悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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お兄様に勝てない幼女

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表向きは平穏に数日が過ぎて行った。
ルクスリア神聖国からの使者は王城に留まり、聖女候補であるマリアローゼの用意が整い次第、神聖国まで護衛しつつ連れ帰る手筈となっている。
5日も逗留させられる事や事前の挨拶等は、聖女候補の父でもあり、この国の宰相でもあるジェラルドが全て交わしているのだろう。
公爵家には特に何も音沙汰が無かった。
父も母も何も言わないし、何となく聞きづらかったマリアローゼは兄のシルヴァインを捕まえた。

「あの…お兄様、少々お尋ねしたいのですけれど…」

晩餐後に兄の服の袖をちょいちょいつまみながら言うと、実に嬉しそうにシルヴァインが破顔した。

「何だろう?知ってる事なら何でも答えるよ」
「神聖国からの使者について、事前にわたくしが知っておくべき事はありまして?」

上目遣いで恐る恐る尋ねてくるマリアローゼが珍しく、シルヴァインは少し迷った後で言った。

「そうだなぁ。15人で来たようだけど、5人減ったみたいだね」
「先に神聖国に戻られたのですか?」
「さあ?」

にっこりと笑う笑顔は、爽やかなのに禍々しい。
これは、あれですわね。
知らない方がいいやつ。

「どこでそんな情報を仕入れて参りますの」
「流石にこの年齢になると、それなりの情報網は確保してるよ。
嬉しいな。俺にもローゼに勝るものがまだあったなんて」

は?
はあ??
完璧超人が何を言ってやがるのだろうか。

「失礼ですけれど、わたくしがお兄様に勝ってるものなんて、思いつきませんわ」

嫌味ですか?と言わんばかりに、キッと眦を上げて睨むも、シルヴァインはにこにこと笑顔を崩さない。

「可愛い。ローゼはどんな顔をしても可愛いな」
「えっ?なっ、そんな言葉では誤魔化されませんことよ!」

顔を赤くしながらも、両手を腰に当てて、怒っているというポーズをするマリアローゼを、シルヴァインが抱き上げてくるくると回る。

「ほら、可愛いでは俺が負けてるだろ?」
「その分、お兄様はかっこよいではありませんの!それに頭もよろしくて、運動も沢山お出来になって、それに……」

とそこでマリアローゼは、はっとしてシルヴァインを見ると、抱き上げたままニヤニヤしている。
マリアローゼの褒め言葉をそれはそれは嬉しそうに聞いていたのである。

「はっ!からかったのですね!もう知りませんわ」
「本気だよローゼ。ローゼの可愛さの前では俺は無力だ」

笑いながら、シルヴァインがマリアローゼの部屋に向かって歩き出す。

「知りませんたら、知りませんの!」

腕の中で身を捩って、ぷいっと横を向いてもシルヴァインは意に介した様子もなく軽快な足取りで歩いていく。

前世の記憶を足したら、もっと大人の筈なのに、と大変悔しい。

だが、記憶があったところで素地もメンタルもこの兄には敵わない気がする。
うっかりすると気付かないうちに誘導されて、せっせと墓穴を掘らされるのだ。

部屋に到着すると、エイラが扉を開けてくれて、マリアローゼは勉強用の椅子に下ろされた。

「今日もノアークお兄様はいらっしゃらないのですね」
「ノアークは父上と別途用件があるから、暫く会えないと思うよ」

シルヴァインが、本を選びながら言うと、キースはその言葉に頷いた。

「ノクスとルーナも今は最低限の護身術を習っているところですし、色々やる事があるのでしょう」

暫く会えない、と言われると逆に寂しさが募ってしまうような気がした。
ノアークの事情も、ルーナやノクスの事情も直接は聞かされていないのも、その理由かもしれない。
けれど、伝えられた所でマリアローゼに何か手伝えるのか?と問われれば、何も出来ないのだろう。
ならば、今、自分が出来る事を精一杯しなくてはいけない。
今きちんと色々な準備をしておかないと、会えない寂しさや何も出来ない無力感がずっと続いてしまう事になる。
マリアローゼは気持ちを切り替えるように、本を読み始めた。
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