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厄介なもの
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ルーナが淹れてくれた、薄めのミルクティを飲んでいると、外が少し騒がしくなった。
シルヴァインがマリアローゼを見、マリアローゼもシルヴァインを見て首をこてん、と傾げる。
まさか、ルーセン様とナハト様のご子息が小間使い達が倒れるほどの美貌の持ち主とか?
などと考えつつ、そろそろと扉の近くに行くと、
ぐっと扉をシルヴァインに押さえられてしまった。
両手でふんふんと引っ張っても、兄の片手にすら敵わない。
むっと唇を尖らせて兄を睨むと、兄はニヤリと笑った。
マリアローゼを庇うように、扉から遠ざけて、シルヴァインは扉の外を見て、パタリとすぐ閉じた。
「うーん。厄介な生き物がいる」
「えっ」
ユリアさんでしたら背後に…
とユリアを振り返って見ると、シルヴァインが首を横に振った。
「そっちじゃない」
酷い言われよう、とユリアの呟きが聞こえたが、マリアローゼはシルヴァインを退かして扉をそっと開けて外を覗き見た。
ピンクブロンドの少女と金髪の少女が、二人の少年を引き止めている。
「あら…どこから予定を聞きつけたのでしょうか……」
「俺は言ってないよ」
我関せず、といったように、シルヴァインは扉から離れて椅子に戻ってしまった。
「えっ」
マリアローゼはシルヴァインが助けに行くのかと思ったが、どうやらその気は無いようだ。
「いいじゃないか。あの難問を片付けられないならローゼとのお茶会は無しで」
「駄目ですわ。今回はお礼でこちらから招待したのですもの。
宜しいですか?お兄様はここでいい子にしてらして」
朝の意趣返しとばかりに、シルヴァインに言い付けると、マリアローゼは部屋から出て行った。
「だからぁ、何で私達とお茶会出来ないの?」
「先程から申し上げてますが、先約があるのです」
「聖女よりも大事なんですかっ?」
「…………」
テレーゼに丁寧に言葉を返しているのは、ルーセンの息子だろう。
ワインレッドの髪を無造作に後ろに流している、父譲りの穏やかな美少年だ。
困ったように眉を顰めて、髪色と似た緋色の瞳を傍らのもう一人の少年に向ける。
もう一人の言葉を発してない少年は黒髪を短く刈り込んだ短髪で、紺鼠色の瞳をしている。
とても綺麗な瞳を逸らして、無言を貫いているようだった。
「わたくしのお客様を解放して頂いても宜しくて?」
声をかけると、二人の聖女(仮)がぎょっとしたようにこちらを見た。
「何よ、何であんたばっかり!」
「また邪魔するのですかっ」
また?
いつ邪魔をしたというのか。
「この方達とのお茶会は、お父様同士がお決めになられたのです。
テレーゼ様とリトリー様のお父様はどちらにいらっしゃいますの?」
「何で父親が出てくるのよ、関係ないでしょ」
マリアローゼはぷっくりとした頬に手を当てて、溜息をついた。
「まあ、ご冗談も大概になさいませ。お茶会は社交、社交は家同士の交流ではありませんの。
知りもしないお相手と約束も交わさずに、突然お茶を飲むなんて、そんな事有り得ませんわ。
貴族社会の常識を御存知ないとはいえ、これ以上困らせるのはおやめ下さい」
「貴女が招待したなら、貴女が許可すれば私達も参加できるでしょ!」
「そうなのです。わたくしも最初、こちらのお二方のお父様にそう申し上げたのですが、結果はご覧の通りですわ」
二人はぽかん、と口を開けてマリアローゼを見ている。
まさか誘われていたとも、それを断られていたとも思わなかったのだろう。
「ええ、先日の殿下と貴女方とのお茶会に、お二人もいらしてはどうかと思ってお誘いしたのですけれど、お断りされましたの。残念ですわね」
残念そうに溜息をついて見せてから、マリアローゼは二人の少年に向き直った。
シルヴァインがマリアローゼを見、マリアローゼもシルヴァインを見て首をこてん、と傾げる。
まさか、ルーセン様とナハト様のご子息が小間使い達が倒れるほどの美貌の持ち主とか?
