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もうすぐ終わり
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エイラもルーナもお辞儀をして立ち去るシルヴァインを見送り、扉を閉めてからマリアローゼの元へと来る。
マリアローゼはふと視線を感じて部屋を見回すと、
部屋の隅にユリアの形をした置物が直立不動で立っている。
その横では壁を背にしたカンナが椅子に座って、読書をしていた。
まあいいか、とマリアローゼは視線をエイラに戻して、着替えを始める。
白いふんわりとしたドレスは、銀色の刺繍が細く繊細に施されていた。
透ける薄い生地を幾重にも重ねてふんわりとしたボリュームを出した、
可愛らしいシルエットだ。
髪も丁寧に結い上げられる。
といっても、アップにする訳ではなく、細い三つ編みを数本作って、後頭部で飾りをつけて纏めるだけだ。
マリアローゼの髪は自然に任せたままでも、何故か毛先はくるんと巻いている。
指先でくるくると弄んでいる内に、髪も服も全て整っていた。
「て…天使……」
部屋の隅から、大袈裟でありつつも可愛らしい女性の声がする。
髪を結い上げたシンプルなドレス姿のカンナに凭れる様に、ユリアは審問官の礼装を身につけて咽んでいた。
口に手を当てて、感激したように目をうるませている。
「ユリアさん、大袈裟です」
「そんな…そんな…可愛らしすぎてもう…語彙が死んでますが、ありがとうございます!」
続けざまに何度もお礼を言うので、それは着飾らせてくれた
エイラやルーナに言うべきではないだろうか…とも思うが、
マリアローゼはとりあえず、ユリアににっこり微笑んだ。
「もうすぐ終わりだと思うと、寂しくなりますね」
挙動不審なくらいに目一杯大袈裟な言動をするが、ユリアには屈託がないので好きだった。
褒められすぎて恥ずかしくて困る、というのはあるが、いなくなると思うと寂しいものである。
「……え?そ、それは世界の終わりがくるという予言か何かでしょうか?」
ハッと顔を青ざめさせて言うユリアに、マリアローゼは突っ込みをいれた。
「何でそうなりますの。……そうではなくて、もうすぐわたくし達は王国へ帰るので、お別れが近いと…」
「世界の終わりーーーーー!」
お別れのあたりで、絶望した表情になったユリアが崩れ落ちた。
そのままうっうっ…そんなぁ…などと下を向いて泣き始める。
本当に泣いている。
「あ…ど、どうしましょう……」
泣かせるつもりはなかったので、困っていると、カンナがユリアの横にしゃがみ込んだ。
「お嬢様、先にお隣へどうぞ。私もすぐユリアを連れて参りますので」
慰め役を買って出てくれたカンナに任せて、マリアローゼは部屋を後にした。
まさか本気で泣いてしまうと思わなかったので、少しだけ心が痛んだ。
そして審議が終るまでと滞積していた問題を思い出し、兄へ問いかけようと声をかける。
「お兄様」
声をかけると、椅子に腰掛けていたシルヴァインがパッと振り返って、一目見ると破顔する。
「やあ、とても綺麗だマリアローゼ」
「ありがとう存じます」
「お父様とお母様は何処にいらっしゃいますの?」
きょろきょろと部屋の中を見回すが、何処にもいない。
シルヴァインは立ち上がって、マリアローゼの手を引くと椅子へと座らせた。
「父上は事前の確認にモルガナ公爵や審問官と隣の部屋で打ち合わせ中で、
母上も今着替えをしているところだよ」
「丁度良かったです。わたくしが頼んでいた、アニスさんの件どうなっておりますか?」
「それは……今話すのは止めておこう」
神殿騎士グランスの病床の妹の事だ。
見舞いに行く予定になっていたので、事前に冒険者に調査を依頼している筈だった。
良い話ではなさそうだ、とマリアローゼは感じ取り口を噤んだ。
マリアローゼはふと視線を感じて部屋を見回すと、
部屋の隅にユリアの形をした置物が直立不動で立っている。
その横では壁を背にしたカンナが椅子に座って、読書をしていた。
まあいいか、とマリアローゼは視線をエイラに戻して、着替えを始める。
白いふんわりとしたドレスは、銀色の刺繍が細く繊細に施されていた。
透ける薄い生地を幾重にも重ねてふんわりとしたボリュームを出した、
可愛らしいシルエットだ。
髪も丁寧に結い上げられる。
といっても、アップにする訳ではなく、細い三つ編みを数本作って、後頭部で飾りをつけて纏めるだけだ。
マリアローゼの髪は自然に任せたままでも、何故か毛先はくるんと巻いている。
指先でくるくると弄んでいる内に、髪も服も全て整っていた。
「て…天使……」
部屋の隅から、大袈裟でありつつも可愛らしい女性の声がする。
髪を結い上げたシンプルなドレス姿のカンナに凭れる様に、ユリアは審問官の礼装を身につけて咽んでいた。
口に手を当てて、感激したように目をうるませている。
「ユリアさん、大袈裟です」
「そんな…そんな…可愛らしすぎてもう…語彙が死んでますが、ありがとうございます!」
続けざまに何度もお礼を言うので、それは着飾らせてくれた
エイラやルーナに言うべきではないだろうか…とも思うが、
マリアローゼはとりあえず、ユリアににっこり微笑んだ。
「もうすぐ終わりだと思うと、寂しくなりますね」
挙動不審なくらいに目一杯大袈裟な言動をするが、ユリアには屈託がないので好きだった。
褒められすぎて恥ずかしくて困る、というのはあるが、いなくなると思うと寂しいものである。
「……え?そ、それは世界の終わりがくるという予言か何かでしょうか?」
ハッと顔を青ざめさせて言うユリアに、マリアローゼは突っ込みをいれた。
「何でそうなりますの。……そうではなくて、もうすぐわたくし達は王国へ帰るので、お別れが近いと…」
「世界の終わりーーーーー!」
お別れのあたりで、絶望した表情になったユリアが崩れ落ちた。
そのままうっうっ…そんなぁ…などと下を向いて泣き始める。
本当に泣いている。
「あ…ど、どうしましょう……」
泣かせるつもりはなかったので、困っていると、カンナがユリアの横にしゃがみ込んだ。
「お嬢様、先にお隣へどうぞ。私もすぐユリアを連れて参りますので」
慰め役を買って出てくれたカンナに任せて、マリアローゼは部屋を後にした。
まさか本気で泣いてしまうと思わなかったので、少しだけ心が痛んだ。
そして審議が終るまでと滞積していた問題を思い出し、兄へ問いかけようと声をかける。
「お兄様」
声をかけると、椅子に腰掛けていたシルヴァインがパッと振り返って、一目見ると破顔する。
「やあ、とても綺麗だマリアローゼ」
「ありがとう存じます」
「お父様とお母様は何処にいらっしゃいますの?」
きょろきょろと部屋の中を見回すが、何処にもいない。
シルヴァインは立ち上がって、マリアローゼの手を引くと椅子へと座らせた。
「父上は事前の確認にモルガナ公爵や審問官と隣の部屋で打ち合わせ中で、
母上も今着替えをしているところだよ」
「丁度良かったです。わたくしが頼んでいた、アニスさんの件どうなっておりますか?」
「それは……今話すのは止めておこう」
神殿騎士グランスの病床の妹の事だ。
見舞いに行く予定になっていたので、事前に冒険者に調査を依頼している筈だった。
良い話ではなさそうだ、とマリアローゼは感じ取り口を噤んだ。
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