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冒険者ギルドに行きたい
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「何かお願いごとでもあるのかな?お姫様」
恭しくマリアローゼの足元に跪いて、小さな手の甲に口づけを落としてシルヴァインは微笑んだ。
マリアローゼはそんなシルヴァインの王子様ムーブをジト目で見る。
「何か悪いものでもお召し上がりになったのですか?」
「酷いなぁ。君の言うとおり、女性の扱い方を学んでいるんだよ」
首を傾げて爽やかに微笑む姿は確かに凄くかっこいい。
篭絡の仕方を学ばなくても十分笑顔でお釣がくるのでは?
とマリアローゼは遠い目をした。
以前兄に注進したのは、どちらかというと逃げる方なのだが…
「まあ、いいですわ。実践で頑張ってくださいませ。
公爵邸に持っていってほしい荷物をお父様に預けるついでに、外出の許可を頂きたいのです」
「んん?外出どころか部屋を出るのも禁じられているから、俺に頼んでるんじゃないのか?」
意地悪く笑うシルヴァインに、マリアローゼは大きく溜息を吐いた。
「そうですわ。この町にある冒険者ギルドは大きいと聞いております。
折角ですから薬の宣伝もかねて、怪我の治療に参りたいと思いますの。
更についでに市場調査もしたいのですわ、大体幾らなら手に取りやすいのか、
元冒険者のカンナさんなら、色々な冒険者の方とお話出来ますでしょうし」
後半はちらり、とカンナを見上げ、そんなマリアローゼにカンナはにこやかに頷いた。
「そうですねえ。大体の相場は予想がつきますけど、実際に話を聞いた方がより確実だと思います。
私はご協力しますよ」
「うーーーん。言ってみるだけは言ってみるけど、父上が許すかは分からない。
ギルドとの往復だけだったら問題ないとは思うが、まあ、鋭意努力するとしよう」
マリアローゼの荷物を受け取って、シルヴァインはスッと立ち上がる。
扉を出て行きかけて、足を止めてマリアローゼを振り返った。
「ああ、そうだ。行くとしても時間はそんなに取れないと思うよ。
今日は騎士達を労う日だからね」
「はい、お兄様」
素直に頷くマリアローゼに、もう一度微笑んでからシルヴァインは颯爽と扉から出て行った。
シルヴァインが立ち去って、すぐにマリアローゼはすっくと立ち上がった。
「さ、今の内にオリーヴェにお手紙を渡しに行きましょう」
「でも、ジェラルド様にお部屋を出るのを禁じられておいでです」
困った様にルーナが言うが、マリアローゼはフフン、と胸を反らした。
「抜かりはありませんわ!お兄様が戻るまで時間がありますもの。
ささっと行ってささっと戻ってくれば問題ありませんわ」
「では、急ぎましょう」
きちんと帯剣した姿のカンナが立ち上がると、ルーナも諦めたように、先導して扉を開いた。
外の扉でもノクスが何か言おうとしたが、ルーナが首を振ったのを見て、そのまま三人を見逃すと、
一路オリーヴェとユリアの部屋へ向かった。
こっそりと訪れた三人に躊躇した騎士達はマリアローゼに可愛くお願いされて、
部屋の中だしいいか、とあっけなく通してしまった。
無事部屋に入り込んだマリアローゼがオリーヴェに手提げ袋とロバの置物を手渡す。
「ご機嫌よう、オリーヴェ。貴女に良い物を持ってきました」
「おはようございます、マリアローゼ様。…これは?」
渡されたのは、貧相な顔をしたロバの置物だった。
その辺の露店で売っていそうな……公爵令嬢が手に入れそうな物でもないそれに、
オリーヴェは首を傾げた。
「可愛いでしょう。ロバの置物ですわ。わたくしのお気に入りですの」
「……そう言われてみれば、何処か愛嬌がありますね」
にっこりと微笑むオリーヴェに、満足げにマリアローゼは頷いた。
「お守りですのよ」
「ありがとうございます。大事にします」
オリーヴェは嬉しそうに両手で包んで、大事そうに胸の前に掲げた。
恭しくマリアローゼの足元に跪いて、小さな手の甲に口づけを落としてシルヴァインは微笑んだ。
マリアローゼはそんなシルヴァインの王子様ムーブをジト目で見る。
「何か悪いものでもお召し上がりになったのですか?」
「酷いなぁ。君の言うとおり、女性の扱い方を学んでいるんだよ」
首を傾げて爽やかに微笑む姿は確かに凄くかっこいい。
篭絡の仕方を学ばなくても十分笑顔でお釣がくるのでは?
