悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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イケメンがいっぱい

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結局、アートもファーブラもその後一切口を開く事は無かった。
マリアローゼは文献でしか情報を得ていないから、わざわざ口にしたのだが、
もし文献になっていない口伝でも何か伝わっていたのならば、反論が出たはずだ。
それもないということは、やはり文献の通りで、聖女の力は庶民へ分け与えて良い力ではないのだと
図らずも証明された事になる。

教会での治療を終えて、昨日と同じくウルススに抱えられて宿へと向かうマリアローゼは、不意にカレンドゥラに話しかけた。

「カレン様、お食事の後にマグノリア様とお話したいのですけれど」
「はい。分かりました。伺うようにお伝えしますわね」

精一杯背伸びするようにして、やっとウルススの腕の横から顔を出したマリアローゼに、くすっと微笑みながらカレンドゥラが答える。
会話が終るとすぐにウルススは抱えなおして、マリアローゼは強制的に元の位置に戻された。

赤ちゃんになった気分ですわ…

大きさが違いすぎるからかしら、とウルススを見上げると、ウルススは視線を周囲に配りながらも、見上げてくるマリアローゼの気配に気付いたのか口元だけ笑って返してくる。
気遣いが出来て、職務に忠実な男なのである。
軽い言葉や強引な口説き文句を言うキラキライケメンより、余程かっこいいと改めて思いつつ、何が気になったのかしら…とマリアローゼは考えた。

手馴れている感…
もしや、お子さんがいらっしゃる…!?

マリアローゼの中の元社会人喪女(20代後半)から見ても、良い男なのだから、当然相手がいないわけがない。
良い男がフリーな訳はないのだ。
今は彼も勤務中なので聞けないが、時間が出来たら聞いてみよう、とマリアローゼは心に誓った。
気になる事は何でも聞きたくなってしまうお年頃なのである。


「お母様は明日一日病気になろうと思うの」

食事中に突然言われて、マリアローゼはびっくりしてスプーンを落としそうになってしまった。
母をじっと見るが、特に具合が悪そうには見えない。
マリアローゼがこてん、と首を傾げると、ミルリーリウムはにっこりと微笑んだ。

「えっと、それは…はい、分かりました」

事情を全部説明しないという事に、何か意味があるのだろうことは分かったので、深くは聞かない。
この会話自体を聞かれてもいいように、言っているのかもしれないからだ。
そして、日程をずらすことにも意味があるのだろう。

「ローゼにはお土産を期待してもいいかしら?」
「是非!喜んで行って参ります」

突然の町散歩の許可である。
マリアローゼは飛び上がって喜びたい気分になった。
多分、何者かが襲ってくるにしても大きい町、しかも王都から2日の近さでは襲ってはこないだろう。
比較的安全なのと、何かを確かめたいのだろうけど、今は大人の事情を探るよりも
町へのお出かけでうきうきの5歳児なのである。

そして、うきうきし過ぎたマリアローゼは、マグノリアを呼びつけたことをすっかりさっぱり忘れていた。

何を話したかったんだっけ?

美味しい食事をたらふく食べて、明日の町散歩に心躍らせるあまりに、
真剣な話だったはずの肝心な話が思い出せない。

うーん。
うーん。

マグノリアが目の前で紅茶を飲んでいるが、思い出せるまで居て貰う訳にもいかない。

「申し訳ありません、マグノリア様…わたくし、聞きたいことがあったのですけれど、忘れてしまいました…」
「……ふっ…ははは…!」

紅茶を口元に持っていったマグノリアが、突然笑ったので、マリアローゼは目をぱちくりした。

「いや、申し訳ない。今まで見てきた貴女も、部下から報告を受けた貴女も随分と大人だったもので…
相応の幼さがあるというのが、意外で可愛らしい」

いつも厳しい顔つきをしている、マグノリアの笑顔と言葉でマリアローゼはどきりと心臓が跳ねた。

イケメンよりイケメン……!

「本当に…お呼び立てしておきながら…今度からきちんと何処かに書いて置きます……」
「ふふ、いや、また思い出した時にでも、何なりとお聞き下さい」

優しく微笑まれて、マリアローゼは穴があったら入りたくなるくらい恥ずかしくなったが、とりあえず明日の予定については話そう、と心を切り替えた。

「あの、折角ですので、明日の予定についてお話をしたいのですが。
「はい」
「お出かけの時に護衛してくださる騎士さまについてなんですけど、
神聖国の方達とはあまり親しくないので、出来れば顔を合わせたことの無い方にお願いしようかと」

普通なら慣れた人を選ぶところなのだが、何となくそれぞれと話をして親交を深めたいのだろうと、マグノリアは理解して頷く。

「分かりました。手配致しましょう。こちらからは暫くカレンドゥラをお供にお付けいたします」
「はい。……あ、思い出しました……!」
「ふ、ふふっ。ではお聞きしましょう」

思い出したようにマグノリアが笑って、マリアローゼは赤面しつつ言葉を組み立てる。
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