ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

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道具を買って、迷宮へ

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お礼を言うと、私はその地図を頼りに店へ向かった。
市場の程近くにその店はあって、色々な道具が所狭しと置いてある。

「すみませーん。リーメント商会の方から紹介されて来ました。眼鏡と片眼鏡《モノクル》を見せて頂けますか?」
「ああ、ええ、どうぞ」

折角書いてもらったので、四つ折にされた手紙も店主に渡す。
金色の髪をゆるやかに束ねた、オリーブグリーンの瞳の青年だ。
エストリやマティアスと同年代に見える。
さっと手紙に目を通して、奥からケース入りの眼鏡と片眼鏡《モノクル》を出してきてくれた。

「形はこういうものになりますが、目の悪さによってレンズを変えた方が良いかと思われます。向こうで合わせましょう」
「はい。じゃあサーフ、行ってらっしゃい」
「はい。行ってきます」

素直に店主の後に付いて行ったメガネを見送って、私は道具屋で商品を選ぶ。
この後迷宮に行くのなら道具が必要だ。
ちょうどいい。
確か東西の迷宮では明かりは必要ないけれど、角灯《ランタン》は念の為。
中に入れる油も買う。
一応、松明も買っておこう。
ああ、油も必要なんだよね、意外に。
瓶入りの物を幾つか見繕う。
すっかり忘れてたけど、紙とペンもないと駄目だね。
地図作成《マッピング》も大事だから。
きちんとやっておかないと、逃げる時に大変だし。
もちろん縄《ロープ》も……ん?何でこの縄《ロープ》高いんだろう?

ちょうど奥から出てきた店主に、私は質問した。

「この縄《ロープ》は何で高いんですか?丈夫だから?」
「ああ、それもあるけど、それは魔法が付与されているんだよ。力縄《ストレングスロープ》と言って、物を持ち上げたり引っ張ったりするのにいいんだ」
「ほう……」

これは買いだな…!
あと……寝袋は欲しいけど、まだ野外じゃないからマントに包まればいいよね。
手鏡は、斥候道具《スカウト・ツール》に入ってたけど、可愛いの、欲しいなあ。
自分の顔見る機会なんてないけど……ってあれ?
私、身嗜みは整えてたけど、自分の事あんまり見た事なくない?
手鏡を覗き込んでみると、空のような青い瞳に、ピンクブロンド。
可愛い……可愛いんだけど…。
でもすっごい可愛いか?と聞かれると、何だろう…リサさんの方が美人で癒しだし、リヤちゃんの方が愛くるしいよな。
まあいいか。
不快な顔じゃなければ。
大体冒険には顔とか全然役に立たないしな。

メガネはお小遣いで眼鏡を二種類購入。
私は王子から取り上げた共用費から道具を購入。
三人でギルドに向かった。
王子が預金している間、私は東の迷宮に行く事を伝えて、入場証を三人分発行して貰う。
入り口の門番に見せると通してくれるらしい。
門番が何故いるかといえば、冒険者以外の盗掘を防ぐ為と、万が一中から魔物が出てきた時の為だ。
この国では、迷宮は誰でも入っていいという訳ではない。
盗掘も勿論だが、冒険者の安全も考慮している。
せっかく宝を持ち帰っても、誰だか分からない者に襲われて奪われたり、殺されたりするのを防ぐ為だ。
冒険者同士のトラブルも無いとは言えないが、身許が確かでギルドが管理していれば犯罪なども起こし難い。

外にある遺跡は出入り自由だが、その分遺跡は宝物もなければ、罠《トラップ》も解除されたままで、誰かが新たに仕掛けない限りは再発生しない。
未発見でない限りは、探索する旨味はあまりないのだ。
逆に魔物が棲み付いて、彼らが溜め込んだ財産がある可能性は残されるが。
今日行くのは迷宮。
魔物も生み出され、宝も生み出され、罠も復活する。

私達は王子の荷物を少し減らして、メガネの荷物を少し増やす。
私は荷物を持たない。
斥候《スカウト》という立場上、私は身軽でなくてはいけないので、レディ・ファーストではない。
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