悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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意地悪なお医者様

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マリアローゼはマリクの言葉にほっと息をついて、改めて薬棚を見上げた。
そういえば、気になる事を思い出したのだ。

「あの、毒薬ってございます?」
「毒薬」

「出来たら、解毒薬とセットの」
「…また物騒な事を考えている訳じゃないですよね」

流石にマリクが剣呑な瞳で見てくるが、マリアローゼはふるふると首を振った。

「わたくしが使うわけではなくって、ロサに試してみたいのです。
死んでしまったら嫌なので、薄められるものが嬉しいですわ」
「まあ…他でやられるよりはいいか…わかりました。用意致しましょう」

半ばやけくそになったんじゃないか、という態度で、小皿と、
毒薬を薄め、その毒薬を入れたガラス瓶と、解毒薬が机の上に置かれた。
マリアローゼは胸元から、ピンクのスライムを取り出すと、皿の上にそっと置く。

「見たことのない色をしてますね」
「あ、はい、珍しい子なんです」

ウルラートゥスの助言どおり、「わたしが血を上げたら染まりました」なんてことは言わずに、受け入れやすい嘘をつく。

「ロサ…死なないでね…」

言いながら、皿の縁に薄めた毒液を垂らす。
だが、ロサはそれが毒だと分かるのか、近づこうとしない。

「毒だとわかるのかしら…賢い!」

既に親馬鹿目線である。
でも、いざというときの為に、死なない程度なら試して欲しい。
スライムは毒や酸に強い筈なのだ。

「すぐに、お薬を上げますから、少しだけ、ね?」

と促すように背後から手をあてると、言われた事が分かるかのように、じりじりと毒へと向かった。
すかさずマリアローゼは、解毒薬の瓶を用意して…
ロサが毒を取り込んだ瞬間に、ロサの身体に解毒薬を注いだ。

一緒に興味深げに見ていたマリクが、嬉しそうに言った。

「あ、元気ですね。原液もかけてみましょうか」

ノリノリである。
マリクが早速、薬棚から原液を持ってきた。

「え、え…あの、死んでは嫌なのですが…」
「一度耐性がつけば、大丈夫です」

生命を軽く見てはいないだろうか。

と疑問に思いつつも、マリクが瓶を傾けてもロサは避けようとはしなかった。
とぽとぽ
身体にかかった毒液を、ロサは取り込んだようだが、ぷるぷると元気に動いている。

「おお。大丈夫そうですね。次はどの毒を試しましょうか。
あまり毒の種類も在庫もないのですが」
「いえ、あの、ちょ、ちょっとマリク。今日はもう結構ですわ」
「そうですか?」

至極残念そうに、マリクは手に取っていた毒を薬棚に戻した。
物騒である。
こんな物騒なマッドサイエンティストだったとは。
医者だからサイエンティストではないか?
などと考えつつも、マリアローゼはロサをささっと胸元に押し込んで隠した。

「この子だって急に色んな毒に慣れるのは大変ですもの…」

護るかのように両手を胸元に当てて言うと、マリクはにっこりと微笑んだ。

「必要なら集めて置きますので、ご用命下さい」
「そ…その時がきたら、お伝え致しますわ」

椅子からぴょこんと降りて、マリアローゼは慌ててマリクの部屋を逃げるように後にした。
朝からあちこち走り回って、疲れ気味のマリアローゼではあったが、
贈り物をくれた兄達にお礼をして、従魔師の報告を受けた父の様子も窺いたいので、とてとてと食堂へと向かった。
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