気にする素振りを垣間見せた修道女達に、ルーナがてきぱきと贈り物を受け取っては半分持たせていく。
「そういえば、この教会の孤児院では、毎日食事を与えておりますの?」
「ええ、もちろんです」
司祭長はすぐさま頷いた。
お前話ちゃんと聞いていたのか?と問いかけたくなるくらいに食い気味に答えてきた。
「食べ盛りの子供達には少ない食事なのかしら?少し痩せてみえますけれど…」
「動き回るからでしょうなぁ。元気のある子供達でして」
子供達は孤児院へと続く扉の辺りで、そっとこちらの様子を窺っている。
着ている物も粗末で、清潔とは言い難い。
司祭長が追い払うように手を振ると、困った様に数人の修道女が扉の方へ歩き去る。
「そうですのね。では後日また様子を見に寄らせて頂きますね」
「ええ、是非とも」
カレンドゥラを見ると、察したのか司祭からじっと注いでいた視線を外して、ゆっくりと頷いて、にっこりと微笑む。
相変わらず、妖艶な微笑で、幼女のマリアローゼですらどきりとさせられた。
「では、失礼致しますわね」
にっこりと微笑み、見守っていた人々に再度お辞儀をしてから、教会を後にする。
だが、教会を一歩出た途端、さっと太い腕に抱き上げられた。
「もう暗くなっておりますので」
とウルススが簡潔に言う。
マリアローゼは疲れたのもあって、こくん、と素直に頷いた。
宿までは近いが、人通りもまだあるので従っておく。
「それなら俺がだっこするのに」
「いやいや、僕が」
「ウルススがいいですわ」
外野がうるさいので、マリアローゼはぴしゃりと言い放った。
実際にウルススは、何だかとても安定していて、安心感抜群なのだ。
「そういえば、ウルススはお子さんがいらっしゃるの?」
一瞬だけ、ぴくりと身体が反応した気がした。
それは無意識に身構えたような、反応の仕方だった。
「妻も子も流行り病で亡くしまして」
「そうでしたの。辛いですね、ウルスス」
家族を亡くす辛さは如何ほどのものだろうか。
マリアローゼにとっては大事な家族が沢山いる。
でもその誰が欠けても、死ぬほど悲しいに違いないのは分かる。
それなのに、全てを失ってしまったら生きて行けるのかさえ、分からない。
「代わりにはなりませんけれど、ウルススにはわたくしがいますからね」
「……はい、お嬢様」
「守ってくれて、貴方がいてくれて、わたくしは嬉しい」
「勿体無いお言葉です」
家族ではなくても、ウルススがもし死んだら泣いてしまう。
そんな思いを持つ者がいると伝えたくて、マリアローゼはウルススの胸に額をくっつけた。
神聖国へ向かう途中立ち寄った時に、、この町の孤児の少年が「教会でもらえるご飯は少ない」と言っていたのだ。
だが、司祭達も修道女達も特に痩せ細っている訳ではない。
反って、司祭長はたっぷりと贅肉を蓄えている。
孤児院の調査は、近いうちに必ず行う予定ではいる。
外堀を埋めるためにも、多少は色々盛られるような要素…天使とか聖女とか女神とか…を恐れてはいけない。
子供達を助ける為には必要な事ですわ…!
マリアローゼはくるりと振り返り、司祭と修道女の顔をそれぞれ見て微笑み、言葉を続けた。
「どうか、子供の健康の為にも、頂いた食糧は子供達に食べさせてくださいませね」
「それはもう、仰るとおりに致します」
鷹揚に返事をする司祭長と、ちらりとそれを気にする素振りを垣間見せた修道女達に、ルーナがてきぱきと贈り物を受け取っては半分持たせていく。
「そういえば、この教会の孤児院では、毎日食事を与えておりますの?」
「ええ、もちろんです」
司祭長はすぐさま頷いた。
お前話ちゃんと聞いていたのか?と問いかけたくなるくらいに食い気味に答えてきた。
「食べ盛りの子供達には少ない食事なのかしら?少し痩せてみえますけれど…」
「動き回るからでしょうなぁ。元気のある子供達でして」
子供達は孤児院へと続く扉の辺りで、そっとこちらの様子を窺っている。
着ている物も粗末で、清潔とは言い難い。
司祭長が追い払うように手を振ると、困った様に数人の修道女が扉の方へ歩き去る。
「そうですのね。では後日また様子を見に寄らせて頂きますね」
「ええ、是非とも」
カレンドゥラを見ると、察したのか司祭からじっと注いでいた視線を外して、ゆっくりと頷いて、にっこりと微笑む。
相変わらず、妖艶な微笑で、幼女のマリアローゼですらどきりとさせられた。
「では、失礼致しますわね」
にっこりと微笑み、見守っていた人々に再度お辞儀をしてから、教会を後にする。
だが、教会を一歩出た途端、さっと太い腕に抱き上げられた。
「もう暗くなっておりますので」
とウルススが簡潔に言う。
マリアローゼは疲れたのもあって、こくん、と素直に頷いた。
宿までは近いが、人通りもまだあるので従っておく。
「それなら俺がだっこするのに」
「いやいや、僕が」
「ウルススがいいですわ」
外野がうるさいので、マリアローゼはぴしゃりと言い放った。
実際にウルススは、何だかとても安定していて、安心感抜群なのだ。
「そういえば、ウルススはお子さんがいらっしゃるの?」
一瞬だけ、ぴくりと身体が反応した気がした。
それは無意識に身構えたような、反応の仕方だった。
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でもその誰が欠けても、死ぬほど悲しいに違いないのは分かる。
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「……はい、お嬢様」
「守ってくれて、貴方がいてくれて、わたくしは嬉しい」
「勿体無いお言葉です」
家族ではなくても、ウルススがもし死んだら泣いてしまう。
そんな思いを持つ者がいると伝えたくて、マリアローゼはウルススの胸に額をくっつけた。
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