ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

文字の大きさ
上 下
66 / 89

スライム基準

しおりを挟む
王子とメガネを連れて、私の定宿「黄金の野うさぎ亭」でご飯を食べる。
メガネは王子ほど甘やかされていないのだろう。
旅でよれよれになって、疲れきった顔をしていた。
見た目も汚れていたので、王子と同じく鑑定《アプレイザル》と清潔《クリーン》を覚えさせた。
そして、食事をしながら、大まかな迷宮についての説明と、訓練についての話をする。
さすがに王子の様に剣を取って戦えとは言わないが、回避の練習はさせておいた方がいいだろう。
ノーツが来るまで王子にメガネ攻撃をさせる事を心に決めた。

そして何より大事な事は、アルクを王子などと呼ばないことだ。
厳命して、彼らを見送る。
部屋では筋トレをするように言ってあるので、メガネにも同じ試練を課す。
別に筋肉が増えても困りはしない。
魔法の勉強が始まるまでは、王子と切磋琢磨するがいい。

いやー、考えてみると、今日は結構危ない橋渡ったなぁ。
一度に5匹と遭遇してたらヤバかった。
あれは良くない。
反省、反省。

スヤスヤ。

翌日は、何と。
何と!
早起きしてメガネを連れて、ちゃんと私の宿屋に訪れたのだ、王子が。
ママ嬉しい。
ちゃんと起きれたんだね!
寧ろ私の方が寝坊した件。
だって、昨日は頑張ったもん。

朝食を食べて、ギルドへ向かう。
早速エミリーさんに質問をした。

「魔法の授業はここではやってないですかね?」
「ええ、そうね。魔法協会ではやってるけれど、基本的には魔法書で覚えるか、本を読むか、かしらね?」
「分かりました。ありがとうございます」

学園のように教えてくれる機関は無いのか。
まあ、うん。
魔法使いは、色々な所に引っ張りだこだろう。
何しろ素質がないと行使できない力だ。
だから、貴族なら使えるのが当然、ていう国は割と勿体無い事してる。
かもしれない。
そこそこの教育だけして放置だもんね。
戦争とか始まれば別かもしれないけど、今のところそういった話はこの近隣では無い。

昨日の発案どおり、王子がメガネになぐりかかり、メガネは回避する。

「えっ?」
「ええっ?」

二人とも驚くけど、いいからやれ。
メガネは回避の練習、王子は命中させる練習だ。

流石に、色々な人と戦闘したり、昨日は狼とまで戦った王子は、きちんとメガネを捉えている。
メガネは回避し切れずに、肩や頭を叩かれて泣きそう。

「いっ、痛いです、おう…」
「アルク」

王子という前に私が訂正する。
メガネの声がアザラシの鳴き声みたいになったけど気にしない。
抗議してる暇があるなら避けろ。

ぽこぽこ叩き続けているうちに、王子の方が困った顔になっていく。

「スライムより遅い……」
「……そんな罵倒は初めてです」

でしょうね。
私も素振りをしつつ、観察をしていると、懐かしい声がした。

「ミア」
「ノーツさん!お帰りなさい!」

笑顔を向ければ、ノーツは照れ臭そうに微笑み返す。

「土産なのだが……正直、値の張るものではないと思う。21階層の火鼠からドロップした宝石だ。鑑定でも特に高価な物ではないから、俺が貰い受けた。本当は飾りに仕立ててから渡すべきだろうが、どんな物が良いか分からなくて…」

差し出されたノーツの掌に載っているそれは、橙と黒を基調にしたファイアーオパールのように、炎を閉じ込めたような宝石で、見ているだけで美しい。

「綺麗ですねぇ」

大きさは小指の先程度で、指輪にしても耳飾にしても主張が激しそうで、首飾りか髪飾りに良さそうだ。

「首飾りか髪飾りが合いそうですね。そのままでも良いですよ?」
「いや、うん。装飾品にして貰ってから渡そう。少し待っていてくれ」
「はい。今日見せて貰えて嬉しかったです。あ、それと紹介したい人がいるんですけど」

と、王子とメガネを振り返ると、何だか目つきが悪い。
何だ、どうした急に。

「アルク。この人がノーツさん、剣の稽古をしてくれる人だよ」
「よろしく頼む」

何だか睨みながら、王子はノーツに握手を求めた。

「こちらこそ」
「ノーツさん、こちらは私の故郷の友人のアルクです。スライムとよき好敵手《ライバル》です」
「ふむ。初心者か。分かった」
「こちらのメガネはサーフです。魔法使い」
「お見知りおきを」
「ああ、よろしく」

挨拶は済んだ。
後はお任せしよう。
どうせ、メガネに丁度良い先生もいないので、ノーツに任せて私は魔法協会へと実際の話を聞きに行く事にした。
エミリーさんはこの街に詳しいし、信頼できるけど、現場の意見を聞くのも大事である。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...