などと考えつつ、そろそろと扉の近くに行くと、
ぐっと扉をシルヴァインに押さえられてしまった。
両手でふんふんと引っ張っても、兄の片手にすら敵わない。
むっと唇を尖らせて兄を睨むと、兄はニヤリと笑った。
マリアローゼを庇うように、扉から遠ざけて、シルヴァインは扉の外を見て、パタリとすぐ閉じた。
「うーん。厄介な生き物がいる」
「えっ」
ユリアさんでしたら背後に…
とユリアを振り返って見ると、シルヴァインが首を横に振った。
「そっちじゃない」
酷い言われよう、とユリアの呟きが聞こえたが、マリアローゼはシルヴァインを退かして扉をそっと開けて外を覗き見た。
ピンクブロンドの少女と金髪の少女が、二人の少年を引き止めている。
「あら…どこから予定を聞きつけたのでしょうか……」
「俺は言ってないよ」
我関せず、といったように、シルヴァインは扉から離れて椅子に戻ってしまった。
「えっ」
マリアローゼはシルヴァインが助けに行くのかと思ったが、どうやらその気は無いようだ。
「いいじゃないか。あの難問を片付けられないならローゼとのお茶会は無しで」
「駄目ですわ。今回はお礼でこちらから招待したのですもの。
宜しいですか?お兄様はここでいい子にしてらして」
朝の意趣返しとばかりに、シルヴァインに言い付けると、マリアローゼは部屋から出て行った。
「だからぁ、何で私達とお茶会出来ないの?」
「先程から申し上げてますが、先約があるのです」
「聖女よりも大事なんですかっ?」
「…………」
テレーゼに丁寧に言葉を返しているのは、ルーセンの息子だろう。
ワインレッドの髪を無造作に後ろに流している、父譲りの穏やかな美少年だ。
困ったように眉を顰めて、髪色と似た緋色の瞳を傍らのもう一人の少年に向ける。
もう一人の言葉を発してない少年は黒髪を短く刈り込んだ短髪で、紺鼠色の瞳をしている。
とても綺麗な瞳を逸らして、無言を貫いているようだった。
「わたくしのお客様を解放して頂いても宜しくて?」
声をかけると、二人の聖女(仮)がぎょっとしたようにこちらを見た。
「何よ、何であんたばっかり!」
「また邪魔するのですかっ」
また?
いつ邪魔をしたというのか。
「この方達とのお茶会は、お父様同士がお決めになられたのです。
テレーゼ様とリトリー様のお父様はどちらにいらっしゃいますの?」
「何で父親が出てくるのよ、関係ないでしょ」
マリアローゼはぷっくりとした頬に手を当てて、溜息をついた。
「まあ、ご冗談も大概になさいませ。お茶会は社交、社交は家同士の交流ではありませんの。
知りもしないお相手と約束も交わさずに、突然お茶を飲むなんて、そんな事有り得ませんわ。
貴族社会の常識を御存知ないとはいえ、これ以上困らせるのはおやめ下さい」
「貴女が招待したなら、貴女が許可すれば私達も参加できるでしょ!」
「そうなのです。わたくしも最初、こちらのお二方のお父様にそう申し上げたのですが、結果はご覧の通りですわ」
二人はぽかん、と口を開けてマリアローゼを見ている。
まさか誘われていたとも、それを断られていたとも思わなかったのだろう。
「ええ、先日の殿下と貴女方とのお茶会に、お二人もいらしてはどうかと思ってお誘いしたのですけれど、お断りされましたの。残念ですわね」
残念そうに溜息をついて見せてから、マリアローゼは二人の少年に向き直った。
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