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連載
双子からの贈り物
しおりを挟む翌朝気持ちよく目覚めると、枕元にまあるい贈答用の箱が置いてある。
丁寧にリボンもかけられて、帽子を入れるには小さいような…
手に持ってみると、重さはある。
「あの、お嬢様、そちらは双子のお兄様方が置いてゆかれました…」
「そうなんですのね。開けてみますわ」
遠慮がちに言ったナーヴァは止めようとして、丸め込まれたのだろう。
双子の攻勢に耐えられる人はそうそういない。
それに夜中であれば、緊急でない場合父に伝える事も難しい。
リボンをしゅるしゅる解いて、パカリと蓋をあけると、そこにいたのは…
「まあ!これは、スライム!」
ぷるぷると揺れるスライムが居た。
薄い青色のスライムは、突いてみるとぷにぷにしている。
逃げるように身体を動かすだけで、攻撃はしてこない。
幼体なのだろうか?
掌サイズで、まるっとして可愛らしい。
そうだ、あれを試してみよう。
マリアローゼは箱の中の可愛い生き物を見ていた顔を上げて、
恐々と遠巻きにしているナーヴァに声をかけた。
「針を持ってきてくださる?あとクッキーと飲物を」
「は、はいただいま」
慌てたように飛び上がって、パタパタとナーヴァが走り出す。
まずは、箪笥の中から裁縫セットの針を抜き出して渡してきたので、
ナーヴァが部屋を出て行った隙に、指に突きたてる。
痛いのは嫌だけど、仕方ない
指で押し出すようにして、やっと一滴、スライムに落とした。
どうか、仲良くして。
と祈るような思いを込めて。
表面に落ちた血の雫は、ややもするとスライムの表面に溶け始めた。
暫く見詰めて、何もないか…と思った瞬間、僅かに光を帯びて…
気づいたらスライムの色がピンクになっていた。
「まあ、何て可愛らしいの!」
思わず撫でると、嬉しそうに手にまとわりついてくる。
「貴方に名前を付けてあげるわね……そうだ。わたくしと同じ名前にしましょう。
今日から貴方はロサよ」
古い呼び名でローゼはロサと言う。
それをスライムに与えたのだ。
ロサは幸せそうに、くねくねと身を動かして見せた。
「まあ、嬉しいのね?これからクッキーもあげますからね」
ナーヴァが戻ってくると、早速クッキーを半分に割り、スライムの横にちょこんと入れる。
ロサは身体を伸ばしてクッキーを覆うと、クッキーが身体の中で溶け始めた。
それを見ながらマリアローゼも、さく、さくとクッキーを齧る。
「もっと欲しい?」
問いかけると、ロサは背伸びをするように縦に伸び縮みを始めた。
マリアローゼは今度はクッキーをそのまま、ロサの上に乗せてみる。
ロサの上に置かれたクッキーは、ゆっくりと身体の中に沈み込むように溶けていく。
さて、隠蔽工作をしなくてはいけない。
ナーヴァはいいとしても、エイラはこの状況を許してはくれないだろう。
「ナーヴァ、この箱を片付けてくださる?」
「承りました」
恐々と箱を抱えて、箪笥の中に仕舞い込んだ。
箱から出したスライムは、とりあえず枕の下に忍ばせる。
「急いで着替えを」
ナーヴァはお辞儀をして、そそくさと着替えに取り掛かる。
まだコルセットはいらないので、面倒な行程はあまり無い。
本当に寝間着から普段着に替えるだけなので、小間使いがいなくても
すぐに着替え終わった。
そして、枕の下のロサを、胸元に入れる。
「動いちゃだめよ」
ロサにだけ聞こえるように言って、ローゼは紅茶を飲み始めた。
そして今日の予定を組み立て始める。
図書館に行くのは決定事項だが、その前に従魔師に会いに行ってスライムについて話をしてみたい。
きちんとテイムされていると思うのだが、確信は持てないし、意見も聞きたい。
次にマリクのところへ。
針で突いただけの小さな傷だが、痛み出すのは困ってしまうので、これも先に片付けよう。
ウルラートゥスは夜勤だから、もう寝てしまうかもしれないと思い立ち、
「出かけて参ります」
「あ、お嬢様…」
「すぐ戻りますから大丈夫ですわ」
とてとてと走っていく後を追いかけて、従僕に見張りを頼むと、ナーヴァは部屋に戻って後片付けを始めた。
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