悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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冒険者の町、レスティア

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午後も早い内に次の町のレスティアに一行は到着した。
交易も盛んな都市で、アウァリティア王国の都市としては最北端だ。
あと1日馬車で移動すれば、国境を跨いで学園を擁するファートゥムという都市がある。
レスティアは各国の子女が集まる学園都市ファートゥムに一番近い町であり、
そこへ商品を卸す為に、王国各地から人が集まってくるので、町の規模も大きく賑わっている。
神聖街道にぶつかるように、東西から交易路が開かれているのも交易が盛んな理由だ。
すぐ近くに魔の山嶺や樹海もあるため、冒険者も沢山訪れていて、
商売相手としても護衛を雇うにしても、商人達にとっては有り難い存在が多いのも活気を底上げしている。
冒険者の町とも呼ばれている都市である。

馬車は街道を逸れ、繁華街を通り越して、大きな庭のある瀟洒な屋敷へと辿りついた。
その屋敷に元々勤めている兵士達もいて、何だか物々しい雰囲気で、宿のようには見えない。

「ここに泊まるのですか?」
「ああ。ここは王家の別邸で、神聖国へ招聘された人や外交官の滞在用らしいよ。
警備も厳重だから、安心して休めるはずだ」

ゆっくりと庭を時計回りに進んで、正面入口の前で静かに停車する。
シルヴァインはミルリーリウムに続いて、マリアローゼを抱えたまま馬車を降りた。
屋敷の管理を任されている従業員達がずらりと並び、暫く逗留するフィロソフィ一家と騎士達を出迎える。

王家に仕える者達だし、あの優秀な国王夫妻に認められているのだから、信頼できない事はない。
ないのだが、信仰を同じくして、清廉さを求められる筈の神殿騎士達が
騙しあい、裏切りあって殺し合いまでしたのを目にすると、とても手放しで信用できるとは言えない。

少しだけ不安気なマリアローゼを見て、シルヴァインはからかう様に言葉をかけた。

「不安なら一緒に寝てあげようか」
「結構です!」

笑いを含んでシルヴァインに言われて、ムッとしたマリアローゼは即座に断る。

「ルーナも居りますし、頼むならカンナお姉様にお願いしますから」
「ああ、そうしてくれた方が安心できる」

そう言わせたかったのかしら、とふとマリアローゼは柔らかく笑む兄を見て思った。
この旅であった色々な出来事を思い出すと、とても過保護とも言いきれない。

「お兄様がそう仰るなら」

素直に頷いて、同意をすると、シルヴァインはマリアローゼの頭を優しく撫でた。

「決して一人にならないように、気をつけるんだよ」
「はい、お兄様」

狙われたのがマグノリアだとしても、確かにマリアローゼの身にも危険が降りかかったのだ。
どこであれ、用心に越した事はないだろう。
シルヴァインの言葉に頷いて、マリアローゼは大人しく部屋へと運ばれて行った。

それはそうとして、抱っこ癖がついているのでは

歩幅を合わせて歩くのが面倒なのだろうけれど、せめて屋敷の中では自力で歩かないと、鍛えた所で体力が追いつかないのではないだろうか、とマリアローゼは頭を悩ませる。

部屋に着くと、ルーナが早速荷解きを開始していた。
シルヴァインはソファにマリアローゼを降ろして座らせると、部屋を出て行く。

「カンナを呼んでおくよ。俺は用事を片付けてくるから、部屋から出ないようにね」
「はい、お兄様」

本当なら屋敷を探検したい所だが、兄の心配を思うとさすがに出歩けないし、
本気で閉じ込められても困るので、しょんぼりと手荷物の中から熊の木彫りを出して、見える場所に置く。
ついでに一番お気に入りのロバも出して、横に並べた。
幾分マリアローゼの心が慰められる。

「そうでしたわ…!」

手荷物から更に他のロバを出して、選び始める。
すっかりお留守番が板についたアルベルトへのお土産選びである。
一緒に旅をしているから、いらないかなぁ?と一瞬思ったものの、ずっと缶詰状態なのだから旅をしていないロランドよりも退屈かもしれない。
それに、この屋敷はいわばアルベルトにとってはホームでもある。
少なくとも明日まで何かしら本を読んで過ごしたいので、書庫へ本を調達しに代わりに行ってほしい。
小さな紙にその様な手紙を書いて、選んだロバと一緒にルーナに手渡す。

「これをアルベルト様に渡してきてくれる?」
「承りました。外にノクスが居ると思うので渡して参ります」
「お願いね」

ルーナは絶対に側を離れないように厳重に言いつけられているのか、扉を少し開けて、
マリアローゼを振り返りつつ手の中の品をノクスに手渡して何事かを話している。
すぐに扉を閉めて、ルーナはマリアローゼにお辞儀をした。

「渡して参りました。カンナ様ももうすぐお着きになります」
「わかりましたわ」
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