72 / 357
連載
王族を使役してしまったお嬢様
しおりを挟む
そこへ、ちょうどアルベルトが到着して、二人が姿勢を正してお辞儀をする。
「やあ、ローゼ。今大丈夫かな?」
「ええ、アルベルト様。どうぞお入りになって下さいませ」
ソファから立ち上がり、お辞儀をしてから、マリアローゼはアルベルトの着席を待ってから座った。
並んで座っていたカンナはお辞儀をして、ソファの横に立っている。
マリアローゼはテーブルの上に残ったロバを、手早く荷物の中に仕舞って、アルベルトに向き合った。
「不躾なお願い事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いや、こんな事でも頼ってもらえるのは嬉しいよ」
綺麗な笑顔を浮かべながら、抱えていた本を机の上の空いたスペースに並べる。
「何が良いのか分からなかったから、君が読んでいなさそうな本を持ってきたよ」
「まあ、ありがとう存じます」
嬉しそうに笑うマリアローゼの笑顔を見ると、アルベルトも頬を染めて目を逸らした。
マリアローゼは気にする様子はなく、持ち込んだ本の表紙を楽しそうに眺めている。
「本当はもう少し話をしたいところだけど、今忙しくてね。また後で読みたい本を教えてくれれば
誰かに持ってこさせよう」
「……あ、……本当に、大変申し訳ないことを…」
勝手知ったる場所ではないとはいえ、王族を召使のように使ってしまったのだ。
恥ずかしさに、マリアローゼはギュッと目をつぶった。
消えてなくなりたい!!!
のだが、視界がふさがれるだけで、めちゃくちゃ存在している5歳児なのである。
「いや、違う。そういうのではなくて…本当なら全部私が選んで持って来たいし、不躾などと思ってもない。嬉しいんだよ、マリアローゼ。君の役に立てるなら、何でも嬉しい」
「はへ?」
何だろうその、変な下僕宣言みたいなのは。
命令されるのが好きな系統の人だろうか。
言われたマリアローゼはトゥンク……とはならずに、変な吐息が口から洩れてしまった。
「だが、今は緊急事態で、フィロソフィ公爵だけでなく、近隣の貴族からもこちらに派兵されているんだ。
その事自体は問題ではないが、色々と調整も必要だ。私も王族の身なれば、…今は外には出れないが、
公爵への引継ぎが滞りなく行えるように整えておかねばならない」
ちょっと下賤な思い違いをした事を反省しつつ、マリアローゼは頷いた。
色々な事態が引き起こされているのだ。
集まった人々を、マリアローゼの適当に並べたロバの様に並ばせておけばいいというものでもないのは確かだ。
「分かりました。貴重なお時間を割いて頂いて嬉しゅうございました。
どうぞ、職務にお戻りになって下さいませ。
ローゼはこちらで選んで頂いた本を読んでおります」
「では、失礼するよ」
7歳なのに、きちんと王族の義務を果たそうと頑張っているアルベルトに感心する。
普通の乙女ゲーやら悪役令嬢モノやらに出てくる王子と当たり前だが全然違う。
原作ゲームや小説に至っては…あれは、どうなってああいうものが作られたのだろう。
この世界の記憶がある人が作ったのか、それとも情報としてダウンロードされるように導かれて作られるのか。
どちらにしても、一人の行動ですらここまで事態が変則的かつ劇的に変わってしまっている。
最早原作小説だろうとゲームだろうと、全く指標にならない。
生きている人々は成長もするので、尚更のことである。
そして、大きく事態を変革してしまう事が出来る人が着々と近づいている事を思い出し、
マリアローゼは憂鬱に盛大な溜息を落とすのであった。
「やあ、ローゼ。今大丈夫かな?」
「ええ、アルベルト様。どうぞお入りになって下さいませ」
ソファから立ち上がり、お辞儀をしてから、マリアローゼはアルベルトの着席を待ってから座った。
並んで座っていたカンナはお辞儀をして、ソファの横に立っている。
マリアローゼはテーブルの上に残ったロバを、手早く荷物の中に仕舞って、アルベルトに向き合った。
「不躾なお願い事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いや、こんな事でも頼ってもらえるのは嬉しいよ」
綺麗な笑顔を浮かべながら、抱えていた本を机の上の空いたスペースに並べる。
「何が良いのか分からなかったから、君が読んでいなさそうな本を持ってきたよ」
「まあ、ありがとう存じます」
嬉しそうに笑うマリアローゼの笑顔を見ると、アルベルトも頬を染めて目を逸らした。
マリアローゼは気にする様子はなく、持ち込んだ本の表紙を楽しそうに眺めている。
「本当はもう少し話をしたいところだけど、今忙しくてね。また後で読みたい本を教えてくれれば
誰かに持ってこさせよう」
「……あ、……本当に、大変申し訳ないことを…」
勝手知ったる場所ではないとはいえ、王族を召使のように使ってしまったのだ。
恥ずかしさに、マリアローゼはギュッと目をつぶった。
消えてなくなりたい!!!
