悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

文字の大きさ
上 下
82 / 357
連載

転生者と聖女達

しおりを挟む
「その方達は審議を無事通過されたのですよね?」

その問いには、マグノリアに目線を向けられたユリアが頷きながら答えた。

「完全にではありませんが、微弱な反応は見られたのでお二人とも候補としてお城に常駐されております」

「あら?神聖国では聖女は教会で神聖教のお勉強をされるものだとばかり思っておりましたけれど…」

不思議そうにこてんと首を傾げるマリアローゼに、ユリアは苦笑いを返した。

「それが…お二人とも性格に難がお有で…でも聖女というだけでなく他にも保護を要する理由があるので、国外に出る事は出来ません。ですので、国の中ではある程度の自由を与えると国主様直々のご命令にて、我侭が助長されているという現状です」

それは転生者だからだろうか。
という質問は、こちらからは問えない。

推測でしかないが、ゲームや原作の歴史に変化を与えたのは「私」だけではないはずだ。
もし平民や下級貴族の娘なら、一発逆転が可能な「聖女」という存在に縋る者も出るだろう。
ヒロイン枠なら光属性の癒し魔法を使える可能性も高い訳であって、予測が正しければ女神の水晶は、その魔力に反応するように出来ている筈だ。
更にHPを利用した完全な聖女の力の行使について学べば、先ほどの審議の場で「完全な」反応を引き出せるはず。
故に、マリアローゼはそれをしない事で切り抜けようと思っていた。
実際に魔力を使うことは禁じられているし、出来るかどうかも不明なのだが。

性格に難ありなヒロイン枠とか罠でしかない。
絶対会いたくないものである。

しかし、保護とは何だろう。

「保護というのは、具体的には?理由とは何でしょう?」

「あ、あ…理由はちょっと国の機密に関わるので口外出来ませんが、保護はですね…主に教会で衣食住の面倒を一生見るので、国外には出られないという感じでしょうかね…」

ふむぅ…理由はやはりはぐらかされたか。

けれど、国の機密に関わると言われてしまえば、内容を聞いてしまったが最後国から出さんと言われても仕方ない。
だとしたらそこを突くのはもうやめよう。

もし教会が「転生者」を保護する団体になっていたのだとしたら、
聖女の力以上に厄介な力を手に入れることになる。
抑止する方向で利用するならいいのだが、活用する方向に向かってしまえばいとも簡単に世界はひっくり返るだろう。
教会が禁止しているはずの禁断の知識だ。

この世界の知識ではない危険な知識を持っているものを野放しにしないという点では良いのだ。
今まで恐ろしい変革がなかったのがそういう理由があってのことなら信用してもいいのだろうけれど、
教会の腐敗を知ってしまった後では、信じきる事も難しい。

「そういえば、聖女様は学園に通われますの?」
「はひぇ?…え…ええと、それは多分無理ですね」
「我侭を仰るらしいですし、学園は国内ですので、通われるのだと思ったのですけれど」
「いえ、その我侭は却下される方の我侭ですね。国外に出られないのは勿論、
不特定多数の人々との接触も禁じられておりますので、間違いなく無理です」

そう言われると、どの程度酷いのか見てみたい気持も沸きあがる。
が、好奇心と不愉快を天秤にかけたら、マリアローゼは好奇心を捨てる選択をする。
彼女らは目の前の豪華な餌「聖女」に飛びついて、その他の選択肢を捨てたのだ。
気付かないうちに。
「私」や攻略対象である兄達にとっては、僥倖だったかもしれない。
我侭で難ありの女子から追われずに済むのだから。

「そうですのね。どんな方が聖女なのか拝見してみたかったですわ」

無理と言われて安心しきって、社交辞令を口にしたものの、ユリアのにこやかな声に思考が止まった。

「お会いできますよ」
「えっ」
「あ、まだお伝えしてなかったですね。審議の後、聖女候補のお二人と公子様とお茶会の予定です」

首を竦めて、怒られた亀のようにマグノリアを見ながら、すまなそうにユリアは続けた。
マリアローゼはギギギ…と擬音が付きそうな位にぎこちない挙動で、同じくマグノリアを見る。
マグノリアは、特に怒ってはいないが、憮然とした表情で頷いて見せた。
どうやら知ってはいたらしい。

何目的のお茶会なのだろうか。
審議失敗した公爵令嬢になる予定なので、余計に目的が分からない。

シルヴァインの顔色を窺うと、彼も困った様に肩を竦めて首を傾げた。
公子とも年が近い故の顔合わせ、というのなら分からなくもないが、
側近くに聖女候補が二人もいて、更に他の国の令嬢を娶ろうとするものだろうか?

うーん。
そうすると血筋からすれば公爵令嬢の私を正妻に、聖女二人を側室に?
何処かの国の愛の狩人的皇帝みたいな、享楽に溺れてるみたいじゃないか。

それは神聖国という国柄あまり外聞が宜しいとは言い難い。
とはいえ、一国の王であれば、一つの目的を求める為だけの布石でもないだろう。
だとしたら平凡な人生を歩み、この世界での5年の経験を足しても読みきるのは難しい。
危害を加えるつもりのない内容であれば、こちらも歩み寄る姿勢でいなくてはならない。

「とても…楽しみですわ」

困ったようにしょぼくれるユリアを励ますように、マリアローゼはにっこりと笑って見せた。
しおりを挟む
❤キャライメージはPixivにあるので、宜しければご覧になって下さいませ
感想 135

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。