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釣りがしたいお嬢様
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申し訳ない気分と謎が少し晴れて、マリアローゼはユリアに苦笑を返した。
「おうちでは表情豊かですのよ。よく笑ってらっしゃいますし」
「マリアローゼ様相手だと、色んな表情が見れますねぇ。
あ、そうだ。王都方面に向かう冒険者の方々が、お嬢様の護衛を兼ねてマスロまで同行するみたいですよ」
ユリアに伝わっているという事は、既に父も許可した決定事項なのだろう。
ここで、フィロソフィ家の騎士団の迎えを待つ予定だったのだが、
早めに繰り上げてマスロで合流する事になったのかもしれない。
その方が、治療して残してきた冒険者の様子を見れるので、都合が良いので兄の調整があったのだろうか。
「あら、そうなんですの?ご迷惑じゃないかしら…」
「いえ、寧ろお金を取りたい位ですよ」
ふんす!ととんでもない事を言い出すユリアに、マリアローゼは眉を下げた。
「えぇ……護衛して頂く方がお支払いするものですわ……」
「マリアローゼ様とご一緒に旅が出来るなら、お金を払うのが当然、まであります」
「ありません……」
やりとりを聞きつけたカンナが、マリアローゼの困った顔を見て、慌てて割って入った。
「困らせると、シルヴァイン様に言いますよ。王都で旅が終わる事になっても…」
「ひぇっ」
最後まで言い切る前に、ユリアはガタタッと音を立てて、椅子から飛び上がった。
そしてそのまま壁際にダッシュする。
「ユリアは置物、ユリアは置物…」
「暫く放置で大丈夫です。お食事も隣の部屋にルーナさんが用意してますよ」
「ありがとう、カンナお姉様」
にっこりと満面の笑顔を向けて、マリアローゼはルーナの淹れた紅茶をこくりと飲み干すと、
今日着る洋服を選び出した。
ペールブルーと白のドレスと帽子を選び、用意を終えて戻って来たルーナに手伝って貰いながら着替え、
隣の部屋へと移動する。
「今日の予定は聞いたかな?」
朝から爽やかなイケメンスマイルのシルヴァインが、紙面から顔を上げて尋ねる。
マリアローゼは、スカートを摘んでお辞儀を返しながら答えた。
「ええ、お兄様」
「叔父上も明日の夕刻にはマスロに到着するそうだから、見舞いの後はまた湖でも行くかい?」
「そうですわね……折角ですから釣りをしてみたいですわ」
「釣り」
問いかけたのはシルヴァインなのだが、予想外の答えに思わず思考が停止してしまった。
いつもの事だが、マリアローゼは突飛な事を言い出すのである。
聖女の審議の為に向かっていた行きと違い、帰りなので開放感に溢れている5歳児なのだ。
「まぁ…狩りと言い出さないだけ良しとしよう…」
「嬉しいです。楽しみですわ、お兄様」
嬉しそうに笑顔を溢れさせるマリアローゼを見て、シルヴァインも微笑を浮かべた。
何だかんだ言っても、マリアローゼには甘いのである。
「おうちでは表情豊かですのよ。よく笑ってらっしゃいますし」
「マリアローゼ様相手だと、色んな表情が見れますねぇ。
あ、そうだ。王都方面に向かう冒険者の方々が、お嬢様の護衛を兼ねてマスロまで同行するみたいですよ」
ユリアに伝わっているという事は、既に父も許可した決定事項なのだろう。
ここで、フィロソフィ家の騎士団の迎えを待つ予定だったのだが、
早めに繰り上げてマスロで合流する事になったのかもしれない。
その方が、治療して残してきた冒険者の様子を見れるので、都合が良いので兄の調整があったのだろうか。
「あら、そうなんですの?ご迷惑じゃないかしら…」
「いえ、寧ろお金を取りたい位ですよ」
ふんす!ととんでもない事を言い出すユリアに、マリアローゼは眉を下げた。
「えぇ……護衛して頂く方がお支払いするものですわ……」
「マリアローゼ様とご一緒に旅が出来るなら、お金を払うのが当然、まであります」
「ありません……」
やりとりを聞きつけたカンナが、マリアローゼの困った顔を見て、慌てて割って入った。
「困らせると、シルヴァイン様に言いますよ。王都で旅が終わる事になっても…」
「ひぇっ」
最後まで言い切る前に、ユリアはガタタッと音を立てて、椅子から飛び上がった。
そしてそのまま壁際にダッシュする。
「ユリアは置物、ユリアは置物…」
「暫く放置で大丈夫です。お食事も隣の部屋にルーナさんが用意してますよ」
「ありがとう、カンナお姉様」
にっこりと満面の笑顔を向けて、マリアローゼはルーナの淹れた紅茶をこくりと飲み干すと、
今日着る洋服を選び出した。
ペールブルーと白のドレスと帽子を選び、用意を終えて戻って来たルーナに手伝って貰いながら着替え、
隣の部屋へと移動する。
「今日の予定は聞いたかな?」
朝から爽やかなイケメンスマイルのシルヴァインが、紙面から顔を上げて尋ねる。
マリアローゼは、スカートを摘んでお辞儀を返しながら答えた。
「ええ、お兄様」
「叔父上も明日の夕刻にはマスロに到着するそうだから、見舞いの後はまた湖でも行くかい?」
「そうですわね……折角ですから釣りをしてみたいですわ」
「釣り」
問いかけたのはシルヴァインなのだが、予想外の答えに思わず思考が停止してしまった。
いつもの事だが、マリアローゼは突飛な事を言い出すのである。
聖女の審議の為に向かっていた行きと違い、帰りなので開放感に溢れている5歳児なのだ。
「まぁ…狩りと言い出さないだけ良しとしよう…」
「嬉しいです。楽しみですわ、お兄様」
嬉しそうに笑顔を溢れさせるマリアローゼを見て、シルヴァインも微笑を浮かべた。
何だかんだ言っても、マリアローゼには甘いのである。
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