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マッチング成功
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結局、ダーヴィドさんのお宅で豪華な夕食も頂いてしまった。
王子とメガネは久しぶりの高級料理に夢中だ。
ノーツは、マナーなんて分からんぞ、と言っていたけどモリモリ食べていた。
私も勿論美味しく頂いた上に、お土産のクッキーもこれまた沢山頂いてほくほくだ。
おやつ、嬉しい。
時々貰いに来ようかなってくらい美味しい。
レシピ貰ってリサさんに作って貰うのでもいいな。
自分で作れたら作ってみたいけど。
ノーツがギルドに契約書を届けてくれるので、馬車でギルドまで送ってもらって、暢気に会話しながら中に入ると、まだ、居た。
アレが。
「ちょっと、何なのよアンタ!イケメンばっかりゾロゾロ連れて、いい気になって!」
びしりと一本指を立てて、私を指し示すアリサ。
私が振り返るとおっさん冒険者がいる。
「美男をゾロゾロ連れてて羨ましいらしいですよ」
「まあ、俺も美男子だからなあ!」
おっさん達がゲラゲラ笑うので、私も笑ってしまった。
「違う!あんたよあんた!そこのピンク頭」
「お前もピンクじゃん」
私が言い返すと、また一瞬固まる。
いやだから、言ったら言い返されるの当たり前でしょ?
言葉のキャッチボールしたことないのかな?
「はあもう。ちょっと話してきますね」
男連中を置いて、アリサの襟首を掴んで端っこに連れて行く。
「な、何よ、暴力女……っ」
「ねえ、良いですか?私は、貴女が何をしようと心底どうでもいいんですよ」
じっと、壁に押し付けて見つめる。
アリサは、確かに可愛いけれど、何でこんなに本性むき出しなんだろう?
もっと可愛く、あざとく出来んかな。
こんなんじゃ落とせるものも落とせないでしょ。
「貴女が醜く喚いてるだけで、好きな男に振り向いて貰える訳ないでしょ?私は別に貴女の邪魔をしてるわけじゃないの。私に構わないで、男だけ追いかけてろ。分かった?」
「…え、え……だって、貴女が邪魔してるんじゃないなら一体…」
一体じゃねーよ。
鏡見ろ鏡。
客観的に俯瞰して自分を見てみなさいって。
「知り合いでもない人にいきなり追い掛け回されて、喜ぶ人いる?大きな声で喚いてる貴女見て好きになるの?私がいなくても貴女がそんなじゃ無理でしょ。私は友人としてしか付き合ってない。これからどうなるかは分からないけど、私は今恋愛なんてしてる余裕無いの。分かった?」
「……え、あ…はい」
私の勢いに負けて、アリサは頷いた。
でも。
私もそこで良い事を閃いた。
閃いてしまったのだ。
天才か?私。
「貴女、もしかして光魔法の回復《キュア》使える?」
「……あ、うん、使えるけど?」
よっしゃあ!
ヒロイン適正だな!
これで彼女の行き先は決まった。
「だったら、聖堂騎士団に行くと良いですよ。イェレミアス様だったら、貴女の回復の力を知れば、騎士団に入れてくれると思う。騎士団の姫にでもなればいいよ」
姫という言葉に、アリサは顔を輝かせた。
そりゃそうだろう。
この数日?散々空振りしてたもんね。
まあ、自業自得なんだけど。
アリサは言った。
「あなたって良い人だったのね?私誤解してたかもしれない……」
うるせぇ。
姫プしたいなら、姫らしくしろ。
面倒ごとはもう嫌だから、もう一つ釘をさしておく。
「一つだけ私と約束して?騎士団に入ることが出来て、イェレミアス様とうまくいったら、私を含めて他の人にちょっかい出さないで?男性は別にいいけど、女性に対しての貴女、行き過ぎてる」
「分かった。……もうしない、と思う」
「もしまた面倒に巻き込んだら、私、その貴女の唯一、ぶち壊すからね?」
笑顔で言えば、アリサは黙って頷いた。
少なくとも一人は手に入ると言う光明が差したのだ。
私は私で、ティアとして過ごす間、厄介事には巻き込まれたくない。
「男性に色目使うのは別に構わない。貴女の恋愛興味ないし。でも私を含めて女性を敵視したり陥れたら、許さないからね?」
もう一度言うと、アリサは素直に頷いた。
でも、信用はしていない。
人は欲張りな生き物だ。
一つ手に入れればもう一つ、と欲が出る事もあるだろう。
アウリスなり、ダーヴィドなり、金持ちイケメンを落とすなら落とせば良い。
ノーツだって、彼女を選ぶならそれでもいい。
私の為に駆けつけた二人だって。
自由意志は尊重する。
でも変な企みや、思惑に巻き込まれるのは本当に勘弁して欲しい。
そんな時間ねぇんだよ!
私は襟を掴んでいた手を放した。
「じゃあ、頑張って」
「あ、ありがとう!」
良かった。
これで勧誘してくる騎士団と、騎士団に入り込みたいピンクとのマッチング成功だ。
明日からはまた平穏な日々が戻ってくるだろう。
戻ってくるといいな。
王子とメガネは久しぶりの高級料理に夢中だ。
ノーツは、マナーなんて分からんぞ、と言っていたけどモリモリ食べていた。
私も勿論美味しく頂いた上に、お土産のクッキーもこれまた沢山頂いてほくほくだ。
おやつ、嬉しい。
時々貰いに来ようかなってくらい美味しい。
レシピ貰ってリサさんに作って貰うのでもいいな。
自分で作れたら作ってみたいけど。
ノーツがギルドに契約書を届けてくれるので、馬車でギルドまで送ってもらって、暢気に会話しながら中に入ると、まだ、居た。
アレが。
「ちょっと、何なのよアンタ!イケメンばっかりゾロゾロ連れて、いい気になって!」
びしりと一本指を立てて、私を指し示すアリサ。
私が振り返るとおっさん冒険者がいる。
「美男をゾロゾロ連れてて羨ましいらしいですよ」
「まあ、俺も美男子だからなあ!」
おっさん達がゲラゲラ笑うので、私も笑ってしまった。
「違う!あんたよあんた!そこのピンク頭」
「お前もピンクじゃん」
私が言い返すと、また一瞬固まる。
いやだから、言ったら言い返されるの当たり前でしょ?
言葉のキャッチボールしたことないのかな?
「はあもう。ちょっと話してきますね」
男連中を置いて、アリサの襟首を掴んで端っこに連れて行く。
「な、何よ、暴力女……っ」
「ねえ、良いですか?私は、貴女が何をしようと心底どうでもいいんですよ」
じっと、壁に押し付けて見つめる。
アリサは、確かに可愛いけれど、何でこんなに本性むき出しなんだろう?
もっと可愛く、あざとく出来んかな。
こんなんじゃ落とせるものも落とせないでしょ。
「貴女が醜く喚いてるだけで、好きな男に振り向いて貰える訳ないでしょ?私は別に貴女の邪魔をしてるわけじゃないの。私に構わないで、男だけ追いかけてろ。分かった?」
「…え、え……だって、貴女が邪魔してるんじゃないなら一体…」
一体じゃねーよ。
鏡見ろ鏡。
客観的に俯瞰して自分を見てみなさいって。
「知り合いでもない人にいきなり追い掛け回されて、喜ぶ人いる?大きな声で喚いてる貴女見て好きになるの?私がいなくても貴女がそんなじゃ無理でしょ。私は友人としてしか付き合ってない。これからどうなるかは分からないけど、私は今恋愛なんてしてる余裕無いの。分かった?」
「……え、あ…はい」
私の勢いに負けて、アリサは頷いた。
でも。
私もそこで良い事を閃いた。
閃いてしまったのだ。
天才か?私。
「貴女、もしかして光魔法の回復《キュア》使える?」
「……あ、うん、使えるけど?」
よっしゃあ!
ヒロイン適正だな!
これで彼女の行き先は決まった。
「だったら、聖堂騎士団に行くと良いですよ。イェレミアス様だったら、貴女の回復の力を知れば、騎士団に入れてくれると思う。騎士団の姫にでもなればいいよ」
姫という言葉に、アリサは顔を輝かせた。
そりゃそうだろう。
この数日?散々空振りしてたもんね。
まあ、自業自得なんだけど。
アリサは言った。
「あなたって良い人だったのね?私誤解してたかもしれない……」
うるせぇ。
姫プしたいなら、姫らしくしろ。
面倒ごとはもう嫌だから、もう一つ釘をさしておく。
「一つだけ私と約束して?騎士団に入ることが出来て、イェレミアス様とうまくいったら、私を含めて他の人にちょっかい出さないで?男性は別にいいけど、女性に対しての貴女、行き過ぎてる」
「分かった。……もうしない、と思う」
「もしまた面倒に巻き込んだら、私、その貴女の唯一、ぶち壊すからね?」
笑顔で言えば、アリサは黙って頷いた。
少なくとも一人は手に入ると言う光明が差したのだ。
私は私で、ティアとして過ごす間、厄介事には巻き込まれたくない。
「男性に色目使うのは別に構わない。貴女の恋愛興味ないし。でも私を含めて女性を敵視したり陥れたら、許さないからね?」
もう一度言うと、アリサは素直に頷いた。
でも、信用はしていない。
人は欲張りな生き物だ。
一つ手に入れればもう一つ、と欲が出る事もあるだろう。
アウリスなり、ダーヴィドなり、金持ちイケメンを落とすなら落とせば良い。
ノーツだって、彼女を選ぶならそれでもいい。
私の為に駆けつけた二人だって。
自由意志は尊重する。
でも変な企みや、思惑に巻き込まれるのは本当に勘弁して欲しい。
そんな時間ねぇんだよ!
私は襟を掴んでいた手を放した。
「じゃあ、頑張って」
「あ、ありがとう!」
良かった。
これで勧誘してくる騎士団と、騎士団に入り込みたいピンクとのマッチング成功だ。
明日からはまた平穏な日々が戻ってくるだろう。
戻ってくるといいな。
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