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王族を使役してしまったお嬢様
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そこへ、ちょうどアルベルトが到着して、二人が姿勢を正してお辞儀をする。
「やあ、ローゼ。今大丈夫かな?」
「ええ、アルベルト様。どうぞお入りになって下さいませ」
ソファから立ち上がり、お辞儀をしてから、マリアローゼはアルベルトの着席を待ってから座った。
並んで座っていたカンナはお辞儀をして、ソファの横に立っている。
マリアローゼはテーブルの上に残ったロバを、手早く荷物の中に仕舞って、アルベルトに向き合った。
「不躾なお願い事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いや、こんな事でも頼ってもらえるのは嬉しいよ」
綺麗な笑顔を浮かべながら、抱えていた本を机の上の空いたスペースに並べる。
「何が良いのか分からなかったから、君が読んでいなさそうな本を持ってきたよ」
「まあ、ありがとう存じます」
嬉しそうに笑うマリアローゼの笑顔を見ると、アルベルトも頬を染めて目を逸らした。
マリアローゼは気にする様子はなく、持ち込んだ本の表紙を楽しそうに眺めている。
「本当はもう少し話をしたいところだけど、今忙しくてね。また後で読みたい本を教えてくれれば
誰かに持ってこさせよう」
「……あ、……本当に、大変申し訳ないことを…」
勝手知ったる場所ではないとはいえ、王族を召使のように使ってしまったのだ。
恥ずかしさに、マリアローゼはギュッと目をつぶった。
消えてなくなりたい!!!
のだが、視界がふさがれるだけで、めちゃくちゃ存在している5歳児なのである。
「いや、違う。そういうのではなくて…本当なら全部私が選んで持って来たいし、不躾などと思ってもない。嬉しいんだよ、マリアローゼ。君の役に立てるなら、何でも嬉しい」
「はへ?」
何だろうその、変な下僕宣言みたいなのは。
命令されるのが好きな系統の人だろうか。
言われたマリアローゼはトゥンク……とはならずに、変な吐息が口から洩れてしまった。
「だが、今は緊急事態で、フィロソフィ公爵だけでなく、近隣の貴族からもこちらに派兵されているんだ。
その事自体は問題ではないが、色々と調整も必要だ。私も王族の身なれば、…今は外には出れないが、
公爵への引継ぎが滞りなく行えるように整えておかねばならない」
ちょっと下賤な思い違いをした事を反省しつつ、マリアローゼは頷いた。
色々な事態が引き起こされているのだ。
集まった人々を、マリアローゼの適当に並べたロバの様に並ばせておけばいいというものでもないのは確かだ。
「分かりました。貴重なお時間を割いて頂いて嬉しゅうございました。
どうぞ、職務にお戻りになって下さいませ。
ローゼはこちらで選んで頂いた本を読んでおります」
「では、失礼するよ」
7歳なのに、きちんと王族の義務を果たそうと頑張っているアルベルトに感心する。
普通の乙女ゲーやら悪役令嬢モノやらに出てくる王子と当たり前だが全然違う。
原作ゲームや小説に至っては…あれは、どうなってああいうものが作られたのだろう。
この世界の記憶がある人が作ったのか、それとも情報としてダウンロードされるように導かれて作られるのか。
どちらにしても、一人の行動ですらここまで事態が変則的かつ劇的に変わってしまっている。
最早原作小説だろうとゲームだろうと、全く指標にならない。
生きている人々は成長もするので、尚更のことである。
そして、大きく事態を変革してしまう事が出来る人が着々と近づいている事を思い出し、
マリアローゼは憂鬱に盛大な溜息を落とすのであった。
「やあ、ローゼ。今大丈夫かな?」
「ええ、アルベルト様。どうぞお入りになって下さいませ」
ソファから立ち上がり、お辞儀をしてから、マリアローゼはアルベルトの着席を待ってから座った。
並んで座っていたカンナはお辞儀をして、ソファの横に立っている。
マリアローゼはテーブルの上に残ったロバを、手早く荷物の中に仕舞って、アルベルトに向き合った。
「不躾なお願い事をしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いや、こんな事でも頼ってもらえるのは嬉しいよ」
綺麗な笑顔を浮かべながら、抱えていた本を机の上の空いたスペースに並べる。
「何が良いのか分からなかったから、君が読んでいなさそうな本を持ってきたよ」
「まあ、ありがとう存じます」
嬉しそうに笑うマリアローゼの笑顔を見ると、アルベルトも頬を染めて目を逸らした。
マリアローゼは気にする様子はなく、持ち込んだ本の表紙を楽しそうに眺めている。
「本当はもう少し話をしたいところだけど、今忙しくてね。また後で読みたい本を教えてくれれば
誰かに持ってこさせよう」
「……あ、……本当に、大変申し訳ないことを…」
勝手知ったる場所ではないとはいえ、王族を召使のように使ってしまったのだ。
恥ずかしさに、マリアローゼはギュッと目をつぶった。
消えてなくなりたい!!!
のだが、視界がふさがれるだけで、めちゃくちゃ存在している5歳児なのである。
「いや、違う。そういうのではなくて…本当なら全部私が選んで持って来たいし、不躾などと思ってもない。嬉しいんだよ、マリアローゼ。君の役に立てるなら、何でも嬉しい」
「はへ?」
何だろうその、変な下僕宣言みたいなのは。
命令されるのが好きな系統の人だろうか。
言われたマリアローゼはトゥンク……とはならずに、変な吐息が口から洩れてしまった。
「だが、今は緊急事態で、フィロソフィ公爵だけでなく、近隣の貴族からもこちらに派兵されているんだ。
その事自体は問題ではないが、色々と調整も必要だ。私も王族の身なれば、…今は外には出れないが、
公爵への引継ぎが滞りなく行えるように整えておかねばならない」
ちょっと下賤な思い違いをした事を反省しつつ、マリアローゼは頷いた。
色々な事態が引き起こされているのだ。
集まった人々を、マリアローゼの適当に並べたロバの様に並ばせておけばいいというものでもないのは確かだ。
「分かりました。貴重なお時間を割いて頂いて嬉しゅうございました。
どうぞ、職務にお戻りになって下さいませ。
ローゼはこちらで選んで頂いた本を読んでおります」
「では、失礼するよ」
7歳なのに、きちんと王族の義務を果たそうと頑張っているアルベルトに感心する。
普通の乙女ゲーやら悪役令嬢モノやらに出てくる王子と当たり前だが全然違う。
原作ゲームや小説に至っては…あれは、どうなってああいうものが作られたのだろう。
この世界の記憶がある人が作ったのか、それとも情報としてダウンロードされるように導かれて作られるのか。
どちらにしても、一人の行動ですらここまで事態が変則的かつ劇的に変わってしまっている。
最早原作小説だろうとゲームだろうと、全く指標にならない。
生きている人々は成長もするので、尚更のことである。
そして、大きく事態を変革してしまう事が出来る人が着々と近づいている事を思い出し、
マリアローゼは憂鬱に盛大な溜息を落とすのであった。
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