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斥候の仕事、舐めんな

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「はい。右から行きましょう」

左側はすぐ曲がり角なので、右に伸びている通路を進む。
王子はおっかなびっくり歩き始めた。
まあそうだよね。
私もアルトから教わった事と、図書館で読んだ知識くらいしかないから、失敗しながら覚える部分もあるけど。
二人はゼロだからね、知識も経験も。
歩いていると、左に通路が現れる。
そのまま通り過ぎて真っ直ぐすすんで、角に差し掛かった時、安心したように振り返った王子の後ろから石壁が倒れてきた。

「ぐえっ……」

王子は石壁の下敷きになって、倒れている。
そこまでは重くなさそうだが、背負い袋が心配だ。

「アル、動けそう?」
「……いや、難しいな……でも、ミアが罠にかからなくて良かった……」

力なく微笑む王子に、私の胸は高鳴った……りはしない。
私だったら避けてますよ。

「私は罠を見つけて解除する係であって、率先して罠に嵌まって作動させる係ではないです」
「そ、そうだな、すまない……」

王子は眉を下げる。
さて。
どうするか。
梃子の原理で少し壁を持ち上げるのがいいかな。
私は王子の篭手《ガントレット》を外す。

「ちょっと借りますよ。サーフ、剣を貸して」
「はい」
「鞘ごと」
「あ、すみません」

抜き身だと危ない。
腰のベルトから取り外された鞘ごと、剣先を王子の体の横に差し入れる。
私は篭手《ガントレット》を足で踏んで押さえた。

「サーフ、剣の持ち手を踏んで、壁を押し上げるから」
「分かりました。踏みます」

ぐっとメガネが体重をかければ、隙間が出来る。
私は力縄《ストレングス・ロープ》を手繰り寄せ、王子も這いながら出てきた。

「はぁ、はぁ、……すまない」
「良いですよ。はい、篭手《ガントレット》付けて下さい」

私は床に置いた篭手《ガントレット》を王子に渡し、剣をメガネに戻した。
ついでに王子の腰から力縄《ストレングス・ロープ》を解いて、次はメガネに装着する。
メガネも何か言いたげだが、ニッコリ微笑みかけたら諦めた目になった。
よろしい。

石壁を乗り越えて左に曲がると、すぐに右に向かう道、そして扉が現れた。
罠はなく、鍵はある。
私が開けると、扉から離れるだけで、スッと王子が扉の前に来た。
そして、開ける。

中には何もいない。
捜索したら、宝箱はあった。
罠解除して、鍵を開ける。
中には鉱石が入っていた。

「鉱石ですねぇ」

何の鉱石だか分からないけれど、鑑定は後でいい。
それも王子の背負い袋に入れる。
部屋から出ると元来た通路を戻り、右へ曲がる。
すぐに左に道は曲がり、左側に扉がある。
だが、その扉の向こうに五匹の迷宮子鬼《ダンジョン・ゴブリン》がいる。

「おっと……」

私はメガネの腰紐を引っ張った。
メガネもそろそろと後ずさりする。

「私が弓で右の個体を狙うので、サーフは左のどれかに火球《ファイアー・ボール》撃って下さい。アルは迎撃。サーフは接敵するまで魔法、近づいたら剣で」
「はい」
「分かった」

私とメガネは通路に出て、それぞれ弓と魔法で迷宮子鬼《ダンジョン・ゴブリン》を攻撃する。
ギャッと悲鳴が上がり、こちらに気が付いて走ってきた。
メガネの魔法で一匹は死に、私の攻撃では負傷したまま近づいて来たので、もう一射すると沈んだ。
その間にメガネはもう一度迷宮子鬼《ダンジョン・ゴブリン》を火球《ファイアー・ボール》で仕留める。
接近できたのは二匹だ。
まずは王子がやってきた迷宮子鬼《ダンジョン・ゴブリン》と接近戦に入る。
後ろから来た迷宮子鬼《ダンジョン・ゴブリン》には、正面からはメガネが、背後からは私が襲い掛かる。
戦闘に入ってしまえば、後ろに回りこむのは苦ではない。
王子は迷宮子鬼《ダンジョン・ゴブリン》と二合程度打ち合っただけで、難なく倒してしまった。
メガネも、私と二人がかりなのですぐに倒せた。

うーん。
棍棒が残ってる。
これは…いらないよね?
いらないけど、王子の手に持たせた。

「え?これで戦うのか?」
「いえ、敵が近づいてくるまで暇そうだったので、どうせだから投げたらいいんじゃないかと思って」
「そういう事か。ふむ、投げてみよう」

何だか嬉しそう。
男子ってそういうとこあるよね。
さて、邪魔者は排除したし、部屋でも漁るか。
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