悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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新たな町と、掃討戦

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翌朝の出発も朝早くに始まった。
といっても、今回は夜明け前ではなく、人々が働き始めた時間帯に用意をして宿を後にしたのだった。
次の町はマスロという小さな町で、山に囲まれた自然豊かな町である。
大きな山を一つ、山裾を迂回するような形で街道が伸びていて、
マスロはちょうど盆地になっている場所に町が形成されている。
町の側には湖もあるので、エルノの町に卸されている魚はマスロからの物が殆どらしい。
街道も平面ではあるが、ゆるやかな上り坂も多く、標高も今までの町の中では高そうだった。

馬車の中では、緑の葉を湛えた樹木が通り過ぎるのを見るばかりで、単調な景色が続く。
本当ならば、一緒に旅をしてくれているアルベルトとも話をしたいところなのだが、兄のがっちりガードに阻まれて、挨拶くらいしか交わしていない。
シルヴァインはマリアローゼ専用のチャイルドシートと化している。
だが、ミルリーリウムもシルヴァインもマリアローゼの詳しくない社交の話や、
社交場で仕入れた娯楽の話など、物珍しい話を沢山話してくれるので、退屈ではない。

特にシルヴァインは、ルクスリア神聖国の情報をそれとなく織り交ぜてくれている。
マリアローゼも聖女の書籍中心だったとはいえ、現在の教会関係者や議会については通り一遍学んでいた。
それを補足する様な内容なので、大人しくふんふんと聞き…

やはりお兄様はすごい…

と感心する。
父との連絡役をこなし、情報を集め活用し、尚且つ色々な手配もするという八面六臂の活躍である。
末恐ろしい5歳児のマリアローゼから見ても、驚天動地の11歳だ。

小学校高学年なのに、そこまで出来る??
しかも、その大変さを全く見せないとかやばない?

穏やかで美しい白鳥が、水面下でめちゃくちゃ水掻きしているようなものかなあ、とマリアローゼはぼんやりシルヴァインの美しい顔を眺めた。


夕方頃に、山間の町マスロに到着した。
昼食後に少し眠ったマリアローゼは、おめめぱっちりのまま、マスロに辿りついたのである。
文献を見た時は、町と小さな湖なのかと思っていたが、実際に見ると逆だった。
山に囲まれた大きい湖にへばりつく様に、小さな町が細長く伸びている。
街道はその町に沿うように伸び、別の山間を抜けて北へ続いていた。
エルノよりは小さな町だが、プロンよりは大きい。
商業よりも、周囲の湖や山で働く住民が多そうな町だった。
馬車が町へと入っていくと、歓迎するように町民が並んでいる。

「???」

訳が分からずシルヴァインを見上げると、困ったように笑顔を向けて肩を竦める。

「噂は聞いたけど、歓迎してくれるみたいだね。追い返された人達が、ローゼの噂を聞いて、この町で留まってるみたいだ」

「ああ、それでですのね」

辺鄙な場所にある小さな町だから、今までより治療の人数が少なくなると思っていたが、兄の言葉で覆される。

「俺達は教会で下ろして貰おう」
「はい、お兄様」

その言葉を聞いたノクスが、御者台に合図を送り、仕切り窓を開いて何事か話して、椅子へと戻った。

まあすごい!執事みたい!

主に世話をしてくれるルーナの成長は間近で見てきたが、
ノクスも主人の意図を汲める従者に育っているのだとマリアローゼは親馬鹿目線で感動に打ち震えた。
目が合ったノクスも、少し恥ずかしそうにはにかんでいる。

そうこうしている内に、教会についた二人とルーナにカンナ、ウルススは定番メンバーとして教会へ向かい、
王宮騎士のヘルヴァと神聖騎士のカレンドゥラ、神聖国使者からはウェルシとトリスティが付き従う。

兄の言葉通り、エルノの2倍に増えた人々が、小さな教会と庭にまで詰めかけていた。
冒頭の聖女じゃないアピールをして、マリアローゼは治療を始める。
今回も薬が凄いの、私の力じゃありませんと言いながら、丁寧に薬を塗り、
ルーナに手伝われながら症状に合わせて飲み薬なども渡していく。

ふう、今回も無事に終って良かった…

などと思ってにこやかに談笑をしているところに、大騒ぎで人が運ばれてきた。
どうやら魔物退治を依頼された冒険者で、この近くで小規模な掃討戦があったらしい。

そんなの聞いてないし、聖女じゃないし…
うん、足が無い。
無理。
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