悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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会話が進まない生き物

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ぺこり、と頭を下げたユリアに、シルヴァインが不思議そうに声をかけた。

「そういえば連絡手段は?フクロウだっけ?」
「え?ああ、はい。審問官は一人一羽専用のがいまして。神聖国の大神殿の鳥舎と審問官の間で往復します。
 けど、今回旅に連れて来たフクロウは、マリアローゼ様とカンナさん、私の間で文通する用なんです」

にっこにことどうでも良い情報が付け足されたが、シルヴァインは少し考え込んだ。

「覚えるのにどれ位かかるんだい?」
「一応、場所だけなら一回で覚えますね。王都の公爵邸から放せば、多分往復4日くらいでいけそうな…?」

「二箇所は覚えられるのかな?」
「うーん、訓練次第でしょうかねえ」

ユリアも一応訓練については教わっているが、鳥舎の管理人程ではないし、
一応マニュアル…というか指南書を持ってきてはいた。
シルヴァインの難しい顔を見て、ユリアは首を傾げる。

「指南書の写しでも差し上げましょうか?」
「ん?ああ、それはそれで頂くとしよう。
 でも今聞いたのは、マリアローゼがすぐに領地に帰るかもしれないからなんだ」
「え?えええっ?!?!」

あからさまに驚いて、更に顔色も悪くなっていく。
ユリアはフラフラと壁に寄って、頭をゴツンとぶつけて寄りかかった。

「そんな…そんなぁぁ……」

先程までの賢そうな様子から一転、マリアローゼが絡むと如何してもアホになってしまうようだ。
シルヴァインは思わず笑った。

「だから、領地までの旅の用意をする間に公爵邸の位置を覚えさせて、
 その後領地まで着いて来るといいんじゃないかと思ってね」
「えっ?シルヴァイン様は神なんですか?」
「何て?」

んばっと振り返ったユリアの明後日な問いかけに、思わずシルヴァインも疑問で返してしまった。
ユリアはツヤツヤの笑顔を向けながら、更に妄言を吐く。

「そんな…え?いつも祈りを捧げる神がこんな所にいらっしゃるなんて?!」
「話が進まないんだが?」

早まったか?とシルヴァインが思い始めたその時、ユリアの顔がスンッと暗くなる。

「あ……でも鬼上司が許してくれるかどうか。
 下手したら追っ手を差し向けられて、最悪殺されてしまうのではないでしょうか……」
「ハセベー殿には、俺から手紙を預けるよ。
 こちらも彼への連絡手段は欲しかったところだし、どうかな?」
「問題ないです!!!ありがとうございます!!!」

全力でお礼を言い出したユリアに、シルヴァインは困った笑顔を見せた。

「旅程が1ヶ月前後延びるから、引き続きローゼの護衛を頼むよ」
「はい!喜んで!この命にかえましても!では早速マリアローゼ様の元へ戻りますね!!」

返事も聞かずに、シュタタッとユリアは走り去っていく。
穏やかな笑顔を浮かべつつも、半ば呆然とシルヴァインは走り去る背中を見送った。

何時だかマリアローゼに、

「お兄様達は学園に入ったら、適齢期の女性達に追われることになりますから、
 今の内に女性の扱いを学んでおいたほうがよろしいですわよ」

などと言われたことがあり、内容も相俟って思わず笑ってしまったのだが、
途端に現実味を帯びてきて、シルヴァインは慄いた。

「まあアレは…女性というより、生き物という感じだが…」

しかもまだ、マリアローゼと言う別の対象にまっしぐらな生き物だから、余裕はもてるが、
あの状態で自分に突進してきたら、この上なく面倒くさそうだ、とげんなりする。
分類が生き物のユリアと、普通の紳士淑女を比べてしまうのは良くないが、
最悪を予想して心構えを持った方がいいだろう。

シルヴァインは、ハセベーに出す手紙の文面を考えつつ自分に用意された部屋へと引き上げた。
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