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神聖国の勉強
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図書館に向かっていると、後ろからアルベルトが追い付いてきた。
「私も手伝わせてもらうよ」
「で…」
「アルと読んでくれないか?」
また出鼻を挫かれてしまったし、お辞儀も中断する。
狙われないようにする為に身分を隠す意味もあるのだろうし、とマリアローゼは頷いた。
「では、アル。わたくしのことはローゼとお呼びください」
「ありがとうローゼ」
はにかむ可愛らしい美少年。
将来相当な美形になるんだろうな。
「さあ行こう」
シルヴァインに促されて、昨日と同じ長机に向かう。
そして、先に来ていたキースと共に4人で神聖国関連の蔵書を読みふけるのだった。
夕刻の鐘が鳴り響いて、マリアローゼは顔を上げた。
図書館には外が直接見える窓はない。
外をぐるりと囲む廊下の窓と、図書館にある窓が互い違いに設置されているので、
廊下に入る光が図書館の窓から洩れる間接照明となっている。
本の劣化を避ける為に、直射日光が当たらないように設計されていた。
更に、状態の悪い古い本は、図書館の地下に保管されているという。
「お父様にお願いしてある王城の資料と、地下の蔵書があるならそれも見たいですわね」
「ここにある蔵書を片付けてる間に、ヴァローナに用意してもらおう」
シルヴァインは言いながら、両手を空に伸ばしてグッと伸びをした。
「ローゼ、明日は俺も練兵場に顔を出すから、午後からここに来るよ」
「承知致しました。あ、わたくし、温室に用がありますので、ここで失礼致しますわ」
マリアローゼは口に手を当てて驚き、慌てて椅子から降りると、小走りで図書館を出て行った。
それを見送りながら、キースはシルヴァインに問いかける。
「兄上は何か疑問点は見つかりましたか?」
「あるにはあるが、答え合わせをするにはまだ早いだろう」
三人と新たに加わった一人が優秀でも、まだ蔵書は読みきれていない。
「それにその話はローゼが居た方がいいからな。晩餐の後にまた話そう」
「分かりました」
「その話には私も加わらせて貰ってもいいかな?」
にこやかに押してくるアルベルトに、キースだけだったら頷いていたかもしれない、がキースがシルヴァインに目を向けると、シルヴァインは笑顔を浮かべたまま、いや、と言った。
「晩餐後は妹の部屋でノクスとルーナに勉強を教えているんだ。
意見を摺り合わせて、明日君に伝えるとするよ」
やんわりと断りを入れているが、かなり痛烈な返答にキースは少し驚いた。
家族とそれ以外を線引きするにしても、従業員を王族よりも優先するかのような言葉だ。
妹に近づけたくないからなのか、単に秘密の勉強について漏らさない為なのか、
もしかしたら両方かとキースはシルヴァインの冷たい微笑を浮かべた横顔に目を向けた。
敢えて妹の部屋を強調したのは、未婚の淑女の部屋に立ち入ると言い出させないため、
アルベルトも言外の意味は捉えられる教育は受けている。
「ではまた明日に。幾つか蔵書を貸し出してもらおう」
予想に違わず、笑顔を崩さないままアルベルトはあっさりと退いた。
成り行きを見守っていたキースも慌てて蔵書を借りずに出て行ったマリアローゼの為に席を立つ。
「僕がローゼの分も持ち帰ります」
「頼んだよ」
鷹揚に返したシルヴァインは、憂鬱そうに溜息を吐いていた。
「私も手伝わせてもらうよ」
「で…」
「アルと読んでくれないか?」
また出鼻を挫かれてしまったし、お辞儀も中断する。
狙われないようにする為に身分を隠す意味もあるのだろうし、とマリアローゼは頷いた。
「では、アル。わたくしのことはローゼとお呼びください」
「ありがとうローゼ」
はにかむ可愛らしい美少年。
将来相当な美形になるんだろうな。
「さあ行こう」
シルヴァインに促されて、昨日と同じ長机に向かう。
そして、先に来ていたキースと共に4人で神聖国関連の蔵書を読みふけるのだった。
夕刻の鐘が鳴り響いて、マリアローゼは顔を上げた。
図書館には外が直接見える窓はない。
外をぐるりと囲む廊下の窓と、図書館にある窓が互い違いに設置されているので、
廊下に入る光が図書館の窓から洩れる間接照明となっている。
本の劣化を避ける為に、直射日光が当たらないように設計されていた。
更に、状態の悪い古い本は、図書館の地下に保管されているという。
「お父様にお願いしてある王城の資料と、地下の蔵書があるならそれも見たいですわね」
「ここにある蔵書を片付けてる間に、ヴァローナに用意してもらおう」
シルヴァインは言いながら、両手を空に伸ばしてグッと伸びをした。
「ローゼ、明日は俺も練兵場に顔を出すから、午後からここに来るよ」
「承知致しました。あ、わたくし、温室に用がありますので、ここで失礼致しますわ」
マリアローゼは口に手を当てて驚き、慌てて椅子から降りると、小走りで図書館を出て行った。
それを見送りながら、キースはシルヴァインに問いかける。
「兄上は何か疑問点は見つかりましたか?」
「あるにはあるが、答え合わせをするにはまだ早いだろう」
三人と新たに加わった一人が優秀でも、まだ蔵書は読みきれていない。
「それにその話はローゼが居た方がいいからな。晩餐の後にまた話そう」
「分かりました」
「その話には私も加わらせて貰ってもいいかな?」
にこやかに押してくるアルベルトに、キースだけだったら頷いていたかもしれない、がキースがシルヴァインに目を向けると、シルヴァインは笑顔を浮かべたまま、いや、と言った。
「晩餐後は妹の部屋でノクスとルーナに勉強を教えているんだ。
意見を摺り合わせて、明日君に伝えるとするよ」
やんわりと断りを入れているが、かなり痛烈な返答にキースは少し驚いた。
家族とそれ以外を線引きするにしても、従業員を王族よりも優先するかのような言葉だ。
妹に近づけたくないからなのか、単に秘密の勉強について漏らさない為なのか、
もしかしたら両方かとキースはシルヴァインの冷たい微笑を浮かべた横顔に目を向けた。
敢えて妹の部屋を強調したのは、未婚の淑女の部屋に立ち入ると言い出させないため、
アルベルトも言外の意味は捉えられる教育は受けている。
「ではまた明日に。幾つか蔵書を貸し出してもらおう」
予想に違わず、笑顔を崩さないままアルベルトはあっさりと退いた。
成り行きを見守っていたキースも慌てて蔵書を借りずに出て行ったマリアローゼの為に席を立つ。
「僕がローゼの分も持ち帰ります」
「頼んだよ」
鷹揚に返したシルヴァインは、憂鬱そうに溜息を吐いていた。
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