悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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聖女とは何か

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父と母が不在の晩餐を終えるとマリアローゼは部屋へと戻った。
今日は別館に居るマリアローゼを護衛しながら、神聖国へ送り届ける役目を請け負って集められた騎士達をもてなす為に、
二人はそちらに行っているとケレスからは晩餐前に伝えられていた。
本当なら今日中にマリクの所へ行きたかったが、時間的にも体力的にも難しい。

「キースお兄様、明日はわたくしも午前中にマリクに用事がありますので、
図書館には午後から参ります」
「ふむ、了解しました」

ノクスとルーナはキースが用意してくれた参考書を手に、帝国語を学んでいる。
双子の兄は帝国語を日本語に訳すついでに、キースとシルヴァインが作った辞書と同じ物を製作中だ。
ノアークは黙々と、双子の兄に割振られた勉強と補佐をこなしている。

「じゃあ、答え合わせをしようか、ローゼ、キース」
「えー?何の何の?」
「俺達も混ぜてー」
双子が耳聡く聞きとがめて、会話に混ざろうとするが、シルヴァインが笑顔で一蹴した。

「聞いていてもいいが、混ざる事は出来ないぞ。今まで勉強から逃げ回ってきた結果だからな」

二人はむぐぐっと言葉に詰まって、ぶつくさ言いながらも元の作業に大人しく戻った。
哀れな様子に、少し心を痛めたマリアローゼが手を差し伸べる。

「今からでも遅くありませんわ。心を入れ替えてお勉強なさいませ。
そうすれば、より洗練された悪戯も出来るというものですわ」

慰めの方向が間違っているんじゃないか?とキースはジト目を向けるが、
シルヴァインは愉快そうに笑っている。
双子もマリアローゼの言葉に、感化されてやる気を漲らせた。

「ええと、では、シルお兄様からどうぞ」

気を取り直して、マリアローゼが話を振ると、シルヴァインは大きく頷いた。

「気になったのはまだ1つなんだが、
「聖女」というものが出てきたのが神聖教が始まってからすぐではないんだよ。
最初は寧ろ、「聖人」と言われる男しかいなかった」

それについて、キースが思案しながらも頷く。

「僕も同じ事を考えました。ですが、彫刻や絵画にしても現存する聖なる存在の殆どが女性なのです。
聖人とされて、過去に教義を立ち上げた初期の人間はまだ伝承として残っていますが、存在を塗り潰すような作為的なものを感じざるを得ません」

「…それについてはわたくし、全然知りませんでしたわ…」
「仕方ないよ。君は始めから「聖女」について学んでいたからね。
キースは他にあるかい?」
「まだ検証中ですので、先にローゼの話を聞きましょう」

兄二人に見詰められて、マリアローゼはこくりと頷いて見せた。

「ええと、まずは、何故聖女が少ないのか?という事ですわ。
元々光属性で更に癒し手というのは、数に限りがありますけれど、更に少ないのは何故なのでしょう。
それに癒し手が希少といえど、属性と種類を鑑みると、他の魔法の使い手に比べて
極端に少ないわけではないと思うのです。
例えば忌避されている従魔師も、人数から言えば治癒師ほど一般的でもありませんし…」

「ふむ、確かに。その辺りは魔術的な能力からの見解だね」

「それでとても疑問に思ったので、更に突きつめて考えまして、その調査について
キースお兄様にお願いしようと思っていたのですわ」

「何を調べればいいのでしょう?」

「各聖女の在位期間と、寿命ですわ」

「在位期間は僕も検証中だったんですが…寿命……そうか…」

キースが呟くように言って、暫く思考に沈み込む。
同じくシルヴァインも真剣な顔で黙し、何事かを考えている。
マリアローゼは二人の様子を見て、多分同じ考えに辿りつくだろう、と思いながら甘い紅茶で喉を潤した。
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