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王子の明かした秘密
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お茶会は終始和やかな雰囲気で、楽しく幕を閉じた。
扉まで、グレンツェンとレオニードを見送り、美しい所作でお辞儀をして最後ににっこりと微笑んだ。
二人も照れたような笑顔を向けて、連れ立って廊下を歩いて行った。
そして、テースタと共に食器を持って部屋を出て行こうとするアルベルトを、
マリアローゼが引き止めた。
「あの…殿下、宜しければ少し一緒にお茶を頂きませんか?」
「ローゼ嬢が良いのなら、喜んで」
歩みを止めたアルベルトが、嬉しそうに微笑んだ。
マリアローゼは、早速紅茶の用意を始めたルーナに、追加の料理を頼む。
「ルーナ、まだ厨房には予備の食事があると思うので、それを運ばせてほしいの」
「でしたら、食器を下げるついでですので、私が運んで参ります」
一緒に足を止め、見守っていたテースタが静かに申し出た。
「宜しいの?……ではお願い致しますわ」
テースタが目礼するのを確認して、マリアローゼは改めて依頼をして微笑んだ。
美しい兄妹の前に座って、アルベルトは紅茶を飲み始める。
「帝国のお話、面白うございましたわ」
先程まで話していた内容について話を向けると、アルベルトも頷いて話し始めた。
給仕の合間に聞き漏らしていた部分を、マリアローゼが補完していく。
どんな話でもマリアローゼの口から聞かされると、まるで別の物のように心が躍るアルベルトだった。
しかし、アルベルトが時々何かを言いたげにする素振りに気がついて、
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
「何かご心配事でもございますの?」
「いや、そうではない」
アルベルトは指を組んで、脚に乗せている両手に視線を落とす。
「これは言ってもいいものか、どうか迷ったのだが」
「ならば、言う必要はないのでは?」
被せるように醒めた目を向けるシルヴァインに、アルベルトは苦笑を返した。
「先程、引き止められなければそのまま帰るつもりだった。
でも、ローゼ嬢がそれを良しとしないならば、やはり話すべきと思ったのだ」
「?何の事でしょうか?」
不思議そうな顔で、マリアローゼはやれやれ、といった風情のシルヴァインと
苦渋の決断をした風情のアルベルトを見比べた。
「別邸で怪我を負ったノアークに会った。軽症だから既に快復はしている。
私と同じように「無かった事」にした方がいいのかと迷ったのだ」
父からも兄からもマリアローゼは一言も何も教えられていなかった。
怪我を負ったという事は、先日の襲撃事件で影ながら戦ってくれていた冒険者の中に、もう一人の兄ノアークもいたのだろう。
出かける前に急に勉強会へ来なくなったのは、旅に出る前に訓練をしていたからだろうか。
謎だった部分が繋がって、ほう、とマリアローゼは息を吐いた。
「いいえ、教えてくださってありがとう存じます。きっとわたくしは何も知らされなかったと思うので。
殿下もお悩みになったでしょう?お気遣い感謝致しますわ」
無事で良かった、とノアークの姿をマリアローゼは思い浮かべた。
「何か伝える事があれば請け負うよ」
「……いいえ。家に戻って、きちんとノアお兄様の目を見てお伝えしたいので」
マリアローゼの言葉に、アルベルトもしっかりと頷いた。
「じゃあ、そろそろ私も失礼するよ。もてなし感謝する」
「殿下、最後までお気をつけてくださいませね」
アルベルトは笑顔で頷き、テースタと共に部屋を後にした
扉まで、グレンツェンとレオニードを見送り、美しい所作でお辞儀をして最後ににっこりと微笑んだ。
二人も照れたような笑顔を向けて、連れ立って廊下を歩いて行った。
そして、テースタと共に食器を持って部屋を出て行こうとするアルベルトを、
マリアローゼが引き止めた。
「あの…殿下、宜しければ少し一緒にお茶を頂きませんか?」
「ローゼ嬢が良いのなら、喜んで」
歩みを止めたアルベルトが、嬉しそうに微笑んだ。
マリアローゼは、早速紅茶の用意を始めたルーナに、追加の料理を頼む。
「ルーナ、まだ厨房には予備の食事があると思うので、それを運ばせてほしいの」
「でしたら、食器を下げるついでですので、私が運んで参ります」
一緒に足を止め、見守っていたテースタが静かに申し出た。
「宜しいの?……ではお願い致しますわ」
テースタが目礼するのを確認して、マリアローゼは改めて依頼をして微笑んだ。
美しい兄妹の前に座って、アルベルトは紅茶を飲み始める。
「帝国のお話、面白うございましたわ」
先程まで話していた内容について話を向けると、アルベルトも頷いて話し始めた。
給仕の合間に聞き漏らしていた部分を、マリアローゼが補完していく。
どんな話でもマリアローゼの口から聞かされると、まるで別の物のように心が躍るアルベルトだった。
しかし、アルベルトが時々何かを言いたげにする素振りに気がついて、
マリアローゼはこてん、と首を傾げた。
「何かご心配事でもございますの?」
「いや、そうではない」
アルベルトは指を組んで、脚に乗せている両手に視線を落とす。
「これは言ってもいいものか、どうか迷ったのだが」
「ならば、言う必要はないのでは?」
被せるように醒めた目を向けるシルヴァインに、アルベルトは苦笑を返した。
「先程、引き止められなければそのまま帰るつもりだった。
でも、ローゼ嬢がそれを良しとしないならば、やはり話すべきと思ったのだ」
「?何の事でしょうか?」
不思議そうな顔で、マリアローゼはやれやれ、といった風情のシルヴァインと
苦渋の決断をした風情のアルベルトを見比べた。
「別邸で怪我を負ったノアークに会った。軽症だから既に快復はしている。
私と同じように「無かった事」にした方がいいのかと迷ったのだ」
父からも兄からもマリアローゼは一言も何も教えられていなかった。
怪我を負ったという事は、先日の襲撃事件で影ながら戦ってくれていた冒険者の中に、もう一人の兄ノアークもいたのだろう。
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「……いいえ。家に戻って、きちんとノアお兄様の目を見てお伝えしたいので」
マリアローゼの言葉に、アルベルトもしっかりと頷いた。
「じゃあ、そろそろ私も失礼するよ。もてなし感謝する」
「殿下、最後までお気をつけてくださいませね」
アルベルトは笑顔で頷き、テースタと共に部屋を後にした
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