とマリアローゼは遠い目をした。
以前兄に注進したのは、どちらかというと逃げる方なのだが…
「まあ、いいですわ。実践で頑張ってくださいませ。
公爵邸に持っていってほしい荷物をお父様に預けるついでに、外出の許可を頂きたいのです」
「んん?外出どころか部屋を出るのも禁じられているから、俺に頼んでるんじゃないのか?」
意地悪く笑うシルヴァインに、マリアローゼは大きく溜息を吐いた。
「そうですわ。この町にある冒険者ギルドは大きいと聞いております。
折角ですから薬の宣伝もかねて、怪我の治療に参りたいと思いますの。
更についでに市場調査もしたいのですわ、大体幾らなら手に取りやすいのか、
元冒険者のカンナさんなら、色々な冒険者の方とお話出来ますでしょうし」
後半はちらり、とカンナを見上げ、そんなマリアローゼにカンナはにこやかに頷いた。
「そうですねえ。大体の相場は予想がつきますけど、実際に話を聞いた方がより確実だと思います。
私はご協力しますよ」
「うーーーん。言ってみるだけは言ってみるけど、父上が許すかは分からない。
ギルドとの往復だけだったら問題ないとは思うが、まあ、鋭意努力するとしよう」
マリアローゼの荷物を受け取って、シルヴァインはスッと立ち上がる。
扉を出て行きかけて、足を止めてマリアローゼを振り返った。
「ああ、そうだ。行くとしても時間はそんなに取れないと思うよ。
今日は騎士達を労う日だからね」
「はい、お兄様」
素直に頷くマリアローゼに、もう一度微笑んでからシルヴァインは颯爽と扉から出て行った。
シルヴァインが立ち去って、すぐにマリアローゼはすっくと立ち上がった。
「さ、今の内にオリーヴェにお手紙を渡しに行きましょう」
「でも、ジェラルド様にお部屋を出るのを禁じられておいでです」
困った様にルーナが言うが、マリアローゼはフフン、と胸を反らした。
「抜かりはありませんわ!お兄様が戻るまで時間がありますもの。
ささっと行ってささっと戻ってくれば問題ありませんわ」
「では、急ぎましょう」
きちんと帯剣した姿のカンナが立ち上がると、ルーナも諦めたように、先導して扉を開いた。
外の扉でもノクスが何か言おうとしたが、ルーナが首を振ったのを見て、そのまま三人を見逃すと、
一路オリーヴェとユリアの部屋へ向かった。
こっそりと訪れた三人に躊躇した騎士達はマリアローゼに可愛くお願いされて、
部屋の中だしいいか、とあっけなく通してしまった。
無事部屋に入り込んだマリアローゼがオリーヴェに手提げ袋とロバの置物を手渡す。
「ご機嫌よう、オリーヴェ。貴女に良い物を持ってきました」
「おはようございます、マリアローゼ様。…これは?」
渡されたのは、貧相な顔をしたロバの置物だった。
その辺の露店で売っていそうな……公爵令嬢が手に入れそうな物でもないそれに、
オリーヴェは首を傾げた。
「可愛いでしょう。ロバの置物ですわ。わたくしのお気に入りですの」
「……そう言われてみれば、何処か愛嬌がありますね」
にっこりと微笑むオリーヴェに、満足げにマリアローゼは頷いた。
「お守りですのよ」
「ありがとうございます。大事にします」
オリーヴェは嬉しそうに両手で包んで、大事そうに胸の前に掲げた。
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