のだが、視界がふさがれるだけで、めちゃくちゃ存在している5歳児なのである。
「いや、違う。そういうのではなくて…本当なら全部私が選んで持って来たいし、不躾などと思ってもない。嬉しいんだよ、マリアローゼ。君の役に立てるなら、何でも嬉しい」
「はへ?」
何だろうその、変な下僕宣言みたいなのは。
命令されるのが好きな系統の人だろうか。
言われたマリアローゼはトゥンク……とはならずに、変な吐息が口から洩れてしまった。
「だが、今は緊急事態で、フィロソフィ公爵だけでなく、近隣の貴族からもこちらに派兵されているんだ。
その事自体は問題ではないが、色々と調整も必要だ。私も王族の身なれば、…今は外には出れないが、
公爵への引継ぎが滞りなく行えるように整えておかねばならない」
ちょっと下賤な思い違いをした事を反省しつつ、マリアローゼは頷いた。
色々な事態が引き起こされているのだ。
集まった人々を、マリアローゼの適当に並べたロバの様に並ばせておけばいいというものでもないのは確かだ。
「分かりました。貴重なお時間を割いて頂いて嬉しゅうございました。
どうぞ、職務にお戻りになって下さいませ。
ローゼはこちらで選んで頂いた本を読んでおります」
「では、失礼するよ」
7歳なのに、きちんと王族の義務を果たそうと頑張っているアルベルトに感心する。
普通の乙女ゲーやら悪役令嬢モノやらに出てくる王子と当たり前だが全然違う。
原作ゲームや小説に至っては…あれは、どうなってああいうものが作られたのだろう。
この世界の記憶がある人が作ったのか、それとも情報としてダウンロードされるように導かれて作られるのか。
どちらにしても、一人の行動ですらここまで事態が変則的かつ劇的に変わってしまっている。
最早原作小説だろうとゲームだろうと、全く指標にならない。
生きている人々は成長もするので、尚更のことである。
そして、大きく事態を変革してしまう事が出来る人が着々と近づいている事を思い出し、
マリアローゼは憂鬱に盛大な溜息を落とすのであった。
398
❤キャライメージはPixivにあるので、宜しければご覧になって下さいませ
お気に入りに追加
6,034
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました
あさひな
ファンタジー
二児の子供がいるワーキングマザーの私。仕事、家事、育児に忙殺され、すっかりくたびれた中年女になり果てていた私は、ある日事故により異世界転生を果たす。
転生先は、前世とは縁遠い公爵令嬢「イザベル・フォン・アルノー」だったが……まさかの乙女ゲームの悪役令嬢!?
しかも乙女ゲームの内容が全く思い出せないなんて、あんまりでしょ!!
破滅フラグ(攻略対象者)から逃げるために修道院に逃げ込んだら、子供達の扱いに慣れているからと孤児達の世話役を任命されました。
そりゃあ、前世は二児の母親だったので、育児は身に染み付いてますが、まさかそれがチートになるなんて!
しかも育児知識をフル活用していたら、なんだか王太子に気に入られて婚約者に選ばれてしまいました。
攻略対象者から逃げるはずが、こんな事になるなんて……!
「貴女の心は、美しい」
「ベルは、僕だけの義妹」
「この力を、君に捧げる」
王太子や他の攻略対象者から執着されたり溺愛されながら、私は現世の運命に飲み込まれて行くーー。
※なろう(現在非公開)とカクヨムで一部掲載中
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。