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不審者対決
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地雷VS地雷
「こちらは不審者ではなく、わたくしの叔父上様のジェレイド様です」
「ああ、僕の事だったのか。失礼、挨拶が遅れまして。神殿騎士殿かな?
ジェレイド・フィロソフィと申します。領地管理人にして代理人。公爵の弟です」
立ち上がると、綺麗な所作で胸に手を当てて、敬礼をする。
ユリアはぽけっとそれを見上げて、返事を返した。
「マリアローゼ様の護衛をしております神殿騎士のユリアです」
「失礼、神殿騎士は神殿騎士でも君は異端審問官か。珍しいね」
制服の意匠は多少王国と違うが、何故神殿騎士じゃなく異端審問官だと分かったのか。
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
相変わらずユリアはぼーっとジェレイドを見詰めている。
まさか、恋に落ちた……?
とドキドキとしながらマリアローゼはユリアを見ていたが、あろうことかユリアが舌打ちをした。
「長官直々のご命令ですので。長官のご友人のジェレイドさん」
「おや。もしかして君が優秀な部下さんなのかな?」
「どうでしょうー?それは別の人かもしれませんけど、マリアローゼ様にみだりに触れてはいけません!」
庇ってくれるのは有り難い。
手も口も出し損ねていたシルヴァインも頷いている。
けれど、ユリアもユリアで何故叔父が長谷部の友人だと分かったのだろう。
マリアローゼは改めてまじまじと二人を見比べた。
「僕は叔父なのでいいんですよ」
「駄目ですよ。マリアローゼ様が穢れます」
一応再会を慮って水を差さずにいたのだろうのが、相当シルヴァインも苛ついていたに違いない。
止めるかと思っていた母も、穢れますのところで、ふふっと笑っていた。
ルーナがつと、寄ってきて、マリアローゼの耳元で囁く。
「お着替えに参りましょう」
マリアローゼはこくんと頷いて、立ち上がって母に向けてお辞儀をした。
「夕食の前にお着替えをして参ります」
「ではわたくしもそうしようかしら?お相手はシルヴァイン、お願いしましたよ」
母も居間との続き部屋の別室に、エイラを伴なって歩いて行く。
マリアローゼの部屋には、カンナとユリアも着いてきた。
「公爵様の弟君によくあんな口きけますねえ」
「敬語でしたし、当然の真実しか言ってませんので。
大体何ですか!私だってマリアローゼ様の手を握った事がないのに!」
カンナの暢気な呆れ声に、ぷりぷりと怒ったユリアの怒りが重なる。
結局そこか…という着地点ではあるのだが、
あら?ユリアさんと手を繋いだ事なかったかしら?
ぼんやりとマリアローゼは思い返していた。
近くにいたり、密着した事はあっても、触りたいといいつつ、ルーナやシルヴァインやカンナに阻まれていた。
そして、大層な事は言っているけれど、きちんと節度を守っていたのだと思い至る。
一度騙し討ちのような事はあったが、それはマリアローゼのミスだし髪を撫でられただけだ。
「ユリアさん」
「はい、何でしょう?マリアローゼさま」
ぴょこん、と名前を呼ばれた犬のように、振り返ったユリアの手を、マリアローゼは握った。
「……えっ?……はっ…あれ……やわ、やわらかい……」
「気づきませんでしたの。叔父様と喧嘩しないでくださいませね」
小さく柔らかい両手で挟み込まれて、ユリアは腰から崩れ落ちた。
「は…はい……ここが、天国なんですね……」
「そうですね。天国終了致します」
そっとルーナがマリアローゼの手を掬って、連れ去り、
後に残されたユリアはそのままへにゃへにゃと、床に這い蹲る。
カンナはのんびりと、ルーナによって飾られていくマリアローゼの姿を見守っていた。
「こちらは不審者ではなく、わたくしの叔父上様のジェレイド様です」
「ああ、僕の事だったのか。失礼、挨拶が遅れまして。神殿騎士殿かな?
ジェレイド・フィロソフィと申します。領地管理人にして代理人。公爵の弟です」
立ち上がると、綺麗な所作で胸に手を当てて、敬礼をする。
ユリアはぽけっとそれを見上げて、返事を返した。
「マリアローゼ様の護衛をしております神殿騎士のユリアです」
「失礼、神殿騎士は神殿騎士でも君は異端審問官か。珍しいね」
制服の意匠は多少王国と違うが、何故神殿騎士じゃなく異端審問官だと分かったのか。
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
相変わらずユリアはぼーっとジェレイドを見詰めている。
まさか、恋に落ちた……?
とドキドキとしながらマリアローゼはユリアを見ていたが、あろうことかユリアが舌打ちをした。
「長官直々のご命令ですので。長官のご友人のジェレイドさん」
「おや。もしかして君が優秀な部下さんなのかな?」
「どうでしょうー?それは別の人かもしれませんけど、マリアローゼ様にみだりに触れてはいけません!」
庇ってくれるのは有り難い。
手も口も出し損ねていたシルヴァインも頷いている。
けれど、ユリアもユリアで何故叔父が長谷部の友人だと分かったのだろう。
マリアローゼは改めてまじまじと二人を見比べた。
「僕は叔父なのでいいんですよ」
「駄目ですよ。マリアローゼ様が穢れます」
一応再会を慮って水を差さずにいたのだろうのが、相当シルヴァインも苛ついていたに違いない。
止めるかと思っていた母も、穢れますのところで、ふふっと笑っていた。
ルーナがつと、寄ってきて、マリアローゼの耳元で囁く。
「お着替えに参りましょう」
マリアローゼはこくんと頷いて、立ち上がって母に向けてお辞儀をした。
「夕食の前にお着替えをして参ります」
「ではわたくしもそうしようかしら?お相手はシルヴァイン、お願いしましたよ」
母も居間との続き部屋の別室に、エイラを伴なって歩いて行く。
マリアローゼの部屋には、カンナとユリアも着いてきた。
「公爵様の弟君によくあんな口きけますねえ」
「敬語でしたし、当然の真実しか言ってませんので。
大体何ですか!私だってマリアローゼ様の手を握った事がないのに!」
カンナの暢気な呆れ声に、ぷりぷりと怒ったユリアの怒りが重なる。
結局そこか…という着地点ではあるのだが、
あら?ユリアさんと手を繋いだ事なかったかしら?
ぼんやりとマリアローゼは思い返していた。
近くにいたり、密着した事はあっても、触りたいといいつつ、ルーナやシルヴァインやカンナに阻まれていた。
そして、大層な事は言っているけれど、きちんと節度を守っていたのだと思い至る。
一度騙し討ちのような事はあったが、それはマリアローゼのミスだし髪を撫でられただけだ。
「ユリアさん」
「はい、何でしょう?マリアローゼさま」
ぴょこん、と名前を呼ばれた犬のように、振り返ったユリアの手を、マリアローゼは握った。
「……えっ?……はっ…あれ……やわ、やわらかい……」
「気づきませんでしたの。叔父様と喧嘩しないでくださいませね」
小さく柔らかい両手で挟み込まれて、ユリアは腰から崩れ落ちた。
「は…はい……ここが、天国なんですね……」
「そうですね。天国終了致します」
そっとルーナがマリアローゼの手を掬って、連れ去り、
後に残されたユリアはそのままへにゃへにゃと、床に這い蹲る。
カンナはのんびりと、ルーナによって飾られていくマリアローゼの姿を見守っていた。
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