81 / 89
恨まれたら困るので自力でどうぞ!
しおりを挟む
昼食を終えて宝石店へと向かう。
高級そうな貴族向けの喫茶店や飲食店がある並びに、リーメント商会は店を構えている。
その店の前に、またもピンク頭。
おい……お前、またかよ。
何でいるんだよ。
聖堂騎士団に行きなさいよ。
ショーウィンドウ越しに中を見ているけど、私達に気づいて文字通り飛び上がった。
「な、何でいるんですか……?」
「いや、それこっちの台詞なんですけど……まあいいや、私達は売買したい物があって寄ったの。冷やかしじゃないよ」
そう言うと驚いた顔をする。
何でや。
それからおずおずと、上目遣いで言い出した。
「私も付いて行っていいですか?」
「良くない。前も言ったけど、初対面の印象最悪だし、友達でも知り合いですらない人を商談に参加させる訳ないでしょ?あと今日言ったよね?男性を追いかけるのはいいけど、私を巻き込むなって」
「……でもお金ないし、一人じゃ入れないし……」
知らんがな。
私はノーツと王子とメガネを先に店に入れる。
「とにかく、私の近くに寄らないで欲しい。じゃないと貴方と本命の事も邪魔するけどいい?」
「や、やめてよ!」
今のところ一番アリサが狙いやすいのはイェレミアスだ。
落とせるかどうかも分からない……ん?
エストリとマティアス狙い?
……ははーん。
くっつけるのはこっちでも良さそうだけど、あの二人は異様に警戒心が強そう。
頭も良さそうだし、イェレミアスみたいに騙されたりしなさそうだもんな。
下手にアリサを紹介したら、私まで恨まれそうなのは嫌だ。
やっぱり、なしなし。
自分で何とかして。
「エストリさん狙いなら、騎士団で回復してお金貯めてから買い物に来るのがいいと思うよ。あとやめてって言ってるのにこうやって食い下がられるの私も迷惑なので、次何かしたら邪魔する事にする。貴女の許可なんていらないから」
別にどうやって邪魔するとか考えてないし、寧ろ応援したいけど面倒なのは困る。
なので脅しはかけておく。
お互いに魅了みたいなチートなくて良かったな。
もしある同士が戦ったらどうなるんだろう?
気になる。
アリサは黙ったので、私も三人を追いかけて店に入る。
振り返ったらマティアスが扉を押さえて待っていたので、少し驚いた。
「どうぞ、ミア嬢」
「どうも」
ぺこっと会釈して、マティアスの前を通り過ぎて奥へと向かう。
今日は王子も鎧姿のままで来たが、問題ない。
昨日の夜磨いたのか、首飾りの光沢が増しているように見えた。
「ふむ、これはスリジア銀ですか。ネックレスに使われているのは珍しいですね」
「ああ、溶かして加工した方が利益は出るだろう」
「こちらは血髄石《ルーネット》ですか、珍しい。タラゴーナ産か……」
「石の出所は分からぬが、意匠からして加工したのはタラゴーナであろうな」
ふむ、何だか分からん。
この世界の地名とか、アイテム名全然分からん。
少しは勉強しないとだな、これは。
ていうか、あれ?
まだあった筈だけど、2つだけにしたのか、持ち込み。
「両方合わせて金貨25枚で如何でしょうか?」
「ふむ、良いだろう」
二人はまた握手をする。
そこで、初めてエストリは宝石類から顔を上げて私を見た。
「まさか、ミア嬢がノーツ様とお知り合いだったとは」
「二人の剣の師匠なんですよ」
「ではノーツ様、例の贈り物はもしや……」
にこやかにエストリがノーツに訊き、ノーツの顔がかあっと赤くなる。
「まあ、そうだ、うむ」
「それはそれは。職人に腕を揮って貰わないとですね」
あ、それはもしや、お抱え職人!?
一応確認しておこう。
「お抱えの彫金師が居るという事ですか?」
「ええ、居りますね。この街一番、いやこの国一番の職人だと自負しております」
良いことを聞いた。
私はにっこり頷く。
いざとなったら王子辺りを弟子にしてもらって学ばせよう。
「素晴らしいです。では私達はこの辺で帰りますね」
ノーツは時間がかかるような事を言っていたので、私の言葉に頷いた。
王子もマティアスからお金を受け取って立ち上がる。
メガネもメガネをクイッとして…
あ、忘れてた。
「眼鏡、買いました?」
「あ、いえ、まだです」
「眼鏡と片眼鏡《モノクル》が欲しいんですけど、扱ってますか?」
私の問いに、エストリはにこやかに答えた。
「ええ、取り扱いは御座いますが、装飾などに拘らないのであればお手頃な価格で販売している知り合いの道具屋を紹介致しますよ?」
「じゃあ、そっちでお願いします」
マティアス、とエストリが呼びかけると、マティアスが表の店へと促すように掌で指し示すので、私達は移動する。
店のカウンターで、マティアスが紙にペンを走らせた。
「地図と、簡単な手紙を認めましたので、どうぞお持ち下さい」
「ありがとうございます」
高級そうな貴族向けの喫茶店や飲食店がある並びに、リーメント商会は店を構えている。
その店の前に、またもピンク頭。
おい……お前、またかよ。
何でいるんだよ。
聖堂騎士団に行きなさいよ。
ショーウィンドウ越しに中を見ているけど、私達に気づいて文字通り飛び上がった。
「な、何でいるんですか……?」
「いや、それこっちの台詞なんですけど……まあいいや、私達は売買したい物があって寄ったの。冷やかしじゃないよ」
そう言うと驚いた顔をする。
何でや。
それからおずおずと、上目遣いで言い出した。
「私も付いて行っていいですか?」
「良くない。前も言ったけど、初対面の印象最悪だし、友達でも知り合いですらない人を商談に参加させる訳ないでしょ?あと今日言ったよね?男性を追いかけるのはいいけど、私を巻き込むなって」
「……でもお金ないし、一人じゃ入れないし……」
知らんがな。
私はノーツと王子とメガネを先に店に入れる。
「とにかく、私の近くに寄らないで欲しい。じゃないと貴方と本命の事も邪魔するけどいい?」
「や、やめてよ!」
今のところ一番アリサが狙いやすいのはイェレミアスだ。
落とせるかどうかも分からない……ん?
エストリとマティアス狙い?
……ははーん。
くっつけるのはこっちでも良さそうだけど、あの二人は異様に警戒心が強そう。
頭も良さそうだし、イェレミアスみたいに騙されたりしなさそうだもんな。
下手にアリサを紹介したら、私まで恨まれそうなのは嫌だ。
やっぱり、なしなし。
自分で何とかして。
「エストリさん狙いなら、騎士団で回復してお金貯めてから買い物に来るのがいいと思うよ。あとやめてって言ってるのにこうやって食い下がられるの私も迷惑なので、次何かしたら邪魔する事にする。貴女の許可なんていらないから」
別にどうやって邪魔するとか考えてないし、寧ろ応援したいけど面倒なのは困る。
なので脅しはかけておく。
お互いに魅了みたいなチートなくて良かったな。
もしある同士が戦ったらどうなるんだろう?
気になる。
アリサは黙ったので、私も三人を追いかけて店に入る。
振り返ったらマティアスが扉を押さえて待っていたので、少し驚いた。
「どうぞ、ミア嬢」
「どうも」
ぺこっと会釈して、マティアスの前を通り過ぎて奥へと向かう。
今日は王子も鎧姿のままで来たが、問題ない。
昨日の夜磨いたのか、首飾りの光沢が増しているように見えた。
「ふむ、これはスリジア銀ですか。ネックレスに使われているのは珍しいですね」
「ああ、溶かして加工した方が利益は出るだろう」
「こちらは血髄石《ルーネット》ですか、珍しい。タラゴーナ産か……」
「石の出所は分からぬが、意匠からして加工したのはタラゴーナであろうな」
ふむ、何だか分からん。
この世界の地名とか、アイテム名全然分からん。
少しは勉強しないとだな、これは。
ていうか、あれ?
まだあった筈だけど、2つだけにしたのか、持ち込み。
「両方合わせて金貨25枚で如何でしょうか?」
「ふむ、良いだろう」
二人はまた握手をする。
そこで、初めてエストリは宝石類から顔を上げて私を見た。
「まさか、ミア嬢がノーツ様とお知り合いだったとは」
「二人の剣の師匠なんですよ」
「ではノーツ様、例の贈り物はもしや……」
にこやかにエストリがノーツに訊き、ノーツの顔がかあっと赤くなる。
「まあ、そうだ、うむ」
「それはそれは。職人に腕を揮って貰わないとですね」
あ、それはもしや、お抱え職人!?
一応確認しておこう。
「お抱えの彫金師が居るという事ですか?」
「ええ、居りますね。この街一番、いやこの国一番の職人だと自負しております」
良いことを聞いた。
私はにっこり頷く。
いざとなったら王子辺りを弟子にしてもらって学ばせよう。
「素晴らしいです。では私達はこの辺で帰りますね」
ノーツは時間がかかるような事を言っていたので、私の言葉に頷いた。
王子もマティアスからお金を受け取って立ち上がる。
メガネもメガネをクイッとして…
あ、忘れてた。
「眼鏡、買いました?」
「あ、いえ、まだです」
「眼鏡と片眼鏡《モノクル》が欲しいんですけど、扱ってますか?」
私の問いに、エストリはにこやかに答えた。
「ええ、取り扱いは御座いますが、装飾などに拘らないのであればお手頃な価格で販売している知り合いの道具屋を紹介致しますよ?」
「じゃあ、そっちでお願いします」
マティアス、とエストリが呼びかけると、マティアスが表の店へと促すように掌で指し示すので、私達は移動する。
店のカウンターで、マティアスが紙にペンを走らせた。
「地図と、簡単な手紙を認めましたので、どうぞお持ち下さい」
「ありがとうございます」
52
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説

妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。
haru.
恋愛
「今ここに、17年間偽られ続けた真実を証すッ! ここにいるアクリアーナは本物の王女ではないッ! 妖精の取り替え子によって偽られた偽物だッ!」
17年間マルヴィーア王国の第二王女として生きてきた人生を否定された。王家が主催する夜会会場で、自分の婚約者と本物の王女だと名乗る少女に……
家族とは見た目も才能も似ておらず、肩身の狭い思いをしてきたアクリアーナ。
王女から平民に身を落とす事になり、辛い人生が待ち受けていると思っていたが、王族として恥じぬように生きてきた17年間の足掻きは無駄ではなかった。
「あれ? 何だか王女でいるよりも楽しいかもしれない!」
自身の努力でチートを手に入れていたアクリアーナ。
そんな王女を秘かに想っていた騎士団の第三師団長が騎士を辞めて私を追ってきた!?
アクリアーナの知らぬ所で彼女を愛し、幸せを願う者達。
王女ではなくなった筈が染み付いた王族としての秩序で困っている民を見捨てられないアクリアーナの人生は一体どうなる!?
※ ヨーロッパの伝承にある取り替え子(チェンジリング)とは違う話となっております。
異世界の創作小説として見て頂けたら嬉しいです。
(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ペコ
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!


5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~
九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】
【HOTランキング1位獲得!】
とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。
花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる