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賞品に釣られたお嬢様

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「では、マリーちゃんはマリアローゼ様に、町の皆様と生産者のイサクさんからご進呈致しますね」
「皆様、ありがとう存じます」

可愛らしいお辞儀を壇上でするマリアローゼに、人々が声援と拍手を浴びせた。
そこで一旦、ユリアはしゃがんで何事かをマリアローゼと話し合い、また立ち上がる。

それを見て、カンナが一言シルヴァインに伝えた。

「何か嫌な予感、しませんか」
「大いに、する」

マリアローゼは頷いたり首を振ったりする最中、チラチラとシルヴァインを気にする仕草を見せていた。
馬鹿に見せて知能犯、そういうところが叔父上に似て嫌なんだ、とシルヴァインは眉を顰める。

「さて、続きまして、5位」

あれ?減ったんじゃないの?というざわめきをよそに、ユリアは続けた。

「湖畔の情緒溢れる癒しの高級宿、トリエンテの調理人エスタ様より。2名様分のご夕食!」

わー!という歓声と共に、壇上に上がったシェフが、一礼して下がる。
マリアローゼは、マリーちゃんの手綱を握ったまま、エスタを見上げた。

「前回もでしたけれど、お食事とても美味しいですわ」
「公爵家の…しかもマリアローゼ様の御口に合うとは、とても光栄でございます」

などと壇上から降りた二人はにこにこと話している。
ユリアは会話を聞きつつも、話を続けた。

「4位入賞者にはこちら、大商人クルード様より、レスティアの高級宿宿泊と往復馬車券二名分!」

紹介された大商人?のクルードが、壇上で鷹揚に手を振って、シルヴァインにも会釈をし、また壇上から降りてくる。

「これはこれは、フィロソフィ様、いや、ここはマリアローゼ様とお呼びしても?」
「ええ、構いませんわ」
「御目にかかれて光栄で御座います」

ちょっとばかり腰周りはふとましいものの、十分に魅力的な中年男性のクルードがぺこりと会釈をする。
何事かをもっと話しかけてくるのかと思ったが、挨拶だけをして、ユリアの司会に耳を傾けているので、マリアローゼは安心して、隣で草を食べているマリーちゃんの背中をもふもふと撫でた。

「続いて3位入賞者には、こちら、憧れの王都の高級宿宿泊と、往復馬車券二名分!商業ギルドマスロ支部長、エリーゼ様より、ご進呈!」

質素な服に、ショールの女性が、壇上で参加者とシルヴァインへ其々会釈をして、壇上から降りてくる。

「初めまして、御目にかかります。ご紹介に預かりましたエリーゼと申します」
「初めまして、マリアローゼ・フィロソフィでございますわ」

同じく丁寧にお辞儀をしたマリアローゼを見て、エリーゼは目を細めた。
父母と同じくらいか、少し若い印象の女性に、マリアローゼはふわぁ、と驚嘆の息を漏らした。

「女性ですのに、支部長をなさっていらっしゃるとは、大変優秀な御方ですのね」
「お褒めに預かり恐縮でございますが、父の伝手やそちらにいらっしゃるクルード様の後ろ盾もございまして、何とか務めております」

先程話したクルードは、会話には混ざってこないが、にこりと微笑み会釈をした。

「いつか、ゆっくりお話をお聞きしたいですわ」
「いつでも、喜んでお伺い致します」

商業ギルドについてはまだ殆ど勉強していない。
だが、所作や言葉遣い、会話の運びをとっても、平民では無さそうだし、
平民だったとしても傍流の貴族の血筋かもしれない。
金の髪も緑の目も…名前は帝国の名前の響きのように感じる